ドミートリイ・ドミートリエヴィチ・ショスタコーヴィチ
(Dmitrii Dmitrievich Shostakovich / 1906-1975)の
交響曲(全15曲)の探訪を先々週からアップしていますが、
いよいよ最終回が近づいてきました。
ベートーヴェン以降のシンフォニストのジンクスであった
「交響曲第9番」を超えることが不可能ではないかという
大きく聳え立っていた壁を越えて、あのマーラーも
為し得なかった二ケタ番号交響曲の完成という
偉業を若くして成し遂げたショスタコーヴィチは、
孤高の境地を歩んでいきました。
しかし、意表を突いた小振りな<第9番>が
"ジダーノフ批判"の対象になってしまうという苦境にも立ち、
<第10番>の発表は1953年になりました。
その<第10番>によって第2次世界大戦に関連した
"戦争シリーズ"を完結すると、次には、
ロマノフ王朝末期の「血の日曜日」事件を扱った
表題交響曲<第11番「1905年」>(1957年)、そして、
レーニンによる「十月革命」を題材とした表題交響曲
<第12番「1917年」>(1961年)と、
体制賛美の色合いが濃い作品を続けました。
しかし、続く<第13番「バビ・ヤール」>(1962年)では、
非スターリン化が進行していた"雪解け"の時期とは言え、
大胆にも、エヴゲニー・エプトゥシェンコの
体制批判的な詩をテキストに用いて、
初期の交響曲以来封印してきた声楽付交響曲のカタチを
復活させた音楽で内外に大きな反響を巻き起こしました。
その後、交響曲の作曲から
暫く遠ざかったショスタコーヴィチは、
1969年に発表したこの<第14番>で、
またまた新境地に踏み出しました。
無調性・十二音技法・トーンクラスターといった、
当時のソヴィエトでは遠ざけられていた前衛的技法を、
自分なりに消化したカタチで応用した作品になっています。
交響曲というよりもオーケストラ伴奏歌曲集とでも言うべき、
外観を持った作品で、ソプラノとバスの独唱を伴い、
オーケストラは弦楽器と打楽器のみという編成で、
例外的に多い11楽章から構成される点が大きな特徴です。
マーラーの交響曲「大地の歌」を思わせるとも言えるでしょう。
###交響曲第14番 ト短調 作品132「死者の歌」###
[第1楽章]「深いところから」Adagio
バス独唱が、ロルカによる歌詞を歌います。
[第2楽章]「マラゲーニャ」 Allegretto
同じくロルカの詩による歌詞で、今度はソプラノが歌います。
[第3楽章]「ローレライ」Allegro molto - Adagio
この楽章から歌詞はアポリネールになります。
打楽器が多用され、前半のアクセントになる楽章です。
二重唱で歌われます。
[第4楽章]「自殺者」Adagio
ソプラノ独奏にチェロ独奏(オケ首席)が絡みます。
歌詞はアポリネールです。
[第5楽章]「心して」Allegretto
シロフォンが12音音列を奏して始る楽章です。
兵士とその姉妹の近親相姦をテーマとした、
アポリネールの歌詞が、ソプラノ独唱で歌われます。
[第6楽章]「マダム、御覧なさい」 Adagio
アポリネールの歌詞が二重唱で歌われます。
シロフォンが寂寥感を漂わせます。
[第7楽章]「ラ・サンテ監獄にて」Adagio
アポリネールの歌詞がバス独唱で歌われます。
[第8楽章]「コンスタンチノープルのサルタンへの
ザポロージェ・コサックの返事」Allegro
ここでもバス独唱によってアポリネールの歌詞が歌われます。
[第9楽章]「おお、デルウィーク、デルウィーク」Andante
この楽章だけ、歌詞はキュッヘルベケルによるものです。
バス独唱によって歌われます。
[第10楽章]「詩人の死」 Largo
ソプラノ独唱によって、今度はリルケによる歌詞が歌われます。
ここでもシロフォンの効果的な使用が印象的です。
[第11楽章]「結び」Moderato
リルケの歌詞による終楽章です。
人生の結びである死を賛美した内容が歌われます。
結尾で弦楽器のパートが細分化されて、
トーンクラスター状の音響となります。
当時の西欧の現代音楽シーンでの大きな潮流となっていた
トーンクラスターを、ショスタコーヴィチなりに試みた
密かな気概を感じさせてくれます。
YouTube / Dmitri Shostakovich: Symphony no.14 op.135
Jitka Soběhartová - soprano
Jan Ericsson - Bass
Filharmonický orchestr Iwasaki
Chuhei Iwasaki - conductor
全11楽章で演奏時間は60分弱位が標準的でしょうか。
何とも厳粛且つ不思議な交響曲です。
仕事場にあるCDは、初演を指揮したバルシャイの指揮による
モスクワ室内管弦楽団の演奏です。
CD:ショスタコーヴィチ/交響曲第14番「死者の歌」
ルドルフ・バルシャイ指揮/モスクワ室内管弦楽団
