• 23 Mar
    • 16年前のプロジェクトを共にした俊英〜逞しい海外の作曲家たち

      先々週から昨日にかけて続けて紹介した [新世紀への讃歌] シリーズでしたが、皆様いかがでしたか。実際にCDをお聴きになりながら、もう一度記事を読み返していただけると、更に更に嬉しいです。♪♪♪国際連作共作「新世紀への讃歌」♪♪♪全曲:東京フィルハーモニー交響楽団委嘱作品初演:2001年10月19日/東京オペラシティコンサートホール    東京フィルハーモニー交響楽団特別演奏会      アジア環太平洋作曲家シリーズvol.4プランニング・アドヴァイザー:松尾祐孝演奏:指揮=渡邊一正独唱:ソプラノ=リー・ビュンリウル バリトン=河野克典 合唱=東京少年少女合唱隊CD「共作連作<新世紀への讃歌>全曲世界初演」   企画:東京フィルハーモニー交響楽団   プランニング・アドヴァイザー:松尾祐孝   Live Notes / WWCC-7414 それにしても、アジア環太平洋文化圏出身のこのシリーズの作曲家達の多様性と頼もしさは、実に壮観です。第2曲の作曲家=陳圭英氏は、韓国で学んだ後にドイツで研鑽を積み、帰国後は、大邱の嶺南大学やソウル大学を拠点に、韓国音楽界の重鎮として活躍しています。第3曲の作曲家=于京君氏は、北京中央音楽院で学んだ後に、日本やアメリカで研鑽を積んだ後に、最終的にオーストラリアに拠点を定め、旺盛な活動を展開しています。第4曲の作曲家=Diego LUZIRIAGA氏は、12人兄弟の11番目に生まれ、エクアドルの首都キトで学んだ後に、パリやニューヨークで研鑽を積み、一時期はブラジルやロンドンを拠点とした後、現在はフィラデルフィアに住んで活躍しています。現代音楽のみならずフォルクローレに通じる歌曲なども手掛けていて、近年ではオペラの新作が注目されています。第5曲の作曲家=周龍氏は、文化大革命の閉塞状況を経験した後に、北京中央音楽院で学び、その後欧米で研鑽を積み、現在はニューヨークやカンザスシティを拠点に活発な活躍を展開しています。第6曲の作曲家=Lance HULME氏は、ミネソタ大楽、イーストマン音楽院、イェール大学で学んだ後にウィーンでも研鑽を積み、ルトスワフスキ国際作曲コンクール第1位をはじめ数多くの受賞を重ねています。現在はドイツのカールスルーエを拠点に活躍しています。第7曲の作曲家=Chinary UNG氏に至っては、創立間も無いカンボジア音楽院で学んだものの、その環境は甚だ貧相なもので、ピアノとクラリネット位しか設備や備品が無く、洪水に襲われた時にはそのピアノが水にプカプカ浮いていたというような経験にも遭遇した後、ポルポト政権の圧政下から留学でアメリカの逃れ、以後、アメリカを拠点にヒューマンな作品を書き続け、音楽のノーベル賞と言われるグローメイヤー賞の受賞で、国際的な知名度を高めました。第8曲の作曲家=Ignacio BACA=LOBERA氏は、祖国で学んだ後にカリフォルニア大学サンディエゴ校で研鑽を積み、更にパリやドイツでも研鑽を積んでいます。世界各地の現代音楽祭等で作品が紹介され、現在は祖国の大学を拠点に、活発な活動を展開しています。母国に居ながらにして、大抵の文献が母国語訳で入手でき、日々の生活にも事欠かずに豊かで安全な暮らしができる、そんな恵まれた日本人からは想像もできないような境遇や難局を乗り越えて、彼らは逞しく生き、自己研鑽を継続して、今日に繋いできたのです。つまり自分を信じるて多大な努力を継続する力=才能があったということです。何度も言うようですが、才能は皆さんの心の中に在るのです!今日の写真は、パリのサンクレール寺院です。白亜の佇まいと青い空のコントラストが美しかったです。2010年秋、リスボンの現代音楽祭からの帰路に花の都=パリにも立ち寄りました。パリには、自分の才能を信じて研鑽を積む者たちが、世界中から集まっています。

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  • 22 Mar
    • <新世紀への讃歌>第8曲:エピローグ〜希望(イグナチオ・バカ=ロベラ作曲)

      [新世紀への讃歌] の各曲とその作曲家の紹介も、いよいよ終曲です。第8曲:”エピローグ~希望”イグナチオ・バカ=ロベラ(メキシコ)/Ignacio BACA=LOBERA (Mexico)演奏編成:オーケストラ、ソプラノ独唱、     バリトン独唱、児童合唱序章の後、四大元素(土・水・空気・火)、宇宙、命、を経て、いよいよ最後の第8曲は"希望"です。メキシコ出身の俊英、イグナチオ・バカ=ロベラ氏に、この連作共作のフィナーレを託しました。氏は、カリフォルニア大学サンディエゴ校で湯浅譲二氏の下で研鑽を積んだこともあり、また「入野賞」を受賞して、その受賞作が新日本フィルハーモニー交響楽団で演奏されたこともあり、日本を非常に良く知る人物です。この曲では、メキシコの先住民族の言葉の一つである「オトミ語」の最小限の単語(男、女、子供、火、水、太陽、空気、音楽、人間、月)と、自身の二人の息子の名前、Inigo(イニゴ)とJulio(フリオ)が、児童合唱で語られます。音楽そのものは不確定記譜法を駆使したトーンクラスター的な音響を主体として、”混迷を極める現代社会の中での仄かな希望”を暗示するかのようなフィナーレになっています。このシリーズの記事の最後に、この [新世紀への讃歌] 初演の演奏会のプログラムノートに私が書いた文章の一部を記しておきましょう。・・・ 海外作曲家のスコアもほぼ出揃い、私自身も担当楽章の作曲を終えて、この原稿を書こうとしていた矢先、世界を揺るがす大惨事「アメリカ合衆国同時多発テロ事件」の報が飛び込んだ。新世紀開幕の年も、人類の歴史は血に染められてしまった。やはり、まだまだ人類は未熟なのか……。この<新世紀への讃歌>は、純粋に音楽作品として楽しんでいただくことは勿論ですが、この作品の世界への発信が、人類と地球の将来について個々の人間が改めて考える契機にもなることができれば、プランナーとしてこの上ない歓びと考えています。・・・CD「共作連作<新世紀への讃歌>全曲世界初演」   企画:東京フィルハーモニー交響楽団   プランニング・アドヴァイザー:松尾祐孝   指揮:渡邊一正    管弦楽:東京フィルハーモニー交響楽団   ソプラノ独唱:リー・ビュンリウル    バリトン独唱:河野克典   児童合唱:東京少年少女合唱隊   Live Notes / WWCC-7414 今日の写真は、勿論、地球です!私たちの棲む、かけがいのない惑星ですね!

