あと10m・・・5m・・・「ピーッ!」。マットの上を通過して、チップが感知された音が聞こえてきます。これで完走は約束されました。小さくガッツポーズをしながら40km地点を通過しました。この間の5kmラップは26分台の半ばまで上がり、このレースを通じての最速ラップとなりました。そして関門制限時間までは7分もの貯金を作っていました。
ここまでの3度のフルマラソン。後半はいつもあれだけボロボロになっていたというのに、この大舞台で35kmから最速ラップを記録できるような走りをやってのけるなんて・・・。いったい自分のどこにそんな力が潜んでいたのでしょう。
40km関門のすぐ先で待ち構えていた仲間たちと力一杯歓喜のハイタッチをして通過します。
40km地点をゴールに見立てて走ってきました。完走が約束されて気が緩んでしまったのでしょうか、40km関門を通過した途端、疲れが一気に足に来てしまい、足がまったく出なくなってしまいました。
40km地点を過ぎて間もなく、駅前通を左折してゴールの中島公園に向かいます。この間は、通称ビクトリーロードと呼ばれていました。今まで以上の大観衆が詰めて、今年も最高気温が30度を超えた灼熱地獄を乗り越えて帰ってきたランナーを大歓声で迎えてくれる場所です。
ここまで必死で走ってきたのです。最後くらいはのんびりしてもいいでしょう。ここを一気に駆け抜けてしまうのはもったいない気もします。温かく声をかけてくれる沿道の皆さんに手を振って応えながら、ゆっくり走りつづけました。
ゴールの中島公園内に入ります。園内も大勢の観衆の皆さんが声援をしてくれています。でも私には、もう何も見えなくなっていました。すでに感極まって、次々と涙が溢れてくるのです。レースというよりも、すでにウイニングランの気分です。歯を食いしばってのゴールは私には似合いません。私は常に笑顔で走るんだ、と思っているのに、どうしても笑顔になれません。どうしても泣き顔になってしまいます。
園内をゆっくりと通りぬけ、栄光のゴールに向かいます。そしてトップのエリック・ワイナイナがゴールしてから1時間37分05秒後。私は天に届けとばかりに両腕を突き出して、雄叫びを上げながらゴールラインを駆け抜けました。3時間50分18秒。生まれて初めてのサブフォーを、出場するだけでも夢だったこの大舞台で達成することができました。溢れる涙をぬぐうこともせずに完走メダルをかけてもらいます。でも次の瞬間、私はもう耐えきれませんでした。
泣きました。あたりをはばからずに、大声を上げて泣きました。号泣でした。この歳になってまさか人前で泣くなんて・・・。でも私は、そうする以外に自分を表現する術がありませんでした。
バックナンバー
1.無言の抗議
2.思い上がり
3.初フルでの挫折
4.ホームページ開設
5.北海道マラソン、奇跡の完走