出光美術館で「祈りのかたち―仏教美術入門―」展を観た! | とんとん・にっき

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出光美術館で「祈りのかたち―仏教美術入門―」展を観てきました。観に行ったのは8月8日のことでした。前期と後期に分ければ、前期にあたります。副題には「仏教美術入門」とありますが、入門とはいえ、これがなかなか難しい。出光美術館の過去の振り返ってみても、僕が観始めてからですが、仏教美術というくくりでは今回が初めてのようです。それにしても、単に「仏教美術」と言っても、奥が深いし、幅も広い。


もちろん、拙宗等揚「達磨図」や曽我墨渓/一休宗純賛「一休宗純像」などは他の展覧会に出されていたので観てはいました。また、仙厓義梵の禅画は個別に展覧会で取り上げられていたので、何度か観てはいます。青磁の壺とか、青磁象嵌の瓶とかも、何度か観ています。が、しかし、「仏教美術」とした取り上げられたのは、始めて観ました。


実は前回の展覧会、「水墨の風 ―長谷川等伯と雪舟」、うっかりしていて気がついたら終わっていたという体たらく、残念でたまりません。(図録だけでも、と思っていましたが、買うのを忘れた!)


さて、今回の展覧会の見どころは、以下の通りです。


1.ガンダーラ仏から仙厓まで、仏教美術の歴史を一望

2.部分拡大パネルを駆使し、作品をわかりやすく解説

3.信仰の場に即した作品の状況を再現!

4.仏教美術の流れを反映した工芸作品にも注目!


展覧会の構成は、以下の通りです。


第1章 仏像・経典・仏具―かたちと技法

第2章 神秘なる修法の世界―密教の美術

第3章 多様なる祈り―弥勒・普賢信仰の美術

第4章 極楽往生の希求―浄土教の美術

第5章 峻厳なる悟りへの道―禅宗の美術



第1章 仏像・経典・仏具―かたちと技法


今から2500年ほど前、現在のネパール・インド国境地帯にあった小国の王子釈迦(ガウタマ・シッダールタ)は、この世に存在する様々な苦しみについて思い悩み、ついに出家をして悟りを開き、仏陀(目覚めた者)となった後はインド各地を巡って教えを広めました。この釈迦が出した答え、そして釈迦を手本とする生き方は仏法、あるいは仏教と呼ばれ、アジア各地に広まっていきました。仏教はその後、部派に分裂しますが、広く大衆の救済をめざした大乗仏教がシルクロードを経由して東アジアに伝わりました。このコーナーでは、仏教の根本となる三つの宝(仏・法・僧)のかたち、仏像・仏画、経典や仏具など、素材や技術を駆使した仏教美術の様相を見てみましょう。








第2章 神秘なる修法の世界―密教の美術


ヒンドゥー教の台頭により、一時的にインドで劣勢となった仏教は、ヒンドゥー教の要素を取り込むことによって大きく変貌を遂げ、再び隆盛期を迎えます。こうして、真言と呼ばれる呪文を重視したり、多面・多臂(たひ)・多足で忿怒相(ふんぬそう)という特異な姿をしたほとけ(明王)を登場させたりと、以前の仏教(顕教)とは違う要素が多い密教が成立することとなりました。無数のほとけたちによって構成される広大な世界観と神秘的な修法に彩られた密教は、インドから中国に伝わって唐時代に盛行し、空海(くうかい 774 - 835)、最澄(さいちょう 767 - 822)らの入唐求法僧によって日本に伝えられ、平安時代前期の黄金時代が現出しました。このコーナーでは、「真言八祖行状図(しんごんはっそぎょうじょうず)」を中心に、曼荼羅、明王図、密教法具などで深遠なる密教世界をご紹介します。




第3章 多様なる祈り―弥勒・普賢信仰の美術


平安から鎌倉時代にかけて、様々なほとけに対する独特の信仰がわき起こりました。中でも特に篤い信仰を集めたのが、弥勒菩薩󠄀(みろくぼさつ)と普賢菩薩󠄀(ふげんぼさつ)です。約56億7千万年後に未来仏としてこの世に下生(げしょう)する弥勒菩薩󠄀が待機する兜率天(とそつてん)へ往生し、弥勒下生にお供して功徳にあずかろう、また、その日までほとけの教えを護るために写経して地中に埋納しようと、経塚(きょうづか)造営が盛んに行われました。一方、仏教が基本的には女性の往生を説いていない中で、縁なき女性信者をも護り導く普賢菩薩󠄀に対する信仰が広まり、貴族女性の間で多くの普賢図が制作されました。このコーナーでは、経筒や瓦経、「普賢菩薩󠄀騎象図」などの作品を通して、二つの信仰のあり方を、さらに神仏習合の状況を示す作品を見てゆきます。



