Angel Face

救急隊員のフランク・ジェサップ(ロバート・ミッチャム) はトレメイン家に出動した。大事には至らなかったが、その家の娘のダイアン・トレメイン(ジーン・シモンズ)と知り合った。
ダイアンはフランクが気に入ったようで追いかけてきた。またフランクの恋人のメアリ・ウィルトン(モナ・フリーマン)にも会いに行き、フランクとのことについて勝手な話をした。
フランクはダイアンに誘われてトレメイン家の運転手となった。ダイアンは父親のチャールズ(ハーバート・マーシャル)は大好きであったが、継母のキャサリン(バーバラ・オニール)とはうまくいっていなかった。そんな時にチャールズとキャサリンが車の事故で死亡した。出発する時に、アクセルを踏み込んだら、なぜか後進し車は崖下に転落した。
車に細工した疑いで、フランクとダイアンが起訴された。判決の前に二人は結婚した。二人は無罪となった。
このまま二人で住み続けることもできたが、フランクは離婚して出ていくことにした。しかしダイアンはフランクにしつこく食い下がった。
しかし結局、ダイアンはフランクを車で送っていくことになった。二人は車に乗り込んで、アクセルを踏み込んだ。
 


製作:1953年、脚本:オスカー・ミラード、フランク・S・ニュージェント、監督:オットー・プレミンジャー



■ はじめに

本作はロバート・ミッチャム、ジーン・シモンズ、モナ・フリーマンと私が好きな俳優が出演している。

◆ 登場人物
 ダイアン・トレメイン(ジーン・シモンズ) - 主人公
 チャールズ・トレメイン(ハーバート・マーシャル) - ダイアンの父親
 キャサリン・トレメイン(バーバラ・オニール) - ダイアンの継母
 フランク・ジェサップ(ロバート・ミッチャム) - 救急隊員
 ビル・クロンプトン(ケネス・トゥベイ) - 救急隊員、フランクの同僚
 メアリ・ウィルトン(モナ・フリーマン) - フランクの病院の受付

◆ トレメイン家

ダイアンの父親チャールズは作家。妻が死亡し、キャサリンと再婚してアメリカに来た。ダイアンも父親についてきて、キャサリンが継母となった。チャールズは妻が死亡してからは小説を書かなかった。しかし再婚後は小説を再度書き始めた。注、しかし本当は書いていない。

ダイアンはチャールズが大好き。しかしキャサリンには反感を持っている。「お母さん」とか言わずに「キャサリン」と言っている。

キャサリンは大きな財産をもっており、丘の上に屋敷がある。三人は、そこに使用人と一緒に住んでいる。

◆ フランク

かってはレーサーをしていたが病院の救急隊員をしている。同じ病院で受付をしているメアリとは恋人同士。いずれは車関係の店を開店したいと考えている。注、アメリカの救急業務は民間企業で行われる。

また同僚のビルもメアリが好きである。
 


■ あらすじ

◆ ガス漏れ事故

トレメイン家でガス漏れ事故が発生しキャサリンがガス中毒となった。連絡を受けてフランクとビルが救急車で出動した。到着したが、キャサリンの命には別条はないようである。対応は特に要請されなかった。

ここでガス漏れを止めるための工具が見つからなかったことが問題となった。けっきょく工具は暖炉のそばで見つかったが、なぜそこにあったのかは不明である。後日の調査も含め、なぜガス漏れがあったのか、なぜ工具がなかったのかは、あいまいなままとなった。

屋敷の一角でダイアンがピアノを弾いていた。このような時になぜビアノを弾いていたのかは疑問だが、ダイアンが興奮したので、フランクが落ち着かせようと両腕を掴んで抑えた。するとダイアンはフランクを殴った。ダイアンが「ごめんなさい」と謝った後、二人はほんの少し話した。

フランクとビルは病院に戻った。

◆ フランクを追いかける

ダイアンは救急車の後を車で追いかけた。仕事が終わったフランクが入った店に入った。「ホウキに乗ってきたの」。

フランクは、昔はレーサーで車関係の店を開きたいという話と恋人のメアリのことを話をした。ダイアンはチャールズとキャサリンのことを話した。ここでメアリから「食事を作って待っている」と電話があるが、フランクは断る。

その後二人は食事をしてダンスをした。

◆ メアリと会う

翌日にダイアンは、なんとメアリに会いに行く。なかなか大胆。

昨晩メアリからフランクに電話があったときに、一緒にいたことをばらして、さらにそれを「フランクが嘘をついたのは、あなたを傷つけないためよ」と言う。おいおい、そんなこと言ったらよけいに傷つくだろ。

そしてメアリに「フランクの開店資金に1000ドルを」と提案する。ダイアンがメアリに渡す形にする。しかも「フランクには秘密に」と言う。本作は1952年なので1000ドルはそれなりの金額。

