ムカデ人間2 (評価:★★★★☆) | そんなことより恋をしろ

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※※※ 注意 ※※※

 「シネマ報告書」には、映画の内容や核心・結末に触れる、いわゆる“ネタバレ”が多分に含まれております。
 これから観ようと思っている方は、本報告書の内容についてご理解のうえ十分注意してお読みください。
 なお、本作に敬意を表し、今回に限り一部“茶色”を着色してお送りします。



観るに堪えない“大傑作”

★★★★☆
(★…1点 ☆…0.5点,★5つで満点)

そんなことより恋をしろ-ムカデ人間2


(2011年/オランダ・イギリス/91分/The Human Centipede Ⅱ(Full Sequence))

【 監督・脚本 】
トム・シックス

【 出演 】
ローレンス・R・ハーヴェイ
アシュリン・イェニー
マディ・ブラック
ドミニク・ボレリ




【あらすじ】

 ロンドンのとある地下駐車場で警備員として働く中年男マーティン。
 背が低く醜く太った彼は、幼少時代に父親から性的虐待を受けており、そのせいで父親は未だ刑務所に入ったままだが、母親からはそのことを逆恨みされており、毎日のように悪態をつかれていた。
 そんなマーティンの唯一の楽しみは、映画『ムカデ人間』を鑑賞し、ひとり妄想に深けること。彼の妄想は次第にエスカレート、自分も“ムカデ人間”を作りたいという欲望が爆発し、ついに男女12人を拉致、医療知識も麻酔すらも持たない恐怖の“12人ムカデ人間”を作り始める―


【コメント】

 ああ…俺はなんちゅうモンを観てしまったんだ…
 最近の映画の刺激に飢えてるとはいえ、刺激目当てに俺はなんちゅうモンを…

 笑う、泣く、恐怖に震える、手に汗握る…映画を観ればいろいろな人間の感情が湧くものだが、では本作『ムカデ人間2』に湧く感情はなんだろう?
 それは間違いなく“胸クソ悪くなる”だ。
 いや、言ってもですよ、俺は普通の人よりも映画をよく観ている自負があるので、ちょっとやそっとの刺激は慣れっこなわけですよ。血しぶきが飛び散ろうが目ん玉が飛び出そうが頭がボーンしようがチェーンソーで四肢がバラバラになろうが、俺にとってはそんなもの見飽きるくらい見てる。スプラッター余裕!ばっちこい!状態なわけです。
 だけど、本作『ムカデ人間2』は違う!全然違う!スプラッターとかグロとかそんな小手先のレベルで語れる映画なんかじゃあない!
 不快、不愉快、悪趣味、俗悪、変態、キチ○イ、ありとあらゆる罵詈雑言を浴びせられても致し方ない、まさに観るに堪えない“胸クソ悪くなる映画”なのだ。
 劇場に足を運び続けて数十年、何百本観たか知れない映画の中で、今回ほど映画館に足を運んだことを後悔したことはない。事実、俺は映画の後半で、その圧倒的な映像の迫力に負け、1分ほど中座してしまった。
 
 では、本作は観る価値ナシの駄作か?と聞かれれば答えはノー。
 本作『ムカデ人間2』は、単なるキワモノ映画として片づけてはいけない、後世に名を残すカルト映画の大傑作であると断言する。
 “胸クソ悪くなる”感情は、まさに作り手の狙い、思惑通り。ゆえに、ばっちり胸クソが悪くなった俺は、本作を賞賛しなければならないわけだ。

 前作『ムカデ人間』をメタフィクションとして続編をスタートさせるアイデアもさることながら、あえてモノクロで撮影することによって生まれるウェットでダークな雰囲気、全編に鳴り響く不快な重低音、抑揚がない淡々としたストーリー展開により一層浮き出る主人公マーティンの狂気…
 12人を拉致するまでの行動と、マーティンの虐げられた日常を交差させながら、嫌ーな空気を構築していき、まさに阿鼻叫喚・地獄絵図と化すクライマックスで胸クソ悪さがMAXに到達する。
 本作一番の見どころであるクライマックスは、映画史上最悪の映像と言っても過言ではない。特に俺は、ムカデ人間の“先頭”に漏斗を挿入するところから、下剤を注射して云々(後は分かるな?)までのシーンで、本当にえずきそうだった。喉元まで来ていたのを必死にこらえた。
 俺はスカトロなんざ趣味じゃないんだ!ふざけんな!
 しかしながら、アイデア、ストーリー構成、モノクロと不快音が織りなす独特の雰囲気、そしてなんといってもあのマーティン役のローレンス・R・ハーヴェイの恐ろしいまでの存在感、どれをとっても圧倒的と言わざるを得ない。
 監督であるトム・シックスは、もしかしたら本作で「映画に影響されてマネしたらこんな悲惨なことになっちゃうぜ!だからやめろよな!」というメッセージを込めたのかもしれない。
 アイデア一発で意外と普通だった前作とは一線も二線も画す、まさに超問題作、カルトの大傑作であると、俺は声を大にして言いたい。
 ああ、あれだけ不快になっておきながら、また観たくなってきちゃったよ…

 さて、注目すべきはやはり、トム・シックス監督がかねてからアナウンスしている「ムカデ人間」“三部作”の完結編となる『ムカデ人間3』だろう。
 すでに脚本は完成、時期的には既に撮影に取り掛かっているであろうパート3は、パート1のハイター博士と本作パート2のマーティンが登場し、なんと500人のムカデ人間が完成するという噂。
 また、パート1とパート2が全く別物の作品であったように、パート3もまったく違う作品になるという。パート2で既にグロッキー気味だった俺は果たしてパート3を観ることができるのだろうか…
 しかしながら、トム・シックスという監督の力量・ポテンシャルが、果たしてパート1とパート2のどちらにあるのか?という意味でも、パート3の製作は非常に意義がある思われる。
 本作『ムカデ人間2』の完成度がたまたままぐれだったのか、それとも、当初から三部作を意識した作り方だったのか。もしもそれが後者であったのならば、トム・シックスという監督は、将来とんでもない名監督に化けるかもしれない。


【その他】

 『ムカデ人間2』を観て気分を害した方は、↓を見ると多少救われるかもしれません…




【2012年度 Myランキング】(7/15時点)

 本作は、本年度のベスト10中1位(暫定)にランクイン。



(ベスト)… ★★★☆以上が基準

  1位:ムカデ人間2 ★★★★☆
  2位:ライアーゲーム ‐再生(REBORN)‐ ★★★★
  3位:ドライヴ ★★★★
  4位:ドラゴン・タトゥーの女 ★★★★
  5位:ゾンビアス ★★★☆
  6位:アーティスト ★★★☆
  7位:テルマエ・ロマエ ★★★☆
  8位:愛と誠 ★★★☆
  9位:劇場版SPEC~天~ ★★★☆
 10位:麒麟の翼~劇場版・新参者~ ★★★☆
  次点:タッカーとデイル 史上最悪にツイてないヤツら ★★★☆




(ワースト)… ★★☆以下が基準

  1位:KOTOKO ★
  2位:ものすごくうるさくて、ありえないほど近い ★★
  3位:逆転裁判 ★★☆


<その他ランク外一覧>
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『ムカデ人間2』公式サイトはこちら