第4章 極楽往生の希求―浄土教の美術


 平安時代中期、天台僧 源信(げんしん 942 - 1017)による『往生要集』の成立や永承7年(1052)を境に仏教の衰退によって悟りなど望むべくもない暗澹たる末法の世が始まるという仏教史観、それを反映したように相次ぐ戦乱や天変地異による世情不安な世を背景に、この世を厭い、阿弥陀如来の極楽浄土への往生を願う浄土信仰が高まっていきました。阿弥陀の慈悲と救いを一心に願った称名念仏(しょうみょうねんぶつ)が法然(ほうねん 1133 - 1212)によって広められ、親鸞(しんらん 1173 - 1262)によって新たな展開を見せる中、極楽浄土に対する信仰は貴賤を問わず瞬く間に広がっていきました。このコーナーでは、「十王地獄図」「六道十王図」「当麻曼荼羅図(たいままんだらず)」などの仏画により、浄土信仰の中で生み出された人々の心に思い描かれた生まれ変わりの世界の様相とその変遷をつぶさに見てみたいと思います。





第5章 峻厳なる悟りへの道―禅宗の美術


 新仏教が流行した鎌倉時代に、教外別伝(きょうげべつでん)・不立文字(ふりゅうもんじ)や以心伝心を説き、釈迦のような坐禅修行によって真理を体得することを目指した禅宗が伝わりました。臨済宗と曹洞宗です。そのうち、臨済宗は室町時代に京都や鎌倉五山などを擁して隆盛を極める一方、庶民救済の使命を忘れて文芸サロン化したため、その愚を痛烈に批判した一休(1394 - 1481)によって清新な禅風が称えられました。続く江戸時代には、地方寺院を拠点に活躍した臨済僧の活躍にめざましいものが見られます。日本最初の禅寺として栄西禅師によって開山された九州・博多の聖福寺住持の仙厓(せんがい 1750 - 1837)は、得意の禅画によって庶民層にまで禅の教えを広めました。このコーナーでは、一休ゆかりの床菜菴(しょうさいあん)コレクションや禅画・墨蹟などで禅の美をたどります。仙厓名品選もお楽しみください。



仙厓名品選


初代館長であった出光佐三(1885-1981)が最も気に入っていたのが仙厓義梵(1750-1837)の禅画である。出光コレクションの核をなす作品群であり、蔵品数も1000点近くにのぼる。仙厓の作品は厳しい禅の教えを説いていながら、見る者の気持ちを温かくするユーモアにあふれた作品であることが、今も衰えない人気の秘密である。





「祈りのかたち―仏教美術入門」展
今をさかのぼること約2500年、人生の苦悩について悩んだ末に到達した釈迦の答えをもとに誕生した仏教。その教えはシルクロードを通して東アジアへ、そして6世紀の日本へと伝えられました。その後も続々と最先端の仏教教学・宗派が大陸から伝えられ、さらにその内容を我が国の実情に合うように変化して、密教や浄土信仰、禅といった諸宗派が成立し、現在も篤い信仰を集めています。
 救いを求める人々の願いと、ほとけに対する祈りの気持ちは美しい仏画や麗しい仏像、端正な経典や荘厳な仏具となり、今日まで守り伝えられてきました。
 本展では、広大な密教世界を図示した曼荼羅、死後に迎え入れられる憧れの極楽浄土やその反対に恐ろしき責め苦の世界を描いた地獄図、厳しい修行を通して悟りを求めた禅宗の祖師図や近世の禅画など、仏画を中心とする出光コレクションの中から代表的な仏教美術作品を厳選し、各時代・各作品にこめられたほとけへの信仰の心と荘厳の諸相をご堪能いただきたいと思います。


「出光美術館」ホームページ


ide1 「祈りのかたち―仏教美術入門―」展
図録
平成29年7月25日発行

編集・発行:

公益財団法人 出光美術館








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