まもなく反対車線に先頭の選手がやってきます。そして次々と第1折り返しを回ってくる選手たちがやってきて、知り合いのランナーの姿も見えるようになってきました。沿道の声援に応え、すれ違う仲間のランナーともエールを交換し、ますますテンションが上がってきます。その中には、釧路湿原マラソンでペースメイクをしてくれた仲間もいました。
「いいペースですよ、大丈夫です!」
そう言われて私は自分のペースに自信を持つことができました。そうした声援のひとつひとつが私にとって大きなエネルギーとなり、気がつくとついついピッチも早まっています。
「抑えて、抑えて」
身振りを交えて、声を出して、オーバーペースにだけはならないよう自分に言い聞かせます。抑えきれない何かが自分の中にどんどん大きくなってきているのを感じています。でもそれを爆発させるのは今ではありません。ここで爆発させると最後まで持たないに違いない。過去3度のフルマラソン経験から、そのことだけは感じ取れるようになっていました。その後も勝手に走り出そうとする体を、身振りと声で何度も抑えました。
20kmまでの5kmも27分台のペースで走ります。そして中間点は、1時間55分で通過しました。理想的なペースで走れています。
やがて第1折り返しを迎えます。この折り返し点も、大勢の観衆が取り巻いています。大声援に応えながら、私は気持ちよく折り返しました。
ところが折り返して間もなく私の目に飛び込んできたものは反対車線を走る終末車でした。関門制限時間のわずか3分前くらいのところを走っている私です。つまり終末車は私の数百m後ろにいるということです。こうして終末車をさほど離していないことに気がつくと、「本当にこれで大丈夫か?」とちょっと不安も首をもたげました。
でも私はこの不安をすぐに吹き飛ばします。こういうペースで走っているのは作戦通りのことですから、むしろここで終末車を大きく引き離してしまうよりもいいのです。たまたま終末車の姿を見て動揺しましたが、レースプラン通り、100%のレースをしています。
25kmまでの5kmも27分台のペースを守って通過しました。このあたりになると、ペースの落ちたランナーも増えてきます。そんな中には仲間のランナーの姿もあります。そんな仲間に声をかけ、なんとか気持ちを奮い立たせようとしながら抜いていきました。
ついに30kmも通過しました。この5kmのペースもしっかりと27分台を守っています。関門制限時間までも少しずつ開いているものの、まだ3分台です。あの忌まわしき終末車は、まだ私の数百m後ろにいるはずです。
とうとうウォーミングアップを終わりました。ここからがマラソンのスタートです。
バックナンバー
1.無言の抗議
2.思い上がり
3.初フルでの挫折
4.ホームページ開設
5.北海道マラソン、奇跡の完走