本論文は、新型コロナウイルス感染と精液所見の関連を示しています。
Fertil Steril 2022; 117: 287（ベルギー）doi: 10.1016/j.fertnstert.2021.10.022
Fertil Steril 2022; 117: 297（ベルギー）コメント doi: 10.1016/j.fertnstert.2021.11.035
要約：新型コロナウイルス感染を認めた男性120名を対象に、精液検査、抗SARS-CoV2スパイク1抗体、S1受容体抗体を前方視的に測定し、感染からの日数別（〜31日、32〜62日、63日〜）に分類し、比較検討しました。結果は下記の通り（有意差のある項目のみ表示）。
〜31日 32〜62日 63日〜 P値
患者数 35名 51名 32名 〜
精子濃度<1500万/mL 37.1% ＞ 29.4% ＞ 6.3% 0.003
直進運動率<32% 60.0% ＞ 37.2% ＞ 27.6% 0.02
総運動精子数<40% 51.4% ＞ 25.6% ＞ 2.7% 0.01
DFI>25% 28.6% ＞ 11.0% ＝ 15.6% 0.049
今回の検討では、新型コロナウイルスは精液中には全く検出されませんでした。新型コロナウイルス感染・発熱と精液所見に関連は認めませんでしたが、精液所見低下と抗SARS-CoV2スパイク1抗体価及びS1受容体抗体価に有意な相関を認めました。また、3名に抗精子抗体高力価を認めました。
解説：精巣には、ACE2受容体をはじめ複数の新型コロナウイルス関連受容体がありますので、新型コロナウイルス感染の可能性を有します。本論文は、新型コロナウイルス感染者の精液中にはウイルスは存在しませんが、精液所見が有意に低下することを示しています。これは、発熱によるものではなく、抗体価との関連から免疫学的な機序によるものと推察されます。しかし、精液所見低下は、感染後1〜2ヶ月程度ですので、持続するわけではありません（感染後63日以降で元に戻る）。新型コロナウイルス感染により精細管のダメージをきたすことが報告されていますので、精細管の修復が行われたものと推察されます。今後の長期的な検討が必要です。
コメントでは、精液所見低下は発熱ではなく抗体価との関連であることに着目しており、血液〜精巣関門を通りぬけたウイルスの存在を示唆します。一方で、本論文の欠点として、追跡調査ではないこと、精液検査も1回のみであることを指摘しています。
下記の記事を参照してください。
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