膵臓癌末期は
予想より早く壮絶に
なってきた
緩和ケア病棟に
予定より早く
幸運にも空きがでて
お昼からベッドのまま
移動した
ここは
3年前義母がいた場所
最近、娘は時折
車の後方座席で
シクシクそっと泣いている
車のミラーで見たら
後部座席は丸見えなのだけど
本人は隠しているつもり
声をかけても「泣いてない」
それが彼女のプライド
絶対
血やその塊を吐いている姿を
娘や子どもたちには見せない
それが夫のプライド
顔もそっくりな
プライドの高い親子なのだ
父娘は
ずっとこの先も
仲良しでいられるはず
だっのに
70キロある夫を
ベッドごと運ぶ
沢山ついてる点滴ポンプが
絡まったり
荷物をまるごと
一気に運んだり
夫の弟一家が
滞在の時で本当に助かった
特に甥っ子は
介護士なので
身体の動かし方が
テキパキ手慣れていた
夫は
移動と吐き疲れの疲労で
顔はゲッソリしていたが
体型は本当に健康な
成人男性
むしろややぽっちゃりくらい
浮腫んでパンパンの
夫の足を持ち上げるのも
素人の私には
変な力が入る
腰に来そう
うっかり腰をやらないように
気をつけねば
弟とちょうど一年ぶりに
再会した夫
二人は声を出さず
ずっと泣いていた
私よりずっと
長い付き合いなんだもんね
2時間ほど
付き添いを代わってもらい
ランチや
明日こちらに来る
両親のための買い物をする
夏休みなどに帰省したら
2人で今もあちこち
お出かけする仲良し兄弟
その片割れが
血を吐いているのを見た
弟もショックだろう
少しずつ
最初は黒かった血が
昨日辺りから鮮血になり
今日は血の塊まで吐いた
吐いている間は
とにかくキツそうで
夕方
少し強めの鎮静をしてもらう
水分補給の点滴を
そろそろ外すことを
主治医は
検討していると聞いた
明日おそらく結論がでる
外すということは
このまま看取りということ
治る見込みはないのに
苦しそうな夫を見ていると
点滴をはずすのが
緩和ケア観点から見ても
正解なのかもしれない
でもそんなにすぐに
割り切れるものではない
時間はまだある
一晩考えよう
今日の夕方
夕日がさすなか
薬でウトウトベッドに
横たわる夫
夫の冷たい手を握りながら
共に生きた過去の思い出が
走馬灯のように
ふと蘇り
ポタポタ滝のように
泣いていた
すると
突然私の右手が
ギュッと握られた
驚いて夫をみると
フンワリ笑っていた
私をなだめるように
ギュッと力を込める
私はまた子供みたいに
しゃくり上げる
「ずっとずっと
一緒だからね
最後までそばにいるから」
わたしがそういうと
また夫は微笑んで
頷いて
眠りに落ちた
キュンとして
また涙涙
なんだか
ドラマのワンシーンのようだ
なんてちょっと
図々しいことを
思ってた
そうか
こういう大切な時間を
私にくれるために
夫は余命宣告をふっ飛ばして
抗がん剤をして
ここまで生きてくれたのだ
私達の出会いや結婚、
そして来年20年となる生活は
笑いや喜び、優しさや
愛おしさにあふれていた
極限の状態である今も
私達の絆は強い
夫婦の絆
親子の力
親族の結束…
だからこそ
貴方をこの世界に
とどめておきたいです
貴方を失いたくない人が
あまりに多いよ
私はもっともっと
触れていたいし
触れられたいよ
どうかいかないで
私はきっとひとり親を
一通りきちんとはやれる
娘もしっかり現実的だし
ちゃんと自立できるよ
娘と手を取り合いながら
周りにも助けてと、
どんどん声を出しながら
行きていく
そんな自信はある
でも
そういうことじゃないんだ
出来るできないではなく
貴方と2人で揃ってこそ
私達は親になれるのに
今から辛いけど
娘にも
パパとの残された時間のこと
伝えたいこと、パパにちゃんと伝えておかないと
きっと後悔するよ、と話そうと思う