THE LOCKET

ナンシーとジョンの結婚式の日、ジョンの前にハリーと言う人物が現れて、ナンシーのことを警告し、過去のことを話し始めた。
それはナンシーの宝石類に対する異常な執着心にまつわる出来事だった。


映画関連目次(闇雲映画館)

製作:1946年,脚本:シェリダン・ギブニー,監督:ジョン・ブラーム


■ はじめに

◆ 登場人物(キャスト)

ナンシー(ラレイン・デイ) 主人公
◇ 一階の登場人物
ジョン・ウィリス(ジーン・レイモンド) ナンシーの婚約者
ウィリス夫人(キャサリン・エメリー) ジョンの母親
◇ 地下一階の登場人物
ハリー・ブレア(ブライアン・エイハーン) 精神科医、ナンシーの恋人→夫
ウィンダム卿(ヘンリー・スティーヴンソン)
ウィンダム卿夫人(リリアン・フォンテイン)
◇ 地下二階の登場人物
ノーマン・クライド(ロバート・ミッチャム) 画家、ナンシーの恋人
テルマ(マーナ・デル) クライドの助手
アンドリュー・ボナー(リカルド・コルテス) 画家を支援している金持ち
ボナー夫人(?)
◇ 地下三階の登場人物
ナンシー(シャリン・モフェット) 10歳
モンク夫人(ヘレン・ティミグ) ナンシーの母親
ウェンデル(レジナルド・デニー) ナンシーの母親の雇い主
ウェンデル夫人(ネラ・ウォーカー)
カレン・ウェンデル(?) ウェンデル家の娘、ナンシーの友達

◆ 補足

過去を回想する映画があるが、本作は、回想場面でさらに回想場面にステップダウンし、さらにもう一度回想場面にステップダウンする。つまり現在の場面を一階とすれば、地下三階までステップダウンする。

