7.うつ病ランナー まだまだ走る
6年前、息子への意地から走り出したときは、数百m走るのさえ大変な思いでした。そんな私が100kmもの長丁場を走れるようになるなんて、想像もできませんでした。でもついに、夢に見たサロマの舞台を走りきりました。
あの頃、うつ病に苦しんでいた私は、自分の人生が終わってしまったかのように思っていました。たしかに、あのとき1度、私の人生は終わったのかもしれません。それまで自分が描いていた人生は、そこまでのものだったのかもしれません。でもランニングと出会ったことで、私には新たな人生が始まりました。
こうして100kmの道のりを走り終えたことで、また新たなステップを上がったようにも思えました。ランナー生活はもちろん、私の人生自体が、新たなステップを上がったようにも思えたのです。
かつての私であれば、行動する前に周到にプランを練ったことでしょう。そのうえでできるかできないかを判断し、できる可能性が低いと思ったことには手を出さなかったことでしょう。
100kmを走る?そんなこと、できるわけないだろう。それだけの練習をしているのか?力はついているのか?自信はあるのか?そうやって自問自答を繰り返し、「無理」という結論を出し、挑戦すらしなかったに違いありません。
でも走るようになってからは、自分が思っていた限界を次々と破っていく自分の姿を見ることができるようになりました。これだけのことができた自分には、なんでもできるような自信が生まれてきました。
むろん、なんでもできるわけではありません。でも、何にでも手を出してみよう、とにかくやってみよう、という積極性が私の中にうまれてきました。結果を恐れずに何事にも前向きに取り組むようになりました。
私に新たな生きる喜びを与えてくれたランニング。このランニングと出会っていなかったら、私の人生はどんなことになっていたのかわかりません。ランニングと出会えたおかげで私は再び生きることができました。
そのことに感謝をするためにも、走ることの楽しさをこれからもどんどん周りに伝えていきたい。あらためてそう思いました。そんな思いが次々と私の中を駆け巡っていきました。
走り始めるきっかけは「息子に認められたい」という一心でした。でも本当に認められたかったのは息子にではなかったのかもしれません。自分のことを認めようとしていなかった自分にこそ認められたかったのかもしれません。そのために、私は走ったのかもしれません。そしてようやく、自分のことを認められるようになりました。そのゴールがサロマでした。
そして2012年。私は今も走り続けています。(完)
バックナンバー
1.無言の抗議
2.思い上がり
3.初フルでの挫折
4.ホームページ開設
5.北海道マラソン、奇跡の完走
6.そしてサロマへ・・・