☆新型コロナウイルスの子宮内膜への影響は? | 松林 秀彦 (生殖医療専門医)のブログ

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生殖医療に関する正しい知識を提供します。主に英語の論文をわかりやすく日本語で紹介します。

本論文は、新型コロナウイルスの子宮内膜への影響を検討したものです。

 

Fertil Steril 2020; 114: 223(ドイツ)doi: 10.1016/j.fertnstert.2020.06.026

Fertil Steril 2020; 114: 255(米国)コメント doi: 10.1016/j.fertnstert.2020.06.046

要約:健常女性子宮内膜の遺伝子発現データ5論文112名を元に、新型コロナウイルス感染に関与するとされている遺伝子発現(ACE2、TMPRSS2、TMPRSS4、CTSL、CTSB、BSG、FURIN、MX1)の有無を検討しました。なお、強発現は51〜100%、中発現は11〜50%、弱発現は1〜10%としました。子宮内膜の遺伝子発現は、TMPRSS4、CTSL、CTSB、BSG、FURIN、MX1で強く、TMPRSS2で中等度、ACE2で弱くなっていました。また、月経周期に伴う変化として、ACE2、TMPRSS4、CTSL、CTSB、MX1の遺伝子発現が着床期に強く認められました。ACE2、TMPRSS4、CTSL、CTSB、BSG、MX1の遺伝子発現は加齢とともに増強しました。

 

解説:新型コロナウイルスは、ウイルスのスパイクタンパクのS1ドメインがACE2(あるいはBSG)に結合することにより細胞内に侵入します。また、プロテアーゼであるTMPRSS2はウイルスとACE2の結合を増強することによりウイルスの細胞内への侵入を促進すると考えられています。他のプロテアーゼとして、TMPRSS4、CTSL、CTSB、FURIN、MX1が現在候補とされています。本論文は、既存の子宮内膜の遺伝子発現データベースを用いて新型コロナウイルス感染に関与するとされているこれらの遺伝子発現を検討したものであり、子宮内膜へのウイルス侵入の可能性は低いことを示しています。

 

コメントでは、健常女性の子宮内膜へ新型コロナウイルス侵入の可能性は低いことは確認できたものの、ウイルス感染した女性の子宮内膜での検討が必要であるとしています。また、人種、年齢、投薬状況なども考慮すべきとしています。

 

下記の記事を参照してください。

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