すなわち現在と合わせて四階建てになっている。

リリアン・フォンテインはオリヴィア・デ・ハヴィランド、ジョーン・フォンテイン姉妹の母親
 


■ あらすじ

◆ 一階/ジョン・ウィリス

ジョンとナンシーの結婚式がおこなれる。

式の直前、ジョンに面会客が来た。精神科医のハリー・ブレア。

ハリーはナンシーのことを警告する。あまりに唐突な話であるが、ジョンはハリーの話を聞く。

◆ 地下一階/ハリー・ブレア

路上で自転車同士がぶつかりそうになった。相手はナンシー。

自宅まで送り付き合い始めた。ナンシーを「完璧な女性」と感じた。

新婚旅行から帰って新居に引っ越した。

数週間たった時、ハリーの診療所にノーマン・クライドという画家が訪ねてきた。

「ナンシーは大した女、彼女は人を殺している。三年前に私の絵画教室にきた」。

ハリーは、ノーマンの話を聞いた。

◆ 地下二階/ノーマン・クライド/絵画教室

ナンシーはノーマンの助手のテルマの紹介でノーマンの絵画教室に来た。

しかしナンシーは絵が下手で、またあまり熱心そうではないので、ノーマンはナンシーを追い返した。

だが、テルマから抗議を受けた。ナンシーは画家を支援している金持ちアンドリュー・ボナーの秘書とのこと。チャンスを逃したと言われた。

小さなレストランに行ったところ、偶然ナンシーを見かけて、先日のことを謝った。

きっかけは悪かったが、わりと話が弾んだ。恋人がいる/いないという話になった。

「いないと言ってほしい?」「いないわけないだろ」「いないわ」。

その後、ナンシーは絵画教室に通った。ノーマンは「ナンシーを絶対手に入れる」と決めた。

ある時、ナンシーはボナーを連れてきた。ナンシーをモデルにした「カサンドラ」という絵を見せた。

ボナーが展開会を開くということで、何点かの絵を貸し出した。

◆ 地下二階/ノーマン・クライド/展覧会

展覧会が開かれた。ボナーの妻マーサは車イス。マーサはノーマンの絵を気に入って購入した。

この時にマーサはボナーに「タルボットさんの腕輪がない」と言う。「きつと見つかるわ」。

ノーマンとナンシーは、近くのレストランに行った。

ナンシーは席を外した。その間にノーマンはジュークボックスで曲をかけようとしたが、小銭がないので、ナンシーのバッグを開けた。

中に腕輪があった。タルボットの腕輪かどうかは分からない。しかしにナンシーが持っていたものとは思えなかった。

ノーマンはナンシーを連れ出して問い詰めた。するとナンシーは驚くべき返答をする。

「ほしかったからよ。告げ口するの?ダイアは好きじゃないけど、自分のものにしてみたかった」「正気じゃない、何をしたか分かっているのか?」

さらにノーマンが追及するとナンシーは子供の頃の話を始めた。

◆ 地下三階/ナンシーは10歳/カレンは友達

父親が死亡し、ナンシーの母親は住み込みのメイドとなった。ナンシーも一緒。

その家には同じ年ごろのカレンという女の子がいた。ナンシーとカレンは仲良しになった。

しかしカレンの母親はナンシーを差別した。カレンの誕生会には、カレンの友達は呼ばれるが、ナンシーは呼ばれない。

カレンはナンシーに「他の子と同じものをあげる」と言った。

何人もの女の子が出席。ナンシーは外から眺めている。

カレンは部屋を出て、ナンシーにケーキを持ってきた。でもみんなにプレゼントしたプラティナのブローチは残っていない。

カレンは自分のブローチをナンシーに譲ってくれた。ナンシーは大喜び。嬉しくてナンシーは他の使用人に見せた。

カレンの母親が現れてブローチを取り上げられた。他の使用人はナンシーを慰めた。

ナンシーの母親は「我慢しなさい。でも強く願ったら、きつと手に入る」と言った。ナンシーはこの言葉が心に残った。

◆ 地下三階/ナンシーは10歳/カレンのブローチ

翌日、カレンのブローチが消えた。みんな大騒ぎ。

ナンシーが呼び出された。カレンの母親は「一緒に探してちょうだい」と言葉は丁寧だが、明らかにナンシーを責めた。「私は取っていません」。

ナンシーの母親に他の使用人が「お嬢さん(カレン)の服を繕ってちょうだい」と持ってきた。

母親はその服のポケットからブローチを発見した。すぐさまカレンの母親に持っていった。

しかしカレンの母親は話を信用していない。ナンシーの母親は解雇された。

◆ 地下二階/ノーマン・クライド/腕輪を郵送する

ナンシーは話し終えて「今でも殺したいほど憎い」と過去を振り返った。

ノーマンは話を聞いて同情したが「問題は、腕輪をどうするかだ」と腕を組んだ。

「言うとおりにするわ」「二度としないか?」「絶対にしないわ」「差出人の名前を書かずに、送り返す」。

この件は決着がついた。

◆ 地下二階/ノーマン・クライド/ボナーのダイア

ノーマンは画家として成功した。ナンシーと婚約もした。

ボナー家でパーティがあり、二人で出席した。

ノーマンはみんなと話していたが、ナンシーがいないことに気がついた。二階に上がった。ある部屋からナンシーが駆け出してきた。

使用人が廊下に出てきたので、二人は見つからないように階段を下りた。

この後、ボナーの死体が発見され、またボナーの部屋にあったダイアがなくなっていた。

ダイアはボナーの妻が手元になかったので、夫が二階に探しに行ったものである。注、ボナーの妻は車イス。ボナーの妻は「ダイアなんてなければよかった」と悔やんだ。

ノーマンはナンシーに「どうして二階にいた?」「二階でボナーを見たのか?」と追求するとナンシーは「私がダイアを盗んで、ボナーを殺したと思ってたのね?」と言って出ていった。

