『脱出ゲーム 香川県からの脱出』(※1月28日、ようやくエンディングが完成して、ゲームが完結致しました!!)に登場する、歴史上の人物ゆかりの場所を巡る旅。
川崎大師駅前の若宮八幡宮に参拝した後、私が次回作の舞台の1つにしようかと検討している、境内社の金山神社へ。
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- 川崎の金山神社……LGBTを差別しない。表現の多様性を排除しない。性風俗従事者を差別しない。
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川崎大師('23.9.26)
こちらの境内社が、おそらく本社の若宮八幡宮より有名と思われる、金山神社です。
1999年(平成11年)に建て替えられた社殿は、およそ神社とは思えない、独特の形をしています。
鉄板で覆われた八角形の建物で、高さは8メートル。2階建てではなく、吹き抜けで8メートルあります。
中には入れませんでしたが、外から見るかぎり、神社というより鍛冶屋の作業場にしか見えません。
手前側は土間で、中心には炉が据えられています。鞴(ふいご)もあります。
奥に神棚が見えますが、普通の鍛冶屋さんにも多分こういう神棚はあるでしょう。
金山神社の祭神は、金山比古神と金山比売神。イザナミノミコトが火の神カグツチノカミを産んだ際に、苦しみのあまり嘔吐し、その吐しゃ物から生まれた神だそうです。
金山神社では、苦しむイザナミノミコトを金山比古神と金山比売神が看病したと伝わります。
もともとは独立した神社で、今の川崎大師駅のそばにあったのですが、大師線が敷設される際、駅の施設をその場所に造ることになったため、現在地に移転しました。
今ある独特な社殿は、1999年(平成11年)に建てられたものです。
金山神社という名のとおり、鉱山や鍛冶、鉄工所など、金属を扱う仕事の守り神で、現在でも金属を扱う企業や職人などによる、「ふいご祭」という例祭が行なわれます。
しかしそれ以上に全国的に有名で、海外でも知られているのは、この神社の「性の神」としての一面。
縁結び、子授け、安産、夫婦円満、性病や下半身の病の治癒などの御利益があるとされます。
イザナミノミコトがカグツチノカミを産んだ際に苦しんだことは前にも書きましたが、これは火の神を産んだことによる産道などの火傷によるもので、それを金山比古神と金山比売神が看病したため、性の神としても信仰されるようになったといわれています。
(しかし結局イザナミノミコトは回復せず、夫のイザナギノミコトは、イザナミノミコトに会うため黄泉(よみ)の国へ行くことになります)
また、鍛冶に使うふいごの動きからの連想で、性の神になったという説もあります。
御神体は金属製の男根だそうで、そのため金山神社は「かなまら様」ともよばれています。
境内には、奉納された男根像がいくつか設置されていました。
(愛知県小牧市の田縣(たがた)神社に比べれば、その数は少ないですが)
(※日本縦断紀行……田縣神社の「男茎形」)
絵馬殿にも男根を模した木の棒や、性器のような顔の七福神を描いた絵馬が奉納されていました。
床の真ん中には、金属加工に使う金床と男根を組み合わせたオブジェも。
金山神社を世界的に有名にしたのが、毎年4月に開催される例祭「かなまら祭」です。
江戸時代、川崎宿の飯盛女(私娼)たちが、性病除けのために「地べた祭」というお祭りを行なっていたらしいのですが、明治時代には廃れており、金山神社も大師電気鉄道建設にあたって移転し、若宮八幡宮の境内社となっていました。
この神社が再び注目され始めたのは昭和の後期くらいだそうです。
性器は子供を産む根源であることから、古来より世界各地で信仰の対象になっていたのですが、近代化の波にのまれて、そうした信仰は途絶えていきました。
日本も例外ではありませんでしたが、いくつかの地域で性器崇拝の習慣は残っていて、そのうち1つがこの金山神社でした。
海外の民俗学者がここに目をつけて研究対象としたことを機に、さびれていた神社の復興と、日本古来の性神信仰の復活を目的として「かなまら講」が発足。1978年から「地べた祭」を復活させ、さらに大々的にリニューアルして「かなまら祭」が誕生しました。
昔と違って今は、時代が「各民族の伝統文化を尊重する」方向に進んでいます。かなまら祭が今や海外から多くの観光客を集めるフェスティバルに発展したのは、このような時代背景も関連しているのかもしれません。
性器崇拝を日本文化に含めることに、眉をひそめる向きも少なくないでしょうが、実際に日本国内の複数箇所で行なわれてきたことであり、またそれほどあからさまでなくても、性器信仰の要素がみられる儀式や習慣も各地に残っています。
特筆すべきは、1980年代末から、エリザベス会館という女装クラブが参加していること。
かなまら祭でひときわ目立つ、巨大なピンク色の神輿(みこし)はこのエリザベス会館のものです。
(私が金山神社の社殿を窓から見たとき、中にこのエリザベス神輿らしきものが見えました)
この時期には世界的に、エイズが大きな問題となっていました。金山神社は性病除けの御利益をうたっていることから、「エイズ退散祈願」をかなまら祭の目的の1つに加え、それまで会員が個人的に参加していたエリザベス会館に、祭りへの参加を要請したそうです。
神社が主催するお祭りに、ゲイやトランスジェンダーの組織が参加することは珍しいと思います。
かなまら祭は奇祭というイメージがありますが、「LGBTQの人々を差別せずに受け入れる」というメッセージを内包したお祭りでもあるといえるでしょう。
また、女装クラブの参加や、境内各所や神輿に存在する男根像から、「表現の多様性を排除しない」というメッセージも感じました。
さらに、ルーツが性風俗従事者によるお祭りであることから、「性風俗従事者を差別しない」というメッセージも含まれているような気がします。
お守りをお受けしようと思ったのですが、午後0時台で昼休みだったのか、社務所に人が見当たらなかったので断念。
社務所の2階には郷土資料室があり、その一角には日本各地や世界各国の、性信仰にまつわる資料が展示されているらしいのですが、見ることができませんでした。
(ネットには「現在閉室中」と書かれたサイトもありますが、この「現在」がいつのことなのかはわかりません)
※『脱出ゲーム 香川県からの脱出』のヒット祈願で、ゲームの登場人物ゆかりの地を巡る旅は、以前にも何度か行なっています。よろしければこちらも御覧下さい。
大津・建部大社と堺・大鳥大社(日本武尊)、神戸・須磨寺(尾崎放哉) 岡山・吉備津神社と吉備津彦神社(桃太郎) 安倍晴明神社と、あべのハルカス、道頓堀、特急ひのとり
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※これまでの「日本縦断紀行」はこちら。
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