「明日に向かって撃て」(1969)~「天井桟敷の人々」(1945)~「となりのトトロ」(1988)~「ロンゲスト・ヤード」(1974)~「ドラゴンへの道」(1972)~「地下鉄のザジ」(1960)~『ジョーイ』(1977)と映画タイトルしりとりが続いております。
今回は『い』ということで、
黒澤映画のヒューマニズム映画である、
『生きる』(1952)を取り上げていこうと思います。
なんと潔いタイトルなんでしょう。
企画当初のタイトルは『渡辺勘治の生涯』だったらしい。
黒澤監督の一声でタイトルが変更になったらしいですけど、
こういうところにも黒澤監督のセンスを感じますね。
自らが癌であることを知り、
人生に絶望を感じるが、
あることをきっかけに残りの人生を大事にしようと悟り、
所謂お役所仕事の代表だった主人公が、
市民の陳情書に目を通すようになり、
まさしく命を懸けて地域住民のための小公園の建設しようとする・・・
この作品の感想を一言で言い表すと、
「他人のために生きることは尊い」と思いました。
冒頭のナレーションから、
「この男は死んでいる」と言われる主人公。
生物学的には生きていても、
自分のためだけに生きている男は死んでいるのだという極限的な比喩。
死を悟ってから精力的になる主人公は、
それと対照的に輝いてくる。
そして本当の意味で、
「生きる」ことになる。
人間一生懸命生きている期間なんて、
実際、本当に少ない時間なのではないか。
なんとなく惰性で生きていく毎日。
「死」という人生のゴールが明確に見えた時、
初めて人間は真剣に人生に向き合うのではないか。
世の中には不幸にも悟ることなく予期せぬ死を迎える人がたくさんいる。
予告なく明日がなくなること、
無情というのだろうが、こんなに悲しいことはない。
そんなことを考えるとこの主人公は、
本当に幸せな人生を送ることができたのではないかと思う。
ブランコに揺られながら、
雪の降る中ゴンドラの歌をつぶやくように歌う主人公。
誰に向けて歌っているのだろうか。
ハリウッドがトム・ハンクスを主演にしてリメイクを計画しているらしいのですが、
どうなっているのでしょうね。
ゴンドラの歌のシーンはリメイク不可能だと思うんですが・・・
どうでしょうね。