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  • 21 Mar
    • <新世紀への讃歌>第7曲:命の未来〜人へ、まだ見ぬ命たちへ(チナリー・ウン作曲)

      [新世紀への讃歌] の各曲とその作曲家の紹介を続けます。第7曲:”命の未来~人へ、まだ見ぬ命たちへ”チナリー・ウン(カンボジア/アメリカ)/Chinary UNG (Cambodia / USA)演奏編成:オーケストラ、ソプラノ独唱、バリトン独唱序章の後、四大元素、次に”宇宙”、そして”いのち”が第7曲です。ポルポト政権下のカンボジアの圧制下から留学で海外に渡り、その後アメリカを拠点に活躍している作曲家=チナリー・ウン氏に、この楽章の作曲を託しました。大量虐殺が行われた祖国を想いながら、真摯な創作活動を展開しているウン氏にこそ、このテーマが相応しいと考えたのです。主催者側のコーディネイターとして、当初はオーケストラとバリトン独唱という演奏編成で委嘱したのですが、本人の強い希望を汲んで、ソプラノ独唱も加えられました。ヒューマンな香りがアジア的な肌合いで、どこか懐かしいような楽想に載せて、手持ちの金属楽器(風鈴のような打楽器)を演奏しながら、二人の歌手が命の歌で未来への希望を歌い上げます。あまり長い曲ではありませんが、フィナーレのような風格さえ漂う、ウン氏ならではの楽章が誕生しました。さて、今日の写真は、カンボジアの夕景です。この楽章を聴くと・・・何か夕焼けのような懐かしさが感じられます。

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  • 20 Mar
    • <新世紀への讃歌>第6曲:宇宙の未来〜星たちへ(ランス・ヒューム作曲)

      [新世紀への讃歌] の各曲とその作曲家の紹介を続けます。第6曲:”宇宙の未来~星たちへ”ランス・ヒューム(アメリカ)/Lance HULME (USA)演奏編成:オーケストラ、ソプラノ独唱四大元素の後には、”宇宙”と”いのち”を第6曲・第7曲のテーマとして設定しました。大野和士氏と随分考えて悩んだ後に決定したものでした。宇宙と言えばNASAの国ということで、アメリカ出身でドイツ/カールスルーエを拠点に活躍する気鋭の作曲家=ランス・ヒューム氏に、このテーマの作曲を託しました。人工の明かりが全く無い場所で、満天の星空を見上げながら、素晴らしく多くの星に囲まれながら、やがて銀河の中に身体が浮遊していくような感覚に囚われる・・・というようなイメージが喚起される作品が誕生しました。ミニマル書法を活用した精緻な筆致に載せて、ソプラノのヴォカリーズが天空を舞っていきます。昨年、長い旅路の末に宇宙空間から奇跡的な帰還を遂げた”はやぶさ”が、大きな話題になりました。私が子供の時分は、アポロ宇宙船の人類初の月面着陸の宇宙中継映像に心を踊らせたものでした。私たちの身体を構成している物質の基である原子は、宇宙の星たちと全く同じものです。つまり私たちも宇宙そのものなのです。宇宙の不思議、銀河の不思議、太陽の存在の奇跡、地球の存在の奇跡、生物と誕生と進化の奇跡、人類が誕生した奇跡、その人類の特権の重要な一つが、”音楽を楽しむこと”です。銀河の写真を見ながら、広大な宇宙に想いを馳せてみましょう!(ハッブル望遠鏡の写真です)

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  • 19 Mar
    • <新世紀への讃歌>第5曲:火の未来〜エネルギーへ(周龍 作曲)

      [新世紀への讃歌] の各曲とその作曲家の紹介を続けます。第5曲:”火の未来~エネルギーへ”周龍/ツォー・ロン(中国/アメリカ)/Zhou Long (China/USA)演奏編成:オーケストラ、児童合唱四大元素に基づくタイトルによる4曲の最後、"火の未来"がこの第5曲です。アメリカ・ニューヨークを拠点に国際的な活躍していた(現在はミズーリ州カンザスシティー音楽院教授でもある)中国出身の作曲家=周龍(ツォー・ロン)氏に、このテーマの作曲を託しました。エネルギーの未来を、子供の持つパワーと将来にオーバーラップさせて、中国の西安方面に伝わる古謡の旋律をフィーチャーしつつ、活気に満ちた溌剌とした音楽が一気呵成に炸裂します。全8曲の中盤を引き締めるスケルツォのような、パンチの利いたキラリと光る楽章が誕生しました。周龍氏の周辺の世代、つまり1950年代生まれの中国出身の作曲家達は、欧米で国際的な活躍を展開している者が少なくありません。このシリーズの第3曲の作曲家=于京君(Julian Yu)氏は、その世代の最若手に位置付けられるでしょう。この世代の作曲家・音楽家は、青春時代を”文化大革命”に翻弄された後に、再開された北京中央音楽院で学び、後に海外でも研鑽を積んだ者が多い、ハングリー精神の固まりのような非常に逞しい世代なのです。中国の作曲家との交友記・交流記も、このブログで、追って紹介していきましょう。さて、写真は、周龍氏の拠点=ニューヨークでのワンショットにしました。冬景色のリンカーン・センターです。

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  • 18 Mar
    • <新世紀への讃歌>第3曲:水の未来〜海へ、川へ(ジュリアン・ユウ作曲)

      [新世紀への讃歌] の各曲とその作曲家の紹介を続けます。第3曲:”水の未来~海へ、川へ”于京君/ジュリアン・ユー(中国/オーストラリア)/Julian Yu (china/Australia)演奏編成:オーケストラ、児童合唱四大元素に基づくタイトルによる4曲の中の2曲目、"水の未来"がこの第3曲です。グレートバリアリーフを擁する大自然の国=オーストラリアを拠点に、旺盛な活動を展開している中国出身の作曲家=于京君(ジュリアン・ユー)氏に、このテーマの作曲を託しました。ポツポツと降る雨粒が小さな流れとなり、やがて川から大河となって、遂には大海原に広がるという、水の旅路を現代作曲語法で表出した作品が、見事に誕生しました。エアーズロックの在る砂漠に落ちた雨粒が、長い旅路の末にグレートバリアリーフの広がる南太平洋に流れ込むようなイメージが、音楽によって繰り広げられます。ユー氏は、東京音楽大学に留学して池辺晋一郎氏に師事したこともある親日家です。ISCM(国際現代音楽協会)やACL(アジア作曲家連盟)の音楽祭などの機会に、世界各地で時々顔を合わせています。そう言えばここ数年会っていないのですが、元気にしているかな・・・今日の写真は、グレートバリアリーフです。こんなに奇麗な海で、シュノーケリングや素潜りを、のんびりしてみたいな~!

