お仕事、全く新しい事を担当してたんですが、そちらも大分落ち着いてきましたので、そろそろ週三回くらいは更新するペースにしていきたいなぁ、と。
怠け癖がついてないかどうか不安ですが。(笑)

さて、前回は、京城領事内田定槌の意見書について、清国が朝鮮を属邦とするに至ったのは、日本が朝鮮を独立国として取り扱い、何もしてこなかった「過失」によるものだという、剛速球の意見までを見ました。
朝鮮に係わると、割とみんな剛速球投げるようになるんですよねぇ。
何故なんだろう。(棒

今回は、その京城領事の内田定槌から陸奥への、1894年(明治27年)6月26日付『機密第26号』の続きを。
アジア歴史資料センター『韓国内政改革ニ関スル交渉雑件 第一巻/2 明治27年6月20日から1894〔明治27〕年7月12日(レファレンスコード:B03050308200)』の9画像目、左側真ん中辺りから。
今回も、長いので分割しながら見ていきます。
んでは早速。

去れば、今後当国に対し帝国政府に於て執らる可き御政策は、従来の如く単に朝鮮を以て一の独立国と公認するに止まらず、更に一歩を進め、其独立を擁護せらるるに非ざれば、今後益々当国に対して其勢力を失ひ、他日臍を噬むも及ばざる時期に相達すべく、而して其独立を擁護するには、勢ひ当国の外政に干与して清国及び其他の干渉侵畧を拒絶する而已ならず、其内政にも干与して之が進歩改良を計らざるべからざる儀と存候。
ってことで、今後朝鮮に対して日本がとるべき政策は、これまでのように単に朝鮮を一つの独立国と公認するだけでなく、一歩進んでその独立を擁護しなければ、今後益々朝鮮における勢力を失い、悔やんでも悔やみきれないようになるだろう。
しかし、朝鮮の独立を擁護するためには、朝鮮の外交に干渉して清国やその他の国の干渉や侵略を拒絶するだけでなく、内政にも関与して進歩改良を図らなければならないだろう、と。
いや、これも要約つうか解説になってねぇな・・・。(笑)

熟ら、当国内政の有様を観察するに、中央政府を始めとし、百般の行政機関は実に腐敗の極点に達し、民力の困弊実に名状すべからざるの有様に陥り候。
今其一斑を述ぶれば、従来当国政治上の実権は常に国王又は王妃の近親たる2、3の門族に帰するの例となり、各族互に権力を競争し、其競争に当りては各自家の利益を図るに汲々たるの外、国家の安危、王室の栄辱を以て眼中に置く者無く、現今の執権者たる閔族の如きも、自家の勢力を維持する為め清国政府の後援を借り、其結果として終に今日に至りては、其国をして清国の属邦たるの実を現はさしめ、其君をして清国の臣隷として之に事へしめざるを得ざるが如き勢に推移りたるも、自ら之に安んじ居る次第に御座候。
然るに、同族中にも亦互に権力を争ふ者有之。
其最も勢を得て顕要の位置を占むる者は、実際其位置に相当する丈けの智識才能を有する人物にはあらずして、唯最も奸佞にして国王又は王妃に多額の財物を進献する者に過ぎざれば、苟も其進献をなさざるものは仮ひ有用の人物たりとも、相当の官職を授けらるる事無之。
既に閔族中に於てすら尚且如此有様なれば、閔族以外の者にして朝官たらんとする者は、独り国王・王妃而已ならず、閔族の有力者にも亦贈賄せざる可からず。
而して、右は独り中央政府の官吏を登用する場合に於て然る而已ならず、各道の長官たる観察使を始とし、其他府縣州郡等に於ける地方官を撰任するにも亦同様の方法によるものに御座候。
朝鮮では中央政府を始めとして、さまざまな行政機関が腐敗の極みに達し、民の疲弊は名状しがたい有様。
その一部分を述べると、これまで朝鮮の政治的実権は、いつも高宗または閔妃の近親の2~3の門族に占められ、各族はお互いに権力を争い、そのためには自分達の利益だけを追求して国家や王室はアウト・オブ・眼中。

現在の執政者である閔族も、自分の勢力を維持するために清国の後援を受け、その結果として、現在では朝鮮を清国の実際上の属邦とし、高宗を清国の臣下として仕えてるかのような情勢になってるけど、自分からその地位に満足してる次第、と。
属国根性www

で、閔族の中でも互いに権力を争う者があり、その最も勢いがあり重要な地位を占めているのは、その地位に相当するだけの知識や才能を持っているからではなく、ただ最もずる賢くて高宗や閔妃に多額の財物を献上した者に過ぎず、それをしなければ例え有為の人材でも相当の官職が与えられる事は無い、と。
つうか、閔族でも即重用されるってわけじゃないのね・・・。
閔族も大変だなぁ。(笑)

で、閔族ですらこのような有様なわけで、閔族以外の者が朝官になろうとすれば、高宗や閔妃だけでなく閔族の有力者にも贈賄しなければならない。
これは、中央政府の官吏登用だけでなく、観察使や府縣州郡等の地方官の専任についても同様の方法によっている、と。

「売官」って言った方が通りが良いのかな?

