前回のしりとりタイトル、
『明日に向かって撃て』の尻文字『て』で始まる作品。
いろいろ考えました。
『天国から来たチャンピオン』・・・ンで終わってしまう。
『テンタクルズ』・・・あとがしんどそう。
『天国の門』・・・あ、これも「ん」で終わってしまう。
『10』テン・・・これも「ん」だ。
いろいろ考えましたが、
これで行くことに決めました。
『天井桟敷の人々』(1945)、
フランスのクラシック大作です。
凄い凄いと聞いてはいたものの、
初めて観たのは1981年のリバイバル公開時でした。
確か大阪三番街シネマだったんじゃないかな。
リアルタイムから36年たってからの体験です。
作品は「犯罪大通り」と「白い男」からなる二部構成。
古典ともいわれるこの作品の何が凄いって、
あらゆる芸術への迫害があったと言われるこの時代(制作時期は1942年頃からか)に作り上げられた本作のテーマが反戦やレジスタンスではなく、
純粋な“ラブストーリー”であったこと。
当時としては破格の16億円をも超える製作費を使って、だ。
そしてこの純粋なラブストーリーが、
時を経た今、
大衆の圧政に思う無言の抗議の声を代弁しているように感じられるのがこの作品を本物にする。
パントマイム役者(マルセル・カルネ)の演じる事の顛末の全てが、
当時の世論を皮肉る芝居に見えていた。
そして、
不覚にもラストは涙してしまうんですよね。
愛し合っていても決して結ばれることのないパントマイム役者と伯爵夫人。
雑踏の中伯爵夫人を追い続けるパントマイム役者の姿は、
今でも瞳に焼き付いてます。