自分はどうしてこんなことをしているのだろう。どうして42.195kmなどというとんでもない距離を走らなければならないのだろう。やはりフルマラソンなんて、私のような普通の人間が挑戦すべきことではないのかもしれません。選ばれた人にのみ許された冒険なのかもしれません。
こんなに痛い思いをしなければならないなら、フルマラソン挑戦は1度だけで十分です。こんな思いはもう2度としたくありません。これが最初で最後のフルマラソン挑戦にしよう。そんな思いも頭の中を渦巻きます。
関門や監察のスタッフの人は、こんな「ウォーキング・ランナー」の私にも温かく激励をしてくれます。
「がんばって」
「まだ時間はあるからね」
「マイペース、マイペース」
でもそんなスタッフの皆さんにこんな情けない姿を見せることが申し訳なくて、目を合わせることができません。小さい声で「ありがとうございます」と言うのが精一杯でした。
給水所に寄っても、急かされるわけじゃありません。
「よくここまで頑張ったね」
「まだ時間はたっぷりあるからね。ゆっくり休んで力をつけていってね」
そんなスタッフの皆さんの温かい言葉に、暗く沈んでいた気持ちも少しずつ上向いてきます。こんな皆さんの応援に応えるためにも、ゆっくりでいいからゴールを目指すことにします。
痛む足を前に出し、少しずつ、少しずつゴールが近づいていきます。残りの距離を示す看板の数字が少なくなっていくにつれて、「リタイア」という文字だけは、頭の中から徐々に消えていきます。
バックナンバー
1.無言の抗議
2.思い上がり
3.初フルでの挫折