なにしろ、他のランナーがどのくらいのスピードで走るのか、自分がどのくらいのスピードで走れるのか、まったくわかりません。しかもスタートラインに並ぶランナーたちは体も引き締まっていていかにもランナー然としています。さらにもう一つ、私とは全然違うことがあるということに気がつきました。
実は私はランニング用の時計を持っていませんでした。ヘルシーマラソンを走ったときも途中でタイムを気にすることはありませんでしたし、練習のときもタイムは気にせずに走っていました。だから今までは時計のことを気にすることはなかったのです。
ランニング用の時計をつけたところで、目標タイムをどのくらいに設定すればいいのかも、どのくらいのペースで走ればどのくらいのタイムになるのかも、全然わかりません。ただ漠然と考えていたのは、ヘルシーマラソンのタイムは約5.27kmの距離で後半はかなり歩きながらも31分台でした。それよりも短い5kmですから、せめて30分は切りたいものだと思いました。もちろん歩くなんてとんでもないことです。
でもこのとき私の腕にはめられていた時計は、アナログ時計でした。ですから途中でペースを知ろうにも、正確なところはまったくわかりません。むろん、私以外にはアナログ時計をはめているランナーは1人もいません。私だけが素人だということは、時計を見ただけでも一目瞭然です。
そんな恥ずかしさにすっかり縮こまったまま、スタートをしました。
やはり他のランナーと私とでは、スピードに歴然とした差がありました。他のランナーの多くは、ヘルシーマラソンのときの息子のような勢いでスタートしていきます。私は後ろの方からトボトボとついていくという形になりました。
このペースについていったら、ヘルシーマラソンと同じ結果が待っているでしょう。残念ながら1ヶ月あまりの練習では、そこまでの力はついていません。まだ走り始めて1ヶ月あまりのビギナーです。アナログ時計をはめたままで走っているビギナーです。こうなってくると、アナログ時計をはめていることがまるで初心者マークのような役割を果たしてくれるようで、逆に助かる思いがしました。
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1.無言の抗議