35kmの手前です。もうゴールまでは10kmを切っています。42.195kmという距離は未知の距離ですが、残りの距離はこれまで何度も走ってきた、よくわかっている距離です。
10kmという距離は、今では何の不安も感じずに走れる距離です。膝さえ痛くなければ走れないわけがありません。数歩歩いて立ち止まり、屈伸をしてみます。すると膝痛もいくらか軽くなったような気がします。そして走り出します。でもすぐに痛みに耐えかねて歩き出します。その繰り返しになってきました。
35kmのラップはもはやキロ9分近くになっています。速いとか遅いとかいう段階ではなくなり、ラップを気にすることすら意味を失ってきたように感じました。
目標タイムは遠くなり、最後まで走り通すこともできず、もはや私に残されているのは時間内完走だけです。それだけは、自らリタイアを申し出ない限り、このまま歩いても大丈夫に思えます。5時間といわれたらなんともいえませんが、6時間という制限時間がとてもありがたく思えました。でも問題は、歩く気力すら最後まで続くかどうかです。
終盤のコースは石狩川の堤防の上を走ります。秋の抜けるような青空が広がっていて、大雪の山並みも美しく見えます。ここまで元気に走ってきたとしたら、この景色にはすごく癒されることでしょう。でもボロボロになってしまった私には、そんな見事な景色さえ鬱陶しく思えます。
高校生のとき、「フルマラソンを走ってみたいな」と漠然と思ったことがありました。でも当時は、一般市民が走るフルマラソン大会は北海道にはありませんでしたし、一般市民が走れるものとは思っていませんでした。このフルマラソン初挑戦を決めたとき、高校時代に抱いた漠然とした夢を思い出し、それが実現する舞台になるのだとしみじみと思っていました。
でも、私が抱いた夢はこんな姿じゃありません。ボロボロになって痛む足を引きずって歩いている姿を夢見ていたわけではありません。苦しみながらも、最後までしっかりと走り続けているはずでした。
バックナンバー
1.無言の抗議
2.思い上がり
3.初フルでの挫折