4度目のフルマラソンですが、ここまでは自分でも完璧なレース展開です。スタート前に描いた作戦通りの展開です。しかも体にはまだまだ余力を感じています。
でも突然、私は不安になりました。
「これだけ完璧な状態で、完璧なレース運びをして、これでも完走できなかったとしたら、自分は一生北海道マラソンを完走できないかもしれない」
しかし同時に、今日は絶対に完走できるという確信が、自分の中でますます強くなっていることも感じていました。
「よし、あとはブレーキを外すぞ!」
ピッチが速くなりそうになると、その都度私は口にも出して抑えてきました。でもウォーミングアップが終わった今、ブレーキをかける必要はありません。自分の気持ちが望むままに、自分を解放して走ろう。そう思いました。
過去3回のフルマラソンでは、いずれも32km付近に大きな壁がありました。最初の2回は、歩き出したのがこのあたりです。前走の洞爺湖マラソンでは、このあたりでエネルギーが切れ、急激に失速しました。しかし今回の32kmは、「行ける」という確信を持てる地点でした。沿道に応援している仲間の姿を見つけると、
「俺、行けそうだよォ!」
右手を高々と突き上げて叫んでいました。
残り10kmを切り、コースは緩やかに上っています。でもブレーキを外した私は軽快に走っています。このあたりまでくると、周りにはペースの落ちたランナーもますます増えています。表情は苦しそうで、歩いているランナーもいます。そんなランナーたちを、私はますます元気な笑顔で抜いていきます。沿道からの声援に応える声もますます大きくなります。
35km関門の手前では、役員の方が「関門閉鎖5分前」と叫んでいました。でもここまで関門閉鎖3分前に通過してきた私には、「まだ5分もあるの?」とさえ思えました。終末車との差も1km近くまで広がったはずです。ブレーキを外した影響もあったのでしょう、この5kmは26分台にペースが上がっていました。
バックナンバー
1.無言の抗議
2.思い上がり
3.初フルでの挫折
4.ホームページ開設
5.北海道マラソン、奇跡の完走