右の次第に付、賢良跡を潜めて群奸頻りに進み、百官有志の職は皆此等鼠輩を以て充満致居候処、凡て此等の徒は在職中皆其職権を濫用して貪慾を擅にし、公然賄賂を収めて私曲を行ひ、其威に逆ふ者あるに当りては残忍酷薄の処置をなして毫も顧みる処なし。
而して其最も甚だしきは即ち地方官にして、例へば茲に観察使の職を得んが為め、進献贈賄等に10万金を費消したる者のありとせんが、当人任所到着の上は右の失費を回復し、且つ自家の嚢中を充たさんが為め、猥りに威福を張って強索を行ひ、或は部下の官吏に対して賄賂を誅求し、或は2、3の商人に特典を付与して多額の金額を貪り、或は種々の重税を賦課して細民を苦しめ、或は口実を設けて富豪を捕へ、之を牢獄に下して其財産を掠奪し、或は兇歉を名として防穀令を布き、相場の下落するに乗じ多額の穀物を買占めたる後、卒かに其禁令を解きて奇利を博する等、乱暴狼藉至らざる所なきは少しく当国の事情に通ずる者の熟知する所に御座候。
然るに、観察使を始め其他の地方官は皆生殺與奪の権を有するが故に、其配下に属する人民は仮ひ多少の虐政に逢ふことあるも、多くは之を忍耐して容易に抵抗する者無之候得共、虐政の度合漸く加はり、地方人民が最早忍耐する能はざる点に迄達するときは即ち発して民乱となり、地方の騷擾を惹起し、乱民共は直に地方官庁を襲撃して其官吏を殺傷すること往々にして有之候処、斯る場合に臨みては、地方官は自ら之を鎮定するの力なく、去りとて中央政府より一々兵隊を派して之を鎮定する暇あらず候に付、僅に其地方官の交迭を行ふときは直に静謐に帰するの例と相成居候。
而して、此種の民乱各地方に蜂起する者近年漸く其数を増加し、終には今度全羅忠清両道地方の大騷乱と相成り、中央政府と雖も之が鎮圧方に苦むに立至りたる次第に候処、今回の民乱は支那兵の来着を聞き一時其気息を収め、目下殆んど平定の有様には候得共、実際当国政府の自力を以て討滅したるには無之候に付、今後支那兵が本国に引上げたる後は又々早晩再発に至るべき儀と存候。
ってことで、賢くて善良な者は身を潜め、官職は皆こういった鼠輩で占められ、その在職中には職権を濫用して貪欲を欲しいままにし、公然と賄賂をもらって不正を行い、逆らう者については残忍酷薄の処置をして少しも気にする所がない。

その最も甚だしいのは地方官で、例えば観察使の職を得るのに賄賂等で10万使った者がいたとすると、そいつが着任すれば、使った金を取り戻し且つ懐を満たそうとして、人を思いのままに従わせて強く要求したり、部下の官吏に賄賂を厳しく求めたり、2~3人の商人に特典を与えて多額の見返りをもらったり、様々な重税を賦課して民を苦しめたり、口実を作って富豪を捕まえて牢屋に入れてその財産を略奪したり、凶荒を名目に防穀令を出し、相場が下落したら穀物を買い占め、その後防穀令を解除して儲けたり、乱暴狼藉が横行してるのは朝鮮の事情を少しでも知っている者は熟知している事だ、と。
つうか、時代劇の総集編かよ、みたいな。(笑)
まぁ、こっちは現実にあった話だけどな。
( ´H`)y-~~

しかし、観察使を始めとした地方間はみんな生殺与奪の権利を持っているため、その支配下にある人民は、たとえ多少の虐政にあっても多くは忍耐して抵抗する者も無かった、と。
ただ、虐政の度合いがどんどん進み、地方人民が我慢の限界に達したら当然民乱になるわけで、そうなれば乱民は地方官庁を襲撃して、その官吏を殺傷したりすることも往々にしてあった。
しかし、地方官は自分で鎮定する力が無く、中央は中央で一々兵隊を派遣して鎮圧する暇もなく、その地方官の更迭を行えば直ちに収まるのが通例になってた、と。
どんだけアバウトな国家運営やねん。(笑)

ってことで、この類の民乱・各地で蜂起する者は近年徐々に増加し、ついに東学党の乱が起きて中央政府と雖もその鎮圧に苦しむ状況になったけど、東学党の乱は清国兵の来着をきいて一端収束し、現在はほとんど平定された状況だけど、結局、朝鮮政府の自力で鎮圧したわけじゃないから、今後清国兵が本国に帰れば、遅かれ早かれ再発するだろう、と。

まぁ、全州城の奪還自体は自力と見ても良い気はしますが、単に奪還しただけですしねぇ。
全州和約等の「和解」した形跡も見られませんし、収束した原因が清国の到来であれ日本の到来であれ、乱の起きた根本原因が除去されていない以上は、遅かれ早かれ再発すると考えるのは妥当でしょうね。


ってところで、今日はここまで。



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