メアリは突然の提案で判断がつかなったのか、ダイアンの意図を図りかねたのか、この提案を断った。

ダイアンが間接的に金を融資しようとした意図は何だろうか?本作では明示されていないが、勝手に想像してみよう。
1.ダイアンがフランクに言うと断られるから
2.メアリに自分の決意を伝えて、メアリにフランクのことを断念させるため
3.その他

2.の確率が高い。ダイアンの意図通りかどうかはともかく、フランクとメアリの間に、少しだが隙間風が吹き対立が生じる。メアリはわりと気丈そうな女性である。そしてビルは「俺にも希望が?」と言う。

後でフランクにメアリと会ったことも話す。これも2.説を補強する。ダイアンのやることはかなり露骨だな。

◆ フランク転職

ダイアンは「病院と同じくらいは稼げる」と言って誘った。フランクはトレメイン家の運転手に転職した。しかしみんな運転するので暇らしい。ダイアンは「朝から声を聴けるだけで最高」とウキウキしている。

フランクはキャサリンに望みである店舗の開店の計画書を提出した。キャサリンはフランクの説明を聞いて「弁護士に相談する」と言って計画書を受け取った。

しかしダイアンの説明によると、その計画書はごみ箱に捨ててあったそうである。注、なにしろダイアンの言葉なので信用できるのかは疑問。

◆ ダイアンの妄想

ダイアンはフランクに一生懸命だが、フランクの気持ちは、わりとすぐに醒めてしまったようである。

ダイアンはフランクに夜中に起こったことを話す。「部屋の中に誰かがいる、キャサリン、ガスが漏れる音、飛び起きてガスを止めた、しかしキャサリンに否定されれば証拠がない」。フランクはダイアンの話を信用しない。我々も信用しない(笑)。

フランクは「かわいい顔をしているが、何を考えているのか?」と言う。この事件の後、フランクはメアリを訪ねて行って、すでにビルと仲良くしているメアリに「ビルの勝ちか?」と聞く。

フランクは「(トレメイン家の運転手を)辞める」と言う。「少しは私を愛してる?」「君は真剣な交際には向かない」「私も連れて行って」「この仕事はすべきじゃなかった」「絶対に行かせない」と言葉の応酬となる。この時にチャールズが実は小説を書いてないことなどを話す。

◆ 転落事故

屋敷に来るには丘の周りをまわっている道路を上ってくる。外から屋敷に戻ってきた車は右に90度曲がって頭から車庫に入れられ、出発する時には左ハンドルでバックして車庫から出して、それから出発する。車庫から出した時の後ろは崖になっている。

上記のフランクとの話の後、ダイアンは崖の上からじっと下を見ていた。まったく無表情。そして手に持っていた小さな何かを下に落とす。それは崖を下まで落ちて行った。

キャサリンが町にでかける。普段とダイアンの態度が違うので「なんだか優しいのね」と言う。

チャールズが急に外出することになった。キャサリンとチャールズが車に乗った。キャサリンがアクセルを踏んだ。すると車はバックで急発進して崖下に落下した。二人は死亡した。

誰が車を車庫から出したのか?明示はされないが、キャサリンがダイアンに「キーはどこ?」と聞いていて、ダイアンが出したことが示唆される。

◆ 裁判

上記の事故の犯罪の可能性が指摘される。ダイアンは「私が一人でやった」と主張するが、ダイアンとフランクが起訴される。ダイアンは鉄格子を通って入る病室に拘束される。30万ドルの生命保険金が掛けられているが、犯罪と証明されれば支払われない。

弁護士は二人を結婚させて陪審員の同情・共感を得るように図る。これは一長一短で危険も伴う。二人の結婚式は病室の中で、意図的に簡素に行われる。そして「二人とも無罪」を目指す。

検察側は車に細工がなされていたと主張する。1.ギヤの状態に拘わらずバックする。2.アクセルの踏み込みが少しでも、いっぱいに踏み込んだように動作する。弁護側は反論する。

結果は二人とも無罪。

ダイアンあるいはフランクが細工をする場面は提示されないが、事件前にダイアンが崖の下を無表情でじっと眺める。我々にはダイアンの仕業であることが強く印象付けられる。しかしともかく無罪。

◆ 離婚

二人は無罪になり、このまま堂々と屋敷に住むこともできた。しかしフランクは「離婚する」と言う。フランクの決意は堅かった。

フランクはまたメアリのところへ出かけたが、メアリは「離婚すると言えば、胸に飛び込むと思ってたの?」と言葉を投げつけた。それでもフランクの決意は堅かった。

ダイアンは事件の弁護士を訪ねて「事件は自分単独で実行した」という証言証書を作成しようとする。当然ではあるが、一度判決が下った事件については、再度裁判は行われない。弁護士に言われて戻ってくる。もう支離滅裂状態。

