妊娠初期に新型コロナウイルス感染した症例 | 松林 秀彦 (生殖医療専門医)のブログ

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本論文は、妊娠初期に新型コロナウイルスに感染した妊婦の症例報告です。

 

Hum Reprod 2021; 36: 899(インド)doi: 10.1093/humrep/deaa367

要約:26歳、過去に妊娠2回あり(出産1回、流産1回)。自然妊娠が成立し、妊娠7週6日で心拍確認。妊娠8週2日で濃厚接触者の新型コロナウイルス感染が判明したため、鼻咽頭のPCR検査を実施したところ、陽性と診断されました。無症状でしたが10日間の病院での隔離処置が取られ、さらに7日間の自宅での隔離処置がなされました。この時点でも、依然として無症状でした。しかし、妊娠13週の定期超音波検査で、胎児水腫胎児死亡が確認されました。この時の鼻咽頭のPCR検査は陰性でした。しかし、胎盤と羊水のPCR検査は陽性であり、スパイク蛋白S1とS2が絨毛細胞と胎児の皮膚で陽性でした。病理検査で、絨毛はフィブリン沈着により血管が乏しい構造で、脱落膜(子宮内膜)には白血球の浸潤が著しく炎症所見が認められました。なお、胎児水腫をきたす可能性のあるその他の感染症(TORCH症候群含めたウイルス感染)は否定され、抗リン脂質抗体も陰性でした(免疫性胎児水腫の一因)。

 

解説:本論文は、妊娠初期に新型コロナウイルスに感染した妊婦で、胎盤を通じてウイルスが感染し、胎児水腫により胎児が命を落とした初めての症例報告です。本論文の著者は、このような垂直感染がどの程度起こるのか調査が必要であるとしています。ただし、原因不明の胎児水腫も起こり得るため、新型コロナウイルス感染と偶発的な胎児水腫の合併である可能性も否定できません。

 

下記の記事を参照してください。

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2020.3.21「☆☆新型コロナウイルス感染:ウイルスの残留性

2020.3.18「☆新型コロナウイルス感染:ISUOG学会ガイドライン

2020.3.17「新型コロナウイルス感染:ダイヤモンド・プリンセス号の対応

2020.3.12「☆新型コロナウイルス感染 その4

2020.3.6「☆新型コロナウイルス感染:産婦人科学会ガイドライン

2020.2.27「☆新型コロナウイルス感染 その3

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