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  • 17 Mar
    • <新世紀への讃歌>第2曲:土の未来〜母なる大地へ〜(陳圭英 作曲)

      [新世紀への讃歌] の各曲とその作曲家の紹介を続けます。第2曲:”土の未来~母なる大地へ”陳圭英(韓国)/Kyu-yung CHIN (Korea)演奏編成:オーケストラ、ソプラノ独唱ホスト役としての序章による私の問題提起(昨日の記事参照)に続いて、四大元素に基づくタイトルによる4曲を2~5曲目に設定しました。その最初が、この第2曲”土の未来~母なる大地へ”になります。アジア大陸に地続きの国で日本の直ぐお隣の国=韓国(大韓民国)の作曲家=陳圭英(チン・キュユン)氏に、その作曲を託しました。韓国の民族魂を感じさせるオーケストラの脈動に乗って、氏の夫人であり韓国を代表するソプラノ歌手である李丙烈(リー・ビュンリウル)女史のソプラノ独唱が、母なる大地の感興をヴォカリーズで歌い上げます。陳圭英氏は、ISCM(国際現代音楽協会)韓国支部の会長や嶺南大学教授・音楽学部長等を歴任されている、韓国の現代作曲界の重鎮の一人です。お互いに幾度となく日韓両国を行き来しながら、懇意にしている間柄です。故ユン・イサン氏の生地でもある韓国南部のトンヨンの出身で、そこで毎春に開催されている国際現代音楽祭の企画運営にも近年は深く関わっておられるようです。来年=2016年の開催は<ISCM音楽祭>を兼ねた大規模なものになるそうです。初めて面識を得たのは、1996年の<大邱国際現代音楽祭>に招聘された時でした。日本の農村の原風景を思わせてくれる韓国の気候・風土にすっかり魅了された私は、以後、毎年のように訪韓して様々な交流を展開することになったのです。音楽や現代芸術を鎹にした国際交流は、相互の精神が触発し合うようで、とても素敵です。写真は、2009年9月に韓国・済州島で開催された文化オリンピック=<デルフィック2009>の開会式での民俗衣装が鮮やかで印象的なショットです。このところ、韓国と日本の関係がギクシャクしています。そのせいかどうかわかりませんが、懇意にしていた韓国の現代作曲界との交流も、私の周辺ではやや停滞気味です。この残念な状況を、早く打開したいものです。

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  • 16 Mar
    • <新世紀への讃歌>第1曲=序章:人類の未熟さに対して(松尾祐孝 作曲)

      今日から[新世紀への讃歌] の各曲とその作曲家の紹介をアップしていきましょう。第1曲="序章:人類の未熟さに対して"松尾祐孝(日本)/Masataka MATSUO (Japan)演奏編成:オーケストラ、児童合唱演奏時間:約9.5分この国際共作連作は、”21世紀の開幕を祝う”単なる祝賀作品としてではなく、20世紀の100年間での人類の凄まじいばかりの発展とともにその表裏一体とも言える愚行の数々をも顧みながら、新しい世紀の開幕にあたって未来への希望を、音楽文化メッセージとして発信しようというものでした。東京フィル<アジア環太平洋作曲家シリーズ>のプランニング・アドヴァイザーだった私=松尾が、ホスト役として序章を担当しました。近代兵器による戦争の悲惨さや地球環境破壊への警鐘を音楽の構成と音響そのもので表現しつつ、一方では独立した管弦楽曲= [フォノスフェール第3番] でもあるという作品を、2001年夏に一気に書き上げたのでした。尚、この楽章の詳しい情報は、テーマ=「PHONOSPHEREシリーズ」の「フォノスフェール第3番」の記事をご参照ください。そして、この序章において20世紀を顧みた後、後続の7名の作曲家による楽章によって、主催者側から提示した各曲のタイトルに沿って、音楽作品による未来への展望が紡がれる、という楽章構成・ストーリーになったのです。この [新世紀への讃歌] の世界初演(2001年10月19日)が間近に迫った同年9月11日、誠に残念な、遺憾な、大惨事が起きてしましました。アメリカ同時多発テロの報が、リアルタイム映像と共に、夕食時の日本の茶の間に飛び込んできたのでした。21世紀開幕の年にまたもやこのような・・・人類はまだまだ未熟なままなのか・・・私は愕然となったのでした・・・犠牲者への哀悼の意を心に秘めながら、私はこの作品と讃歌全体の世界初演に臨んだのでした。今日の写真は「月から見た地球」です。人類発の月面着陸を達成したアポロ11号から撮影した「地球の出」(日の出ではなくて)というタイトルで有名になったショットです。宇宙空間の中ではこんなにも小さく儚い青い惑星、地球の存在の奇跡に、我々はもっと感謝しなくてはなりませんね。

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  • 15 Mar
    • 国際共作連作 [新世紀への讃歌] 誕生秘話