TOKYO FM / TFMC-0036
(Dmitrii Dmitrievich Shostakovich / 1906-1975)の
交響曲(全15曲)の探訪を先々週からアップしていますが、
いよいよ最終回が近づいてきました。
ベートーヴェン以降のシンフォニストのジンクスであった
「交響曲第9番」を超えることが不可能ではないかという
大きく聳え立っていた壁を越えて、あのマーラーも
為し得なかった二ケタ番号交響曲の完成という
偉業を若くして成し遂げたショスタコーヴィチは、
孤高の境地を歩んでいきました。
しかし、意表を突いた小振りな<第9番>が
"ジダーノフ批判"の対象になってしまうという苦境にも立ち、
<第10番>の発表は1953年になりました。
その<第10番>によって第2次世界大戦に関連した
"戦争シリーズ"を完結すると、次には、
ロマノフ王朝末期の「血の日曜日」事件を扱った
表題交響曲<第11番「1905年」>(1957年)、そして、
レーニンによる「十月革命」を題材とした表題交響曲
<第12番「1917年」>(1961年)と、
体制賛美の色合いが濃い作品を続けました。
しかし、続く<第13番「バビ・ヤール」>(1962年)では、
非スターリン化が進行していた"雪解け"の時期とは言え、
大胆にも、エヴゲニー・エプトゥシェンコの
体制批判的な詩をテキストに用いて、
初期の交響曲以来封印してきた声楽付交響曲のカタチを
復活させた音楽で内外に大きな反響を巻き起こしました。
その後、交響曲の作曲から
暫く遠ざかったショスタコーヴィチは、
1969年に発表したこの<第14番>で、
またまた新境地に踏み出しました。
無調性・十二音技法・トーンクラスターといった、
当時のソヴィエトでは遠ざけられていた前衛的技法を、
自分なりに消化したカタチで応用した作品になっています。
交響曲というよりもオーケストラ伴奏歌曲集とでも言うべき、
外観を持った作品で、ソプラノとバスの独唱を伴い、
オーケストラは弦楽器と打楽器のみという編成で、
例外的に多い11楽章から構成される点が大きな特徴です。
マーラーの交響曲「大地の歌」を思わせるとも言えるでしょう。
###交響曲第14番 ト短調 作品132「死者の歌」###
[第1楽章]「深いところから」Adagio
バス独唱が、ロルカによる歌詞を歌います。
[第2楽章]「マラゲーニャ」 Allegretto
同じくロルカの詩による歌詞で、今度はソプラノが歌います。
[第3楽章]「ローレライ」Allegro molto - Adagio
この楽章から歌詞はアポリネールになります。
打楽器が多用され、前半のアクセントになる楽章です。
二重唱で歌われます。
[第4楽章]「自殺者」Adagio
ソプラノ独奏にチェロ独奏(オケ首席)が絡みます。
歌詞はアポリネールです。
[第5楽章]「心して」Allegretto
シロフォンが12音音列を奏して始る楽章です。
兵士とその姉妹の近親相姦をテーマとした、
アポリネールの歌詞が、ソプラノ独唱で歌われます。
[第6楽章]「マダム、御覧なさい」 Adagio
アポリネールの歌詞が二重唱で歌われます。
シロフォンが寂寥感を漂わせます。
[第7楽章]「ラ・サンテ監獄にて」Adagio
アポリネールの歌詞がバス独唱で歌われます。
[第8楽章]「コンスタンチノープルのサルタンへの
ザポロージェ・コサックの返事」Allegro
ここでもバス独唱によってアポリネールの歌詞が歌われます。
[第9楽章]「おお、デルウィーク、デルウィーク」Andante
この楽章だけ、歌詞はキュッヘルベケルによるものです。
バス独唱によって歌われます。
[第10楽章]「詩人の死」 Largo
ソプラノ独唱によって、今度はリルケによる歌詞が歌われます。
ここでもシロフォンの効果的な使用が印象的です。
[第11楽章]「結び」Moderato
リルケの歌詞による終楽章です。
人生の結びである死を賛美した内容が歌われます。
結尾で弦楽器のパートが細分化されて、
トーンクラスター状の音響となります。
当時の西欧の現代音楽シーンでの大きな潮流となっていた
トーンクラスターを、ショスタコーヴィチなりに試みた
密かな気概を感じさせてくれます。
YouTube / Dmitri Shostakovich: Symphony no.14 op.135
Jitka Soběhartová - soprano
Jan Ericsson - Bass
Filharmonický orchestr Iwasaki
Chuhei Iwasaki - conductor
全11楽章で演奏時間は60分弱位が標準的でしょうか。
何とも厳粛且つ不思議な交響曲です。
仕事場にあるCDは、初演を指揮したバルシャイの指揮による
モスクワ室内管弦楽団の演奏です。
CD:ショスタコーヴィチ/交響曲第14番「死者の歌」
ルドルフ・バルシャイ指揮/モスクワ室内管弦楽団
TOKYO FM / TFMC-0036