出光美術館で「茶の湯のうつわ―和漢の世界」を観た! | とんとん・にっき

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出光美術館で「茶の湯のうつわ―和漢の世界」を観てきました。観に行ったのは、4月27日のことでした。


出光美術館の前回は「古唐津」でした。最初はあまり気乗りがしなかったんですが、展示に沿って「古唐津」を観ると、これが思っていた以上に素晴らしい。まったく不明のいたり、恥ずかしいです。で、今回は、「茶の湯のうつわ」です。これまた、難しそうですが、チャレンジしました。


桃山時代、千利休により侘茶が確立すると、それまでの中国から渡ってきた唐物を万能とする茶の湯の価値観は大きく変わり、天正年刊の終わり頃には、高麗茶碗と和物が主要な茶道具となっていました。江戸時代になると、楽茶碗のように侘茶の世界を継承するうつわ作りが行われる一方で、野々村仁清の華麗な色絵や、尾形乾山による大胆な図様や賛文を記すといった新しい感覚・視点にもとづいたうつわが作られ始めました。また京都や瀬戸・美濃いがいでも、萩や唐津など、各産地を特徴付ける茶の湯のうつわが登場します。さらに中国産をはじめ、朝鮮半島産、東南アジア産のうつわも用いられ、そのなかには日本側からの注文生産によるものもありました。加えて江戸時代以前から日本国内で伝わってきた唐物も再び脚光をあび,様々なうつわが撮りあわされ、茶の湯の美意識を創りだしていきます。そして江戸時代中期から後期にかけては、文人文化や中国趣味の隆盛を背景に煎茶の風習も広がり、そこにも趣向を凝らした新たな雰囲気のうつわがもちいられるようになります。(図録「ごあいさつ」より)


展覧会の見どころは、以下の4つです。


1.一楽、二萩、三唐津!

2.江戸時代に流行した「和漢のうつわ」とは!?

3.大名家・豪商愛蔵の茶道具がズラリ!

4.13年ぶり、秘蔵『雲州蔵帳』公開



展覧会の構成は、以下の通りです。


第1章 一楽二萩三唐津

第2章 京焼―古典へのまなざし、そして前衛的うつわ

第3章 愛でられる漢のうつわ―唐物・高麗・安南

第4章 懐石、宴のうつわ

第5章 煎茶の世界

特別展示 雲州蔵帳とその美



第1章 一楽二萩三唐津


一楽二萩三唐津。この表現は侘び茶の茶碗を格付けした言葉として知られています。桃山時代後期頃から日本各地ではじまる茶陶作りは、江戸時代に入るとさらに活発化し、地域ごとに特徴的なうつわ作りが行われます。ここでは侘び茶の伝統を代表する楽焼、茶人たちを魅了してきた萩焼と唐津焼、江戸時代の武家の茶の湯の雰囲気〈綺麗寂び〉を強く感じさせる高取焼など、江戸時代の和物の茶陶の魅力をお楽しみください。






第2章 京焼―古典へのまなざし、そして前衛的うつわ


日本各地でやきもの作りが行われる中で、京焼はひときわ雅やかな色合いや洗練されたデザイン性が特徴です。色絵を完成させた野々村仁清(ののむらにんせい 生没年不詳)のうつわは王朝文化を想起させるような古典へのまなざしに溢れ、尾形乾山(おがたけんざん 1663 - 1743)は国内外のやきものの魅力を吸収し、うつわに賛文や自身の銘を入れるなど、日本のやきものにそれまでなかった前衛的なものを生みだしました。





第3章 愛でられる漢のうつわ―唐物・高麗・安南


江戸時代、幕藩体制が整う中で、茶の湯は格式を重んじる武家風の要素が強くなります。侘び茶の流行の中で、人気が衰退していた唐物は再び注目を浴びます。日本国内に伝世した古典的な唐物のみならず、古染付や呉州赤絵、高麗物や安南(ベトナム)物など茶人の嗜好にあわせたやきものが輸入され、和物と取り合わせながら茶の湯のうつわに新たなる美意識が創り出されたのです。








第4章 懐石、宴のうつわ



茶の湯では食事をしながらお酒も飲む懐石が桃山時代に確立します。そして江戸時代には江戸や大坂、京都などで酒宴をともなう料亭料理へと発展しています。茶の湯の懐石では使いやすさをはじめ、季節や趣向に応じて様々なうつわが用いられていますが、料亭料理の発達の中で、華麗・豪華な酒器や食器も嗜好されるようになっていきました。



第5章 煎茶の世界



急須などに茶葉を入れ、湯を注ぎ茶の成分を抽出して飲む中国・明時代の飲茶方式の「煎茶」は、江戸時代中期頃には日本国内でも広まります。中国から輸入されたうつわが利用されたほか、国内でも煎茶器が作られるようになります。抹茶の世界で用いられていた茶道具類も、煎茶の中では別の機能を有するうつわとして転用されることもあり、ますます茶文化におけるうつわの多様性・多機能性が広がっていきました。




特別展示 雲州蔵帳とその美


江戸時代後期の数奇大名、出雲松江藩の七代藩主・松平不昧(1751 - 1818)により蒐集・所蔵された茶の湯の道具リスト『雲州蔵帳』と不昧が好んだ作品などをあわせてご紹介します。大名茶人の好みをちょっとのぞいてみましょう。




「茶の湯のうつわ―和漢の世界

桃山時代、千利休(1522 - 91)により侘び茶が確立すると、それまでの中国から渡ってきた唐物を万能とする茶の湯の価値観は大きく変わることが知られています。その変化は、利休より遡る村田珠光(1423 - 1503)の時代から徐々に「備前物」や「信楽物」の使用に始まり、天正15年(1587)頃になると茶会記には唐物はほとんど見られなくなり、高麗茶碗と和物が主要な茶道具となっていきました。
江戸時代になると、楽茶碗のようにそれまでの侘び茶の世界を継承するうつわ作りが行われる一方で、野々村仁清(生没年不詳)の華麗な色絵や尾形乾山(1663 - 1743)のように大胆な図様、賛文や自身の銘を記すといった新しい感覚・視点によりうつわが作られ始めました。また京都や瀬戸・美濃以外の地域でも、唐津(佐賀)や萩(山口)、高取や上野(福岡)といった西国地域をはじめ、全国各地で茶の湯のうつわが作られ、地域を特徴付けるやきものが盛んに作られるようになりました。また国産のやきもの以外にも、中国産をはじめ、朝鮮半島産、東南アジア産、その中には日本側からの注文によるうつわもあります。さらに唐物として重宝され日本国内で伝世してきたうつわについても再評価され、茶の湯の世界で再び脚光をあびることになります。
江戸時代中期から後期にかけては、文人文化や中国趣味の隆盛を背景に煎茶の風習も広がり、そこにも趣向を凝らした新たな雰囲気のうつわが用いられるようになります。
このように江戸時代には茶の湯が幅広く展開し、武家のみならず、公家、豪商さらには町衆まで茶の湯の風習が広がっており、用いられるうつわも多様になったのです。
本展では江戸時代に流行した茶の湯のうつわを中心に、さらに当館が所蔵する出雲(島根)松平家の茶の湯に関する道具帳である『雲州蔵帳』とその世界観についても特集展示として取り上げ、茶の湯のうつわとその美意識をお楽しみいただきます。


「出光美術館」ホームページ


utu1 「茶の湯のうつわ―和漢の世界」

図録

平成29年4月15日発行

編集・発行

公益財団法人出光美術館








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