ここから第2折り返しに向かって約2.5km区間はすれ違いのコースとなります。反対車線には40km地点が見えました。残る関門はあそこだけ。約30分後にそこを通過すれば、ゴールは約束されます。
第2折り返しを回って40km地点に向かってくるランナーの中には、仲間の姿も大勢ありました。そんな仲間たちの多くは、私の姿を認めて驚きの表情を浮かべていました。そりゃあそうでしょう。ここまでの自己ベストが4時間17分という私が、35kmを過ぎて完走圏内を、しかも笑顔を浮かべて走っているなどと想像していた仲間はほとんどいなかったでしょうから。ただひとり、釧路湿原マラソンでともに走った彼だけは、
「やりましたね!いける!いける!」
と、右腕を突き上げながら笑顔で声をかけてくれました。
ここまでくるとさすがに体の疲れも大きくなってきました。でも気持ちはどんどんハイになってきます。そんな気持ちに動かされて、足はいっそう軽快なペースを刻みます。
ついに前方にものすごい人波が見えてきました。第2折り返しを取り囲む人たちはものすごい数で、そして疲れたランナーたちに大声援を送ってくれています。
絶対に完走すると思っていたけど、本当にここまで来られるとは・・・。私は折り返し点を囲む人たちにとびきりの笑顔で応えながら回り、今来た道を戻り始めました。
「あの人、本当に楽しそうに走っているね」
沿道でそんな話をしている声も聞こえました。誰を見て言っていたのかはわかりませんが、きっと私を見てそう言ってるのでしょう。私は勝手にそう思いながら走っていました。
折り返してからも足を緩めません。さすがに肉体は急激に限界が近づいてきているように思えます。もしも気持ちが切れてしまったら、そこで足が止まってしまいそうな気もします。いつの間にか右足の裏にマメもできてしまったようで、まるで自分の存在感を誇示するかのように、私の脳に痛みを伝えてきます。
でもゴールが近くなってきていることもあるのか、沿道の観衆はいっそう増え、その声援は一段と大きくなっています。それに応える私の声も絶叫に近くなっています。
そして・・・ついに40km関門が見えてきました。そこが最初のゴールだ!と残った力を振り絞ります。関門はここが最後です。ゴールの制限時間はありませんから、40km関門を時間内に通過してしまえば、あとは倒れたりしない限り完走が約束されます。
バックナンバー
1.無言の抗議
2.思い上がり
3.初フルでの挫折
4.ホームページ開設
5.北海道マラソン、奇跡の完走