      先週に夕方の記事シリーズとして掲載した<東京フィル・アジア環太平洋作曲家シリーズ>の話題の続編を、今夕から綴っていきましょう。人類は21世紀に入ってもまだまだ未熟な存在であると、様々な事象を前にして思います。例えば、私が一昨年に訪ねて現代音楽祭のファイナルコンサートでタクトをとったウクライナのドネツクという町は、現在はウクライナとロシアの紛争の最中に在ります。一日も早い、事態の平和的な収拾を願ってやみません。そこで、私が1998年から2001年に大野和士氏と共に企画を立案した東京フィルの国際プロジェクト、<アジア環太平洋作曲家シリーズ>の最終公演として21世紀の開幕の年に実現した国際共作連作 [新世紀への讃歌] について、様々なエピソードを披露していきましょう。♪♪♪国際連作共作「新世紀への讃歌」♪♪♪全曲:東京フィルハーモニー交響楽団委嘱作品初演:2001年10月19日/東京オペラシティコンサートホール    東京フィルハーモニー交響楽団特別演奏会      アジア環太平洋作曲家シリーズvol.4プランニング・アドヴァイザー:松尾祐孝演奏:指揮=渡邊一正独唱:ソプラノ=リー・ビュンリウル バリトン=河野克典 合唱=東京少年少女合唱隊この企画は、この企画立案当時の東京フィル常任指揮者大野和士氏が、サントリー音楽財団主催の現代音楽祭<サマーフェステフィバル>において、[和解のレクイエム] の日本初演を指揮した公演終演後のサントリーホールの楽屋での会話に端を発しています。[和解のレクイエム] は、第2次世界大戦終結50年を記念して、シュトゥットガルトを拠点とした<ヨーロッパ音楽祭>が企画した国際連作共作でした。シュニトケ、クルターク、ベリオ、リーム、湯浅譲二、等の国際現代音楽シーンを代表する錚々たる顔ぶれの作曲家が、1曲ずつ書いて全体で一つのレクイエムを構成するという、非常に壮大な企画・楽曲でした。各曲の彫琢そのものも、演奏の充実も、共に聴き堪え充分で素晴らしい公演となりました。しかし「キリスト教典の"レクイエム"をテキストに使っている限り、結局はヨーロッパ人の視点からのみの企画になっていたのが何とも惜しいね!」という事を、終演後の楽屋で大野氏と語り合った記憶があります。そういった共通認識の上で「今度がアジア・東京から、もっと自由な発想の企画を発信したいものだね!」と意気投合したのでした。その後、東京フィルが1998年度から2001年度にかけて、<アジア環太平洋作曲家シリーズ>を企画することになり、私がプランニング・アドヴァイザーを担当することになりました。そして、大野氏と協議を重ねながら、各年度1回ずつの計4回の公演の作曲家の人選や作品の選曲を進めていったのです。その際に、最終回は丁度21世紀の開幕の年=2001年になるので、[新世紀への讃歌] と題して[和解のレクイエム] では成し得なかった、キリスト教典に囚われない自由な発想の国際連作共作を、このシリーズの最終回=集大成として実現しようという事になっていったのでした。そして遂に、世界平和と地球環境保全への壮大なメッセージを包括した、アジア環太平洋出身の作曲家8名による [新世紀への讃歌] が、誕生したのです。第1曲="序章:人類の未熟さに対して"松尾祐孝(日本)/Masataka MATSUO (Japan)演奏編成:オーケストラ、児童合唱第2曲:”土の未来~母なる大地へ”陳圭英(韓国)/Kyu-yung CHIN (Korea)演奏編成:オーケストラ、ソプラノ独唱第3曲:”水の未来~海へ、川へ”于京君/ジュリアン・ユー(中国/オーストラリア)/Julian Yu (china/Australia)演奏編成:オーケストラ、児童合唱第4曲:”空気の未来~森へ、大気へ”ディエゴ・ルズリアガ(エクアドル)/Diego Luzuriaga (Ecuador)演奏編成:オーケストラ、バリトン独唱第5曲:”火の未来~エネルギーへ”周龍/ツォー・ロン(中国/アメリカ)/Zhou Long (China/USA)演奏編成:オーケストラ、児童合唱第6曲:”宇宙の未来~星たちへ”ランス・ヒューム(アメリカ)/Lance HULME (USA)演奏編成:オーケストラ、ソプラノ独唱第7曲:”命の未来~人へ、まだ見ぬ命たちへ”チナリー・ウン(カンボジア/アメリカ)/Chinary UNG (Cambodia / USA)演奏編成:オーケストラ、ソプラノ独唱、バリトン独唱第8曲:”エピローグ~希望”イグナチオ・バカ=ロベラ(メキシコ)/Ignacio BACA=LOBERA (Mexico)演奏編成:オーケストラ、ソプラノ独唱、     バリトン独唱、児童合唱明日からの記事で各曲の概説をアップしていきます。乞うご期待!CD「共作連作<新世紀への讃歌>全曲世界初演」   企画:東京フィルハーモニー交響楽団   プランニング・アドヴァイザー:松尾祐孝   Live Notes / WWCC-7414 

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  • 14 Mar
    • 「そして世界へ - 新世紀への讃歌」〜アジア環太平洋作曲家シリーズvol.4(最終回)

      シリーズ最終回の第4回は、2001年10月19日に、東京オペラシティ/コンサートホールで開催されました。いよいよ待望の国際共作連作 [新世紀への讃歌] の世界初演が実現するということで、その年の私は正に興奮状態でした。しかも、別件の大プロジェクト=<ISCM世界音楽の日々2001横浜大会>(同年10月3~10日/横浜みなとみらいホール)の実行委員長も務めていた時期でしたので、それはもうとんでもない忙しさでした。漸く8月に本プロジェクトのホスト役としての序章の作曲を終えて、この初演演奏会のプログラム・ノートの執筆を進めていた矢先、あの "9.11=アメリカ同時多発テロ" が起きてしましました。各曲の内容については、お正月の特集記事として紹介していきましょう。###東京フィルハーモニー交響楽団        <アジア環太平洋作曲家シリーズ>###    第4回「そして世界へー新世紀への讃歌」  2001年10月19日/東京オペラシティ コンサートホール 指揮:渡邊一正 管弦楽:東京フィルハーモニー交響楽団 ソプラノ:李 丙烈 / リー・ビュンリウル(韓国)  バリトン:河野克典(日本) 児童合唱:東京少年少女合唱隊プログラム 共作連作 [新世紀への讃歌] 全曲委嘱作品世界初演序章~人類の未熟さに対して 松尾祐孝 / Masataka Matsuo オーケストラ+児童合唱 (日本)土の未来~母なる大地へ   陳圭英 / CHIN Kyu-yung オーケストラ+ソプラノ       (韓国)水の未来~川へ、海へ    于 京君 / Julian Yu オーケストラ+児童合唱    (中国/オーストラリア)                    空気の未来~森へ、大気へ  ディエゴ・ルズリアガ / オーケストラ+バリトン   Diego Luzuriaga (エクアドル)             火の未来~エネルギーへ   周 龍 / Zhou Long  オーケストラ+児童合唱          (中国/USA)宇宙の未来~星たちへ    ランス・ヒューム / Lance Hulm オーケストラ+ソプラノ             (USA)命の未来 ~人へ、まだ見ぬ命たちへ チナリー・ウン / Chinary Ung オーケストラ            (カンボジア/USA) +ソプラノ+バリトン     エピローグ~希望      イグナチオ・バカ=ロベラ / オーケストラ+    Ignacio Baca=Lobera(メキシコ) ソプラノ+バリトン +児童合唱 ############################このアジア環太平洋作曲家シリーズの第1回から第3回に作品を提供していただいた作曲家を主体として、各曲の委嘱作曲家の人選と全8曲のテーマを、大野和士氏(当時の東京フィル常任指揮者)と私とで策定していきました。全8曲の演奏編成の調整と委嘱の打診は、全て私から各作曲家にコンタクトして、協議・決定していきました。皆さん、この共作連作の意義を充分に理解していただき、素晴らしい楽章を作曲してくれました。しかも、各曲が、独立した管弦楽作品としても自立できる作品になっていることも、私にとっても、作品自体にとっても、大きな歓びと言えるでしょう。 結局、このシリーズ実現の陰の立役者の大野和士氏には、この頃には益々国際的に多忙となられたためにスケジュールの調整ができず、この企画の指揮台に立っていただくことができなかったのですが、若手俊英の沼尻竜典氏(第1・2回)と渡邊一正氏(第3・4回)のタクトによって、鮮やかに実現したのでした。その全てのリハーサルと本番に立ち会うことができた経験は、私にとっても大きな財産になっています。この初演の演奏は、CDとしてリリースされています。人類が機械文明と共に飛躍的な進歩を遂げつつ・・・一方で度重なる大規模な戦争や動乱によって大量の犠牲者を生み出してしまい・・・また、化石燃料の使用な廃棄物によって地球環境を刻々と悪化に追い込んで行った・・・ そのような20世紀を振り返りつつ(ホスト役としての序章)、未来への希望を各作曲家が作品で紡いで行くという、新世紀開幕の年の音楽文化モニュメントを、一人でも多くの方にお聴きいただければ幸いです。 東京フィル 共作連作 [新世紀への讃歌] 全曲委嘱初演Live Notes / WWCC-7414

