「シネマ報告書」には、映画の内容や核心・結末に触れる、いわゆる“ネタバレ”が多分に含まれております。
これから観ようと思っている方は、本報告書の内容についてご理解のうえ十分注意してお読みください。
もっとパンチが欲しい
★★★
（★…1点 ☆…0.5点，★5つで満点）
（2012年／日本／128分）
【 脚本・監督 】
内田けんじ
【 出演 】
堺雅人
香川照之
広末涼子
荒川良々
森口瑤子
小野武彦
【あらすじ】
売れない貧乏役者の桜井は、銭湯で石鹸に足を滑らせた男のロッカーの鍵を入れ替え、荷物を盗み出す。
一方、銭湯で石鹸に足を滑らせた男は、頭を強く打ってしまい記憶喪失に。自分の荷物から、自分は売れない役者の桜井であると知り、たまたま病院で知り合った雑誌社の女編集長である早苗とともに、記憶を取り戻すため懸命に生きていく。そしていつしか、男と早苗は、互いに心惹かれあっていく。
かたや本物の桜井は、ヤクザから仕事の依頼が舞い込み、男は殺し屋ではないかと疑い始める―
【コメント】
内田けんじ監督といえば、4年ほど前に観た『アフタースクール』が印象深い。
単なる男女のさわやか青春ラブストーリーなんだろ？をたかをくくっていた僕は、『アフタースクール』に見事にやられてしまったクチで、その監督が4年ぶりに監督した映画となれば観ないわけにはいかないだろうと、劇場に足を運んだ次第だ。
うむ、面白い。全体的に小ネタを撒いて笑いを引き起こしつつ、決してわざとらしいドラマチックな演出をせず、静かに、淡々と話を展開していく。『アフタースクール』でもそうだったが、淡々とした中に、予想外の展開をサラッと振り込んでくるので、思わずニヤリとしてしまう。内田けんじ監督の魅力のひとつなんでしょうな。
キャラも出し過ぎず、堺雅人、香川照之そして広末涼子が演じるそれぞれのキャラをじっくりと描いている部分も良い。相変わらず香川照之はブレないな。安定してる。堺のダメ役者っぷりも味が出てるし、不思議ちゃん広末もなかなか。3人の掛け合いも面白い。正直、荒川良々のヤクザだけはピンとこなかったけどね。
まあでも、ほんとプロットをきちんと組み立てて、面白い展開にしようとしている感じは見て取れるし、それがきれいに収まっているところは、昨今のケンチャナヨ精神あふれる雑な脚本に比べれば、格段に優れていると思われ。
まあでもね～、きれいにまとまり過ぎて、どうも味気無い気がする。
観終わっても、どうも物足りなさを感じてしまう。毒も無く、オーバーな抑揚も無く、綿密にプロットとキャラを組み立てたはいいが、いまいちパンチが無い。ストーリーを追うだけじゃなく、もっと映像から湧いてくる面白さが欲しかったかな。そういうのを極力抑えるのがこの監督の手法なのかもしれないけどね。
面白かったことに間違いはないのだが、じゃあ具体的に、と言われると、う～んと…考え込んでしまうのが本作。いまいち特筆すべき印象的な場面が思い浮かばない。とにかく何かが物足りない気がしてならない作品だった。
そんなわけで、お話は確かに面白いのだが、もうひとつ味付けしてほしかった作品でしたね。
監督の次回作に期待かな。
【2012年度 Myランキング】（9/16時点）
本作は、本年度のベスト10ワースト3ともにランキング外。
（ベスト）… ★★★☆以上が基準
１位：ムカデ人間２ ★★★★☆
２位：ライアーゲーム ‐再生（REBORN）‐ ★★★★
３位：ドライヴ ★★★★
４位：ドラゴン・タトゥーの女 ★★★★
５位：最強のふたり ★★★★
６位：ダークナイト ライジング ★★★☆
７位：ゾンビアス ★★★☆
８位：アーティスト ★★★☆
９位：テルマエ・ロマエ ★★★☆
１０位：愛と誠 ★★★☆
次点：劇場版SPEC～天～ ★★★☆
麒麟の翼～劇場版・新参者～ ★★★☆
タッカーとデイル 史上最悪にツイてないヤツら ★★★☆
（ワースト）… ★★☆以下が基準
１位：KOTOKO ★
２位：ものすごくうるさくて、ありえないほど近い ★★
３位：フライトナイト 恐怖の夜 ★★
＜その他ランク外一覧＞
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