映画タイトルしりとり~『せん』~戦場のメリークリスマス(1983) | あの時の映画日記~黄昏映画館

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映画タイトルしりとり・・・

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映画タイトルしりとり34本目。

前回「ん」で終わってしまったので自己救済措置として「せん」から始める作品をご紹介。

大島渚監督自身最大のヒット作品となった、

『戦場のメリークリスマス』(1983)です。

 

1942年ジャワ島の日本軍の俘虜(捕虜)収容所。

収容されていた日本語を理解できるローレンスとハラ、

そしてハラの上官にあたるヨノイ大尉と陸軍少佐のゼリアスの奇妙な友愛を描きます。

 

旧日本軍体質を具現化したようなハラ。

彼は俘虜になるということは恥でそうなると自ら腹を切るべきと考えている人物。

たとえ俘虜になろうと生き抜くことこそが使命と考える西洋人とは当然考えが合わない。

 

加えてハラは極めて粗暴な人物であるために、

微妙な友情を感じつつも、ローレンスらとしばしば衝突する。

 

しかし彼は、

達観した死生観を持っており、

奥底ではとてもやさしい人間であるように描かれる。

 

一方上官のヨノイも実直な軍人であるが、

俘虜として連れてこられたゼリアスに今までに感じたことのない感情が生まれる。

 

同性に対する愛情なんて完全に否定されていた時代。

当然そんな知識を得ているわけでもなく、

ただゼリアスを前にして戸惑いが深くなっていく。

 

ヨノイは俘虜に対して残虐行為を行おうとする。

それを止めようとしてゼリアスはヨノイにキスをする。

その瞬間自分が感じていた感情が異性に対する性愛だと気づき慟哭する。

 

それがきっかけでヨノイは更迭されてしまうのだが・・・

 

西洋人と日本人の倫理観の違い。

それは違うというだけで、どちらが正しいということではない。

 

酔っぱらったハラがクリスマスの晩に二人の俘虜を釈放してしまったのは、

無意識に倫理観の違いの壁を壊そうとしていたのか。

 

ラストシーンの涙を浮かべた彼の笑顔。

「メリークリスマス、ミスターローレンス」

 

登場人物の中に一切女性が登場しないこともあって、

男色感の強い物語でありますが、

不思議と湿っぽい感じがしないのが大島監督らしい。

さらに、西洋人目線による障碍者蔑視が感じられる描写や、

上級生による下級生に対するイジメの描写などがあるのも興味深い。

 

美しい男たちの物語。

その中でもデヴィッド・ボウイの美しさは際立つ。

 

映画初出演となるビートたけしと坂本龍一の演技は、

正直たどたどしいところがあるし、

ローレンス役のトム・コンティの日本語のセリフが少々聞き取りにくいのだが、

それが却って双方の壁の厚さを強調することになったように思う。

 

切腹のシーンなどをかなりセンセーショナルな演出をしているのは、

日本国内だけではなく、

多分に世界を意識したためだろうと思われます。

 

有名になった坂本龍一によるテーマ曲とともに、

忘れられない一篇になっています。