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  • 13 Mar
    • 2000年度の好企画=「北米とオセアニアを経て」〜アジア環太平洋作曲家シリーズvol.3

      シリーズ第3回は、2001年2月9日に、東京オペラシティ/コンサートホールで開催されました。この回は、海外作曲家3名の来日は残念ながら実現しませんでしたが、日本現代音楽協会との協働プロジェクトとして、日本の若手作曲家2名の作品もプログラミングされ、多くの邦人作曲家も会場に終結する、新しい展開にもなりました。###東京フィルハーモニー交響楽団        <アジア環太平洋作曲家シリーズ>###     第3回「ラテンアメリカへのまなざし」 2001年2月9日/東京オペラシティ コンサートホール指揮:渡邊一正 管弦楽:東京フィルハーモニー交響楽団ソプラノ:塚田京子 尺八:三橋貴風(日本)プログラム于 京君 / Julian Yu(中国/オーストラリア)               :"オアシス"(日本初演)二宮玲子(日本):ソプラノと管弦楽のための交響曲             <ルバイヤット>          (日本現代音楽協会出品作品・世界初演)久行敏彦(日本): "いづかたへ…"          (日本現代音楽協会出品作品・世界初演)葉 小鋼 / YE Xaogang(中国):"釈迦の沈黙" ~尺八協奏曲      (異文化交歓協奏曲シリーズ第3弾・日本初演)ランス・ヒューム / Lance Hulm(USA)             : "Stearing Fire" (日本初演)ジュリアン・ユウ氏は、東京音楽大学で研鑽を積んだ経験も持つ中国出身の俊英です。再三このブログに登場してくる陳其鋼氏や譚盾氏と同じ世代です。現在はオーストラリア国籍を持ち、旺盛な活動を展開しています。この "オアシス" では 、中国の西域を旅した経験が反映されている音楽を聴くことができます。二宮玲子さんは、岩波映画の音楽も手掛けてきた社会派の作曲家です。また、インドの民族音楽にも造詣が深い方です。この作品にも、そういったアジアの魂が込められています。久行敏彦氏の作品は、トーン・クラスターとハーモニーを共存させた独特の透明感を湛えた作品です。この2作品は、日本現代音楽協会の「現音活動全国展開シリーズvol.3」として、東京フィルとの共同制作として初演されました。葉小鋼氏の尺八協奏曲は、既成の作品でしたが、このシリーズの "異文化交歓協奏曲シリーズ" 誕生のヒントにもなった作品でした。香港で委嘱初演され、台湾のコンクールで第1位を受賞していましたが、この時の演奏は日本初演でありまた改訂初演でもありました。氏とは1988年の香港の現代音楽祭で面識を得ていましたが、当夜も含めて、その後なかなかお会いできずに居ることが残念です。現在は、北京中央音楽院の作曲科主任等の要職に就いて居られます。ランス・ヒューム氏は、ドイツ・カールスルーエを拠点に国際的に活躍しているアメリカ出身の俊英です。企画策定当時、カールスルーエに在るバーデン州立歌劇場音楽総監督でもあった大野和士氏の紹介による人選でした。この作品 "Stearing Fire" は、1998年ルトスワフスキ国際作曲コンクール第1位受賞作品というだけあって、10分足らずの演奏時間ながら、強烈な印象をもたらしてフィナーレを飾ってくれました。このようにして、アジアからの視点を核としながら、ラテンアメリカ圏や北米やオセアニアの作曲家の作品にも光を当てながら、3回の演奏会で13作品を紹介してきました。そしていよいよ、共作連作 [新世紀への讃歌] 全曲委嘱世界初演というファイナル・クアイマックスに向かったのでした。今日の写真は、太平洋の南国の樹木越しの空のショットです。

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  • 12 Mar
    • 1999年度の好企画〜「ラテンアメリカへのまなざし」〜アジア環太平洋シリーズvol.2

      第2回は、2000年3月3日に東京オペラシティのコンサートホールでの開催となりました。題して「ラテンアメリカへのまなざし」です。この回には、海外作曲家4名中の3名が来日してくださり、国際文化交流プロジェクトに相応しい雰囲気になりました。###東京フィルハーモニー交響楽団       <アジア環太平洋作曲家シリーズ>###    第2回「ラテンアメリカへのまなざし」 2000年3月30日/東京オペラシティ コンサートホール指揮:沼尻竜典 管弦楽:東京フィルハーモニー交響楽団篠笛:西川浩平(日本)プログラム李 圭鳳 / Yi Gyu-Bong(韓国)     :室内アンサンブルのための"祭禮"(日本初演)ディエゴ・ルズリアガ/Diego Luzuriaga(エクアドル)     :<LITURGIA・礼拝>~篠笛と管弦楽の為に~      (異文化交歓協奏曲シリーズ第2弾・世界初演)イグナチオ・バカ=ロベラ(メキシコ):"未知の領域" 陳 怡 / CHEN Yi(中国): "交響曲第2番" (日本初演)李圭鳳氏は長くドイツで研鑽を積んだ韓国出身の若手で、当シリーズを立案した当時の東京フィル常任指揮者=大野和士氏からの紹介でした。当公演に相応しい大編成の作品が無かったので、室内オーケストラ編成の作品になりましたが、存在感たっぷりの作品でした。エクアドル出身のDiego Luzuriaga氏と日本の間には、1992年のISCMワルシャワ大会での私との出会いの後、深い縁が育まれていきました。そして、氏の故郷=アンデスの民に伝わる伝統楽器にも近似した篠笛に大変愛着を感じたディエゴに、私は協奏曲を委嘱したのです。期待に違わぬ、民族性と現代性と娯楽性が見事に融合した、2楽章構成の素敵な協奏曲が誕生しました。祖国に伝わるアンデスの笛に共通する音楽性を日本の篠笛に見出した作曲家による異文化交歓協奏曲が誕生したのでした。後年、私の指揮で再演もされていますし、更に祖国エクアドルでも演奏されています。独奏の西川浩平氏のCDには、この初演の演奏が収録されています。イグナチオ・バカ=ロベラ氏は私とほぼ同い年の俊英です。1993年<ISCM世界音楽の日々'93メキシコ大会>に日本史部代表として現地に赴いた時に、面識を得ましたn。この作品は、氏の出世作になった管弦楽曲で、日本の国際的作曲賞に一つの "入野賞" を受賞したもので、新日本フィルハーモニー交響楽団で初演されています。陳怡さんは、アメリカのカンザス音楽院を拠点に活躍する中国出身の女性作曲家です。許可さん(先日来度々登場の二胡奏者)の紹介によって、連絡をとる事ができました。代表作と目される量感たっぷりの大作 "交響曲第2番" は、正にコンサートのトリを執るのに相応しい風格ある音楽でした。写真は、上記のルズリアガ作品が収録されている西川浩平さんのアルバムCDです。Flutist from the East vol.3 西川浩平 / Live Notes / WWCC-7415