この件ではデクスターという使用人が捕らえられた。ノーマンはナンシーに「おめでとう」と皮肉の電報を送った。

◆地下一階/ハリー・ブレア/ノーマンが自殺

ノーマンの話を聞いてハリーは話した。

「ナンシーが正しいのに、君(クライド)が疑り深いだけでは?」

「君はナンシーに不都合な話ばかりした。どうも視点が偏りすぎている」。

クライドに薬を処方する「これを飲め」という。

しかしナンシーを呼び出すがつながらない。ノーマンは帰った。

その後ノーマン関連の話が続くが、けっきょくノーマンはハリーの診療所の窓から飛び降りて自殺する。

◆ 地下一階/ハリー・ブレア/イギリス

ハリーとナンシーはイギリスへ転居した。デボンジャー・テラスというところに住居を構えた。戦争(第二次大戦)が始まった。

ウィンダム卿の屋敷でパーティがあった。

帰りに車で送ってもらった。その時に運転手から「ウィンダム夫人のネックレスがなくなった」と聞いた。

帰る列車の中で、少しばかりナンシーを疑っているハリーはタバコの火を借りるついでにナンシーのバッグを調べた。白。

デボンジャー・テラスに戻ってきた。ナンシーはバッグを探したが「カギがない」というのでハリーがカギを出して中へ入った。

ナンシーは中に入ってバッグをさかさまにして中身を開けた。カギが見つかった。ナンシーを疑っていたハリーは自分を恥じた。

◆ 地下一階/ハリー・ブレア/空襲

ハリーは仕事で出かけた。しかし空襲があり、デボンジャー・テラスに戻った。デボンジャー・テラスは焼け落ちた。

ナンシーも出かけていたが、無事に戻ってきた。焼け跡を探した。

ハリーはナンシーのバッグを見つけた。散らばっているバッグの中身を拾ってナンシーに渡した。宝石やネックレスがいろいろ。しかしナンシーは「見つけたのはこれだけ?もっとあるはずよ」。ハリーは愕然とした。

◆ 地下一階/ハリー・ブレア/ハリーの妄想

ハリーが病院のベッドにいる。医者とナンシーがいる。

医師は「彼女(ナンシー)は何も盗んでいない。すべては君の妄想だ」と言った。

ナンシーは「ハリー、あなたが心配よ」と涙ぐんだ。

医者は「ブレア夫人、希望をもって焦らずに治療しましょう」と言った。

その後、ナンシーは姿を消した。

◆ 一階/ジョン・ウィリス/結婚式

ジョンは「こんなバカな話は信じられない。名誉棄損で訴える」と息巻いた。

ナンシーが入ってきた。「ナンシー、彼を知っているか?」「久しぶりね」「無事退院した」「あなたも出席して」。

ハリーは出ていった。「彼が心を病んでいるなんて悲しい」。

いよいよ結婚式が始まった。

ナンシーは二階から会場に下りていく。音楽にステップを合わせて、ゆっくりと下りていく。

下で花婿のジョンが待っている。

ナンシーの心に過去の情景がよぎる、ネックレス、ブローチ、腕輪...。

それでも下りていく。次第にナンシーの顔がこわばってくる。みんなナンシーの異常に気がつく。

階段を下りたところで、ナンシーは倒れこんだ。
 


■ 出演作

ラレイン・デイ
(1937)ステラ・ダラス/Stella Dallas
(1946)危険な女/The Locket
(1944)間違い結婚/Bride by Mistake
(1940)海外特派員/Foreign Correspondent
(1942)窓に映る斧/Fingers at the Window
(1939)アリゾナ・レンジャー:悪人の黒幕は誰か?/Arizona Legion
(1949)浮気相手が訪ねてきて死亡/Without Honor
(1945)ヘレンとハンクの愛の行方/Those Endearing Young Charms
(1945)女性陸軍部隊/Keep Your Powder Dry

ロバート・ミッチャム
(1947)過去を逃れて/Out of the Past
(1947)十字砲火/Crossfire)
(1954)帰らざる河/River of No Return
(1957)眼下の敵/The Enemy Below
(1952)天使の顔/Angel Face
(1962)恐怖の岬/Cape Fear
(1949)仮面の報酬/THE BIG STEAL
ケープ・フィアー/CAPE FEAR(1991)
(1946)危険な女/The Locket
(1951)替え玉殺人事件/HIS KIND OF WOMAN
(1946)底流/Undercurrent
(1949)ママの青春/Holiday Affair
(1954)セラーズ先生、こんにちは/She Couldn't Say No
(1950)ゼロへの逃避行/Where Danger Lives
(1955)街中の拳銃に狙われる男/Man with the Gun
(1955)見知らぬ人でなく/Not as a Stranger
(1960)サンダウナー:オーストラリアで羊を飼って放浪する生活/The Sundowners
(1947)追跡/Pursued