映画タイトルしりとり~『る』~ルードウィヒ神々の黄昏 | あの時の映画日記~黄昏映画館

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明日に向かって撃て」(1969)~「天井桟敷の人々」(1945)~「となりのトトロ」(1988)~「ロンゲスト・ヤード」(1974)~「ドラゴンへの道」(1972)~「地下鉄のザジ」(1960)~『ジョーイ』(1977)~『生きる』(1952)と映画タイトルしりとりが続いております。

 

そして「る」で始まるタイトルの映画。

これはすぐに浮かびました。

ルキノ・ヴィスコンティ監督の超大作、

『ルードウィヒ神々の黄昏』(1972)です。

近年の表記では、「ルードヴィヒ」となっているようだが、
私の初見時(1980年)の表記である「ルードウィヒ」で進めていこう。
 
この作品は、

耽美的破滅型映画の最終到達点といえる作品だと思います。

18歳で国王の座に就いた若者ルードウィヒの生涯。

 

オーストリア皇帝の妃であり従姉のエリザベートに永遠の愛と美を見つけるが、

叶わぬ愛だと悟り美の方向は偽りのない美青年に移っていく。

 

音楽を愛し、

国民の非難を受けながらも作曲家ワーグナーを寵愛し、

理想郷を作るために財政難にもかかわらず城の建築に没頭する。

 

自らは戦地に赴かず、

戦地に赴い精神を病んだ弟のオットーの純粋さがルードウィヒを追い詰める。

 

精神を病んだと判断され、

ベルクの城に幽閉され謎の死を遂げるまで、

ヴィスコンティの演出には全くの隙がない。

 

あっけにとられるほどの豪華な調度品。

狂王と言われたルードウィヒでなくても魅了される悪魔の芸術だ。

 

完璧な美と愛の象徴であるエリザベート(ロミー・シュナイダー)の美しさにも息を呑む。

もちろん、

凛々しい18歳での即位式から次第に狂気に包まれていくルードウィヒを演じたヘルムート・バーガーの熱演も特筆されるべきポイント。

 

この作品の制作中にヴィスコンティ監督は一時過労で倒れたのだという。

当然だろう。

この4時間近くの大作を緊張の糸を緩めることなく演出し続けるというのは、

執念というより、ルードウィヒと同じ美への狂気だ。

 

「私は謎なのだ・・・永遠に謎でありたい」

美に魂を売った狂王の最後のセリフです・・・