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  • 11 Mar
    • 1998年度の好企画=「アジアから」〜東京フィル アジア環太平洋作曲家シリーズvol.1

      アジア環太平洋作曲家シリーズの第1回は、1998年11月10日の開催でした。その日は、11月の一の酉でしたので、”酉の市" が立つ日でもありました。私は、海外からのゲスト、陳其鋼(チェン・チガン)氏もお連れして、浅草・鷲神社の酉の市でこのシリーズの成功を祈願してから、会場の文化村オーチャードホール(東京・渋谷)に楽屋入りしました。そして、縁起物の大熊手を開演前の舞台中央に鎮座させて、開場そして開演を迎えました。###東京フィルハーモニー交響楽団        <アジア環太平洋作曲家シリーズ>###        第1回「アジアから」    1998年11月10日/文化村オーチャードホール指揮:沼尻竜典 管弦楽:東京フィルハーモニー交響楽団胡琴:許可(Xu Ke/中国)プログラム陳 錦標 / Joshua CHAN(中国/香港):               "馥郁曦思"(日本初演)松尾祐孝(日本):胡琴協奏曲<天風愛舞和庵>     (異文化交歓協奏曲シリーズ第1弾・世界初演)チナリー・ウン / Chinary Ung(カンボジア/USA): "Inner Voices" 陳 其鋼 / Qigan CHEN(中国):              YUAN "源" (日本初演)プログラミングに際しては、各作曲家の代表作にあたる作品をノミネートすることをモットーとしたので、非常に量感のある聴き応えたっぷりの演奏会になりました。陳錦標氏の作品は、作曲家の好きな香港島の山中の朝の情景を彷彿とさせる、芳醇な音詩でした。拙作については、2013年9月24日の記事をご覧ください。世界的二胡奏者=許可氏の独奏を得て、作曲家冥利に尽きる印象的な初演となりました。チナリー・ウン氏の作品では、音楽界のノーベル賞とも言われる”グローメイアー賞”受賞作品というだけあって、氏の高潔な風貌にも似た、どこか懐かしいような東南アジア的な音像も湛えながら、連綿たる音楽が紡がれました。陳其鋼氏の作品は、中国の民族性を内包しつつ、晩年のメシアンに師事したという成果を感じさせる華麗なオーケストレーションによって、音楽のオーラが放射されるようなクライマックスとなりました。3名の海外作曲家も来日され会場にお越しになり、”東京から世界に音楽文化メッセージを発信する” 公演に相応しい充実した時間を、聴衆の皆さんと共有することができました。写真は、香港島の新開発地区=サイバーポートです。躍動する・躍進するアジアを感じさせてくれる風景です。

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  • 10 Mar
    • 異文化交歓協奏曲も含んでいた<東京フィル・アジア環太平洋作曲家シリーズ>

      このところ相次いでいる世界の不穏な事件に心を傷めている方も多いことでしょう。世界の平和を考えながら、<アジア環太平洋作曲家シリーズ>について、お話していくことにしましょう。1998年から2001年にかけて企画・開催されたシリーズで、当時の東京フィル常任指揮者=大野和士と私がタッグを組んで、アジア環太平洋圏出身の作曲家からの人選やプログラミングについて相談をしながら策定した、オーケストラを舞台として国際交流プロジェクトでした。4年度・4回にわたり環太平洋圏出身の国際的俊英による現代作品を紹介していくシリーズでしたが、前述の経緯の通り、その作曲家の人選と選曲を、私がプログラミング・アドヴァイザーとして担当しました。当時の東京フィル常任指揮者=大野和士氏とも緊密に検討しながら、人選と曲目を策定していったのです。最終回は、委嘱共作連作による [新世紀への讃歌] の新世紀開幕の年の世界初演とすることが、このシリーズの最終目標として決まっていました。そこへ至る3回のテーマも含めて、諸々の条件を勘案していき、第1回「アジアから」、第2回「ラテンアメリカへのまなざし」、第3回「北米とオセアニアを経て」、第4回「そして世界へ~新世紀への讃歌」という各回のテーマが決定しました。更に、<天風愛舞和庵>シリーズの記事でも紹介してきた胡琴協奏曲の構想をも盛り込んで、私からの提案として、第1回~第3回に、異国・異文化圏の伝統楽器を1曲ずつプログラムに組み込む"異文化交歓協奏曲シリーズ" を盛り込むことにもなったのです。明日から、シリーズ各回の内容とそれに纏るエピソードについて、ご紹介していきましょう。下の写真は、全4回のプログラム冊子の表紙です。現在のオーケストラ界で、ここまで思いきった企画はなかなか建てられない状況にあるようですが、2020年の東京オリンピックに向けて、もう一度、音楽文化の分野における有意義で創造的な国際交流プロジェクトの活性化が望まれます。

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  • 28 Oct
    • 15年前に国際共作で協働した逞しい海外の作曲家たち