ダイアンが部屋の中でイスに座ってじっとしている。転落事故の前に崖下を眺めた時と同じ目つきをしている。

◆ フランクの出発

離婚が成立してフランクが出ていこうとするが、ダイアンはしつこく食い下がる。「一緒に連れて行って!」。拒否されると「送っていく」「バスで行く」「バス停まで送っていく」「タクシーを呼んである」。

再度ダイアンが「バス停まで送っていく」と言うとフランクは同意する。ダイアンは車を車庫から出して待機する。フランクが出てきて荷物をトランクに入れて助手席に乗り込む。

そしてダイアンがギアを入れてアクセルを踏み込んだっ!
 


■ 蛇足

最初のガス漏れ事故の件は、それ以上追及はされない。何も証拠は示されないが、本作を素直に見ると「ダイアンの仕業である」と示唆される。

ダイアンの性格は、悪口を言えば「幼児が欲しいものが手に入らないので泣きわめく」ようなものであるが、ともかくダイアンのキャラクタはよく表現されている。

チャールズが死亡するのは想定外だが、それに対するダイアンの反応は示されない。

メアリは「裏切者は許さない、絶対に復讐を」というタイプではなく、すっきりと割り切るタイプのようである。フランクはダイアンに対してわりと早い段階で醒めてしまう。頭と感情が走り回っているのはダイアンで、これが本作のテーマ。

フランクがダイアンに走った後のメアリの言葉がわりと笑える。

本作の題名は少し変だと思うが、フランクがダイアンに「顔はかわいいが...」という場面がある。このあたりに由来するのだろう。
 


■ 出演作

ロバート・ミッチャム
(1947)過去を逃れて/Out of the Past
(1947)十字砲火/Crossfire)
(1954)帰らざる河/River of No Return
(1957)眼下の敵/The Enemy Below
(1952)天使の顔/Angel Face
(1962)恐怖の岬/Cape Fear
(1949)仮面の報酬/THE BIG STEAL
ケープ・フィアー/CAPE FEAR(1991)
(1946)危険な女/The Locket
(1951)替え玉殺人事件/HIS KIND OF WOMAN
(1946)底流/Undercurrent
(1949)ママの青春/Holiday Affair
(1954)セラーズ先生、こんにちは/She Couldn't Say No
(1950)ゼロへの逃避行/Where Danger Lives
(1955)街中の拳銃に狙われる男/Man with the Gun
(1955)見知らぬ人でなく/Not as a Stranger
(1960)サンダウナー:オーストラリアで羊を飼って放浪する生活/The Sundowners

ジーン・シモンズ
(1948)青い珊瑚礁/The Blue Lagoon
(1949)アダムとエヴリン/Adam and Evelyne
(1950)The Clouded Yellow
(1952)天使の顔/Angel Face
(1952)アンドロクレスと獅子/Androcles and the Lion
(1956)ヒルダ・クレイン/Hilda Crane
(1958)大いなる西部/Big Country
(1960)エルマー・ガントリー/魅せられた男/Elmer Gantry
(1954)デジレ・クラリー/Desiree
(1954)セラーズ先生、こんにちは/She Couldn't Say No
(1953)聖衣、キリスト教弾圧/THE ROBE
(1954)止まった銃弾/A Bullet Is Waiting
(1967)大いなる遺産/Great Expectations
(1969)ハッピーエンド、幸せの彼方に/The Happy Ending
(1958)黄昏に帰れ/Home Before Dark
(1957)出征するまで/Until They Sail
(1945)キスの相手は?:コメディ/Kiss the Bride Goodbye
(1950)万国博覧会行方不明事件/So Long At The Fair
(1955)殺しのデッドロック/Footsteps in the Fog
(1979)ドミニクの亡霊/Dominique
(1967)ジェリコの夜/Rough Night in Jericho

モナ・フリーマン
(1949)女相続人/The Heiress
(1952)天使の顔/Angel Face
(1949)テキサス決死隊/Streets of Laredo
(1955)デンヴァーへの道/The Road to Denver
(1952)挑戦者/ボクシング映画/Flesh and Fury
(1949)Dear Wife
(1955)恐怖の影/Shadow Of Fear/Before I Wake
(1957)ドラゴン砦の決戦/Dragoon Wells Massacre
(1946)ジギー・ブレナン/That Brennan Girl
(1961)二つの世界/The Two Worlds Of Charlie Gordon
(1950)銅の谷/Copper Canyon
(1947)恋文騒動/Dear Ruth/
(1951)Dear Brat
(1950)私は万引き/I Was A Shoplifter
(1950)烙印/牧場主の行方不明の息子を探す/Branded