しばらくすると、目の前に視界が広がってきます。長く続く下りの直線の先には青く輝くサロマ湖の湖面が見えます。こんな素晴らしい景色を見ながら走ることができる。最高に幸せな気分を感じていました。60kmまでは。
60kmまではずっとイーブンペースで走れていました。60kmのエイドでリフレッシュして走り出してからも、走りは変わっていないつもりでした。でも徐々に膝の痛みを感じ始めてきました。そして体が妙に重く感じられてきました。
エイドのテントが見えてくると、救われたような気分になります。呼吸を整え水分や食料を補給し、首筋や足に水をかけます。そして屈伸をして、再びコースに戻ります。
50kmを過ぎてからは距離表示が1km毎にあります。最初は1kmずつ数字が増えていくのが嬉しかったのですが、徐々に1kmが長く思えてきました。この頃になると1kmごとのラップは、7分台に突入してしまっていました。
60kmを越えて突然ダメージが襲ってきたというわけではないのでしょう。ここまで少しずつ蓄積されてきたダメージに、私が気づかなかったというだけのことでしょう。でも私には突然大きなダメージが現れたように感じていました。ラップが7分台にはっきり落ちたということには、大きなショックを感じていました。
63km過ぎから始まるキムアネップの森は、魔女の森という別名があります。ここまで耐えながら走ってきたランナーたちに、ここで休んでいけと耳元で囁く魔女が住んでいるというのです。まわりを見ると、たしかに歩いているランナーの姿も多く見るようになりました。
ここまでよく頑張りました。まだ関門制限時間までは余裕があります。時間が許す限り、のんびりと流していきましょう。それでもこのペースならば70km関門はクリアできると思います。70kmを越えることができたら、74kmのエイドでおしるこを食べてリタイアすることも可能です。今年はそこまで行ければ十分です。初めての100kmでそこまで行ければ、自分としては大健闘でしょう。
魔女が私の耳元でも囁き始めました。
バックナンバー
1.無言の抗議
2.思い上がり
3.初フルでの挫折
4.ホームページ開設
5.北海道マラソン、奇跡の完走
6.そしてサロマへ・・・