      先週から昨日にかけて続けて紹介した [新世紀への讃歌] シリーズでしたが、皆様いかがでしたか。実際にCDをお聴きになりながら、もう一度記事を読み返していただけると、更に更に嬉しいです。♪♪♪国際連作共作「新世紀への讃歌」♪♪♪全曲:東京フィルハーモニー交響楽団委嘱作品初演:2001年10月19日/東京オペラシティコンサートホール    東京フィルハーモニー交響楽団特別演奏会      アジア環太平洋作曲家シリーズvol.4プランニング・アドヴァイザー:松尾祐孝演奏:指揮=渡邊一正独唱:ソプラノ=リー・ビュンリウル バリトン=河野克典 合唱=東京少年少女合唱隊CD「共作連作<新世紀への讃歌>全曲世界初演」   企画:東京フィルハーモニー交響楽団   プランニング・アドヴァイザー:松尾祐孝   Live Notes / WWCC-7414 それにしても、アジア環太平洋文化圏出身のこのシリーズの作曲家達の多様性と頼もしさは、実に壮観です。第2曲の作曲家=陳圭英氏は、韓国で学んだ後にドイツで研鑽を積み、帰国後は、大邱の嶺南大学やソウル大学を拠点に、韓国音楽界の重鎮として活躍しています。第3曲の作曲家=于京君氏は、北京中央音楽院で学んだ後に、日本やアメリカで研鑽を積んだ後に、最終的にオーストラリアに拠点を定め、旺盛な活動を展開しています。第4曲の作曲家=Diego LUZIRIAGA氏は、12人兄弟の11番目に生まれ、エクアドルの首都キトで学んだ後に、パリやニューヨークで研鑽を積み、一時期はブラジルやロンドンを拠点とした後、現在はフィラデルフィアに住んで活躍しています。現代音楽のみならずフォルクローレに通じる歌曲なども手掛けていて、近年ではオペラの新作が注目されています。第5曲の作曲家=周龍氏は、文化大革命の閉塞状況を経験した後に、北京中央音楽院で学び、その後欧米で研鑽を積み、現在はニューヨークやカンザスシティを拠点に活発な活躍を展開しています。第6曲の作曲家=Lance HULME氏は、ミネソタ大楽、イーストマン音楽院、イェール大学で学んだ後にウィーンでも研鑽を積み、ルトスワフスキ国際作曲コンクール第1位をはじめ数多くの受賞を重ねています。現在はドイツのカールスルーエを拠点に活躍しています。第7曲の作曲家=Chinary UNG氏に至っては、創立間も無いカンボジア音楽院で学んだものの、その環境は甚だ貧相なもので、ピアノとクラリネット位しか設備や備品が無く、洪水に襲われた時にはそのピアノが水にプカプカ浮いていたというような経験にも遭遇した後、ポルポト政権の圧政下から留学でアメリカの逃れ、以後、アメリカを拠点にヒューマンな作品を書き続け、音楽のノーベル賞と言われるグローメイヤー賞の受賞で、国際的な知名度を高めました。第8曲の作曲家=Ignacio BACA=LOBERA氏は、祖国で学んだ後にカリフォルニア大学サンディエゴ校で研鑽を積み、更にパリやドイツでも研鑽を積んでいます。世界各地の現代音楽祭等で作品が紹介され、現在は祖国の大学を拠点に、活発な活動を展開しています。母国に居ながらにして、大抵の文献が母国語訳で入手でき、日々の生活にも事欠かずに豊かで安全な暮らしができる、そんな恵まれた日本人からは想像もできないような境遇や難局を乗り越えて、彼らは逞しく生き、自己研鑽を継続して、今日に繋いできたのです。つまり自分を信じるて多大な努力を継続する力=才能があったということです。何度も言うようですが、才能は皆さんの心の中に在るのです!今日の写真は、パリのサンクレール寺院です。白亜の佇まいと青い空のコントラストが美しかったです。2010年秋、リスボンの現代音楽祭からの帰路に花の都=パリにも立ち寄りました。パリには、自分の才能を信じて研鑽を積む者たちが、世界中から集まっています。

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  • 27 Oct
    • <新世紀への讃歌>第8曲:エピローグ〜希望(イグナチオ・バカ=ロベラ作曲)

      15年前に初演された[新世紀への讃歌] の各曲とその作曲家の紹介も、いよいよ終曲です。第8曲:”エピローグ~希望”イグナチオ・バカ=ロベラ(メキシコ)/Ignacio BACA=LOBERA (Mexico)演奏編成:オーケストラ、ソプラノ独唱、     バリトン独唱、児童合唱序章の後、四大元素(土・水・空気・火)、宇宙、命、を経て、いよいよ最後の第8曲は"希望"です。メキシコ出身の俊英、イグナチオ・バカ=ロベラ氏に、この連作共作のフィナーレを託しました。氏は、カリフォルニア大学サンディエゴ校で湯浅譲二氏の下で研鑽を積んだこともあり、また「入野賞」を受賞して、その受賞作が新日本フィルハーモニー交響楽団で演奏されたこともあり、日本を非常に良く知る人物です。この曲では、メキシコの先住民族の言葉の一つである「オトミ語」の最小限の単語(男、女、子供、火、水、太陽、空気、音楽、人間、月)と、自身の二人の息子の名前、Inigo(イニゴ)とJulio(フリオ)が、児童合唱で語られます。音楽そのものは不確定記譜法を駆使したトーンクラスター的な音響を主体として、”混迷を極める現代社会の中での仄かな希望”を暗示するかのようなフィナーレになっています。このシリーズの記事の最後に、この [新世紀への讃歌] 初演の演奏会のプログラムノートに私が書いた文章の一部を記しておきましょう。・・・ 海外作曲家のスコアもほぼ出揃い、私自身も担当楽章の作曲を終えて、この原稿を書こうとしていた矢先、世界を揺るがす大惨事「アメリカ合衆国同時多発テロ事件」の報が飛び込んだ。新世紀開幕の年も、人類の歴史は血に染められてしまった。やはり、まだまだ人類は未熟なのか……。この<新世紀への讃歌>は、純粋に音楽作品として楽しんでいただくことは勿論ですが、この作品の世界への発信が、人類と地球の将来について個々の人間が改めて考える契機にもなることができれば、プランナーとしてこの上ない歓びと考えています。・・・CD「共作連作<新世紀への讃歌>全曲世界初演」   企画:東京フィルハーモニー交響楽団   プランニング・アドヴァイザー:松尾祐孝   指揮:渡邊一正    管弦楽:東京フィルハーモニー交響楽団   ソプラノ独唱:リー・ビュンリウル    バリトン独唱:河野克典   児童合唱:東京少年少女合唱隊   Live Notes / WWCC-7414 今日の写真は、勿論、地球です!私たちの棲む、かけがいのない惑星ですね!

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  • 26 Oct
    • <新世紀への讃歌>第7曲:命の未来〜人へ、まだ見ぬ命たちへ(チナリー・ウン作曲)

      15年前に初演された[新世紀への讃歌] の各曲とその作曲家の紹介を続けます。第7曲:”命の未来~人へ、まだ見ぬ命たちへ”チナリー・ウン(カンボジア/アメリカ)/Chinary UNG (Cambodia / USA)演奏編成:オーケストラ、ソプラノ独唱、バリトン独唱序章の後、四大元素、次に”宇宙”、そして”いのち”が第7曲です。ポルポト政権下のカンボジアの圧制下から留学で海外に渡り、その後アメリカを拠点に活躍している作曲家=チナリー・ウン氏に、この楽章の作曲を託しました。大量虐殺が行われた祖国を想いながら、真摯な創作活動を展開しているウン氏にこそ、このテーマが相応しいと考えたのです。主催者側のコーディネイターとして、当初はオーケストラとバリトン独唱という演奏編成で委嘱したのですが、本人の強い希望を汲んで、ソプラノ独唱も加えられました。ヒューマンな香りがアジア的な肌合いで、どこか懐かしいような楽想に載せて、手持ちの金属楽器(風鈴のような打楽器)を演奏しながら、二人の歌手が命の歌で未来への希望を歌い上げます。あまり長い曲ではありませんが、フィナーレのような風格さえ漂う、ウン氏ならではの楽章が誕生しました。さて、今日の写真は、カンボジアの夕景です。この楽章を聴くと・・・何か夕焼けのような懐かしさが感じられます。

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  • 25 Oct
    • <新世紀への讃歌>第6曲:宇宙の未来〜星たちへ(ランス・ヒューム作曲)

      15年前に初演された[新世紀への讃歌] の各曲とその作曲家の紹介を続けます。第6曲:”宇宙の未来~星たちへ”ランス・ヒューム(アメリカ)/Lance HULME (USA)演奏編成:オーケストラ、ソプラノ独唱四大元素の後には、”宇宙”と”いのち”を第6曲・第7曲のテーマとして設定しました。大野和士氏と随分考えて悩んだ後に決定したものでした。宇宙と言えばNASAの国ということで、アメリカ出身でドイツ/カールスルーエを拠点に活躍する気鋭の作曲家=ランス・ヒューム氏に、このテーマの作曲を託しました。人工の明かりが全く無い場所で、満天の星空を見上げながら、素晴らしく多くの星に囲まれながら、やがて銀河の中に身体が浮遊していくような感覚に囚われる・・・というようなイメージが喚起される作品が誕生しました。ミニマル書法を活用した精緻な筆致に載せて、ソプラノのヴォカリーズが天空を舞っていきます。昨年、長い旅路の末に宇宙空間から奇跡的な帰還を遂げた”はやぶさ”が、大きな話題になりました。私が子供の時分は、アポロ宇宙船の人類初の月面着陸の宇宙中継映像に心を踊らせたものでした。私たちの身体を構成している物質の基である原子は、宇宙の星たちと全く同じものです。つまり私たちも宇宙そのものなのです。宇宙の不思議、銀河の不思議、太陽の存在の奇跡、地球の存在の奇跡、生物と誕生と進化の奇跡、人類が誕生した奇跡、その人類の特権の重要な一つが、”音楽を楽しむこと”です。銀河の写真を見ながら、広大な宇宙に想いを馳せてみましょう!(ハッブル望遠鏡の写真です)

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  • 24 Oct
    • <新世紀への讃歌>第5曲:火の未来〜エネルギーへ(周龍 作曲)

      15年前に初演された[新世紀への讃歌] の各曲とその作曲家の紹介を続けます。第5曲:”火の未来~エネルギーへ”周龍/ツォー・ロン(中国/アメリカ)/Zhou Long (China/USA)演奏編成:オーケストラ、児童合唱四大元素に基づくタイトルによる4曲の最後、"火の未来"がこの第5曲です。アメリカ・ニューヨークを拠点に国際的な活躍していた(現在はミズーリ州カンザスシティー音楽院教授でもある)中国出身の作曲家=周龍(ツォー・ロン)氏に、このテーマの作曲を託しました。エネルギーの未来を、子供の持つパワーと将来にオーバーラップさせて、中国の西安方面に伝わる古謡の旋律をフィーチャーしつつ、活気に満ちた溌剌とした音楽が一気呵成に炸裂します。全8曲の中盤を引き締めるスケルツォのような、パンチの利いたキラリと光る楽章が誕生しました。周龍氏の周辺の世代、つまり1950年代生まれの中国出身の作曲家達は、欧米で国際的な活躍を展開している者が少なくありません。このシリーズの第3曲の作曲家=于京君(Julian Yu)氏は、その世代の最若手に位置付けられるでしょう。この世代の作曲家・音楽家は、青春時代を”文化大革命”に翻弄された後に、再開された北京中央音楽院で学び、後に海外でも研鑽を積んだ者が多い、ハングリー精神の固まりのような非常に逞しい世代なのです。中国の作曲家との交友記・交流記も、このブログで、追って紹介していきましょう。さて、写真は、周龍氏の拠点=ニューヨークでのワンショットにしました。冬景色のリンカーン・センターです。

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  • 23 Oct
    • <新世紀への讃歌>第4曲:空気の未来〜森へ、大気へ、

      15年前に初演された[新世紀への讃歌] の各曲とその作曲家の紹介を続けます。第4曲:”空気の未来~森へ、大気へ”ディエゴ・ルズリアガ(エクアドル)/Diego Luzuriaga (Ecuador)演奏編成:オーケストラ、バリトン独唱四大元素に基づくタイトルによる4曲の中の3曲目、"空気の未来"がこの第4曲です。南米大陸の赤道直下に位置し、低地のジャングル地帯から標高4000メートルを超える高地まで、そして太平洋にはイグアナやフィンチ等を含む独特の生態系で知られるガラパゴス諸島まで擁する、エクアドル出身の気鋭の作曲家=デフィエゴ・ルズリアガ氏にこそこの楽章を託すに相応しいと考えました。曲は、世界中のシャーマン(呪術師・祈祷師)が、二酸化炭素を酸素に還元する地球環境維持サイクルの重要な役割を担うジャングル・森の保全を祈るイメージを、作曲者の独特の感性を通してに喚起します。ラテンアメリカ圏の文化背景を仄かに放射する厳かなオーケストレーションの上に、バリトン独唱(河野克典氏)がシャーマンの首領(リーダー)のように祈祷を続け、オーケストラの楽員もシャーマンのように振るまいながら、静かにしかし熱く、未来を展望します。ルズリアガ氏とは、1992年にワルシャワで開催されたISCM World Music Days(国際現代音楽協会・世界音楽祭)で初めて会って意気投合して以来、懇意にしている間柄です。その交友記・交遊記については、また改めて記事にしましょう。今や、世界中の何処からでも、ある水準の教育を受けることができる可能性が有り、現代音楽や先端芸術の分野でも世界的な才能が輩出される、そういう時代になっているのです。このブログの読者の皆さんの中からも、世界に羽ばたく方がいるかもしれませんよ!さて今回の写真は、エクアドルに因んで、ガラパゴス諸島の動物達をワンショット!私は2006年に首都=キトのユースオーケストラを指揮に行ったことはありますが、残念ながらガラパゴス諸島を訪ねる時間はありませんでした。一度、行ってみたい洋上の楽園です。

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