「環境リスク学」 | 本だけ読んで暮らせたら

「環境リスク学」



著者: 中西 準子
タイトル: 環境リスク学―不安の海の羅針盤   日本評論社


 一般的に(というか、私の場合?)、ある事を知ろうとしたとき、できるだけ複数の情報源から情報を仕入れ、その中から取捨選択し、自分の経験や知識と照らし合わせて有益かそうでないか、納得できるかできないかを判断します。少なくとも、私はそうありたいと思っています。
 それら情報源の中で、テレビや新聞による報道はウェートの高いものでした。かつては。
 いつからでしょう、扇動的・感情的なマスコミの報道にうんざりしてきたのは。

 環境ホルモン、ダイオキシン、狂牛病、一時期のマスコミの大騒ぎは何だったのでしょう。今でも報道しているところはあるのでしょうか?(狂牛病については、2月に国内で最初の死亡者が出たため、瞬間的に報道されたかナ。)

 テレビや新聞など、かつては一種の権威のようなものもあった?情報発信源ですが、今では、こういった大マスコミが発するどんなニュースも、そっくりそのまま信用することはなくなりました。
 テレビ局や新聞社が発する情報は、速報性に関してはまだしも、信頼性に関してはタブロイド誌、週刊誌、等と同程度かナと思っています。数多くある情報のうちのひとつでしかありません。

 情報の信頼性はやはり、複数のデータを提示し、異なる2つ以上の観点に立って、落ち着いて冷静に分析されたものには敵いません。

 キチンとした物さえ選べば、本・書籍は、“情報の信頼性”という点で最も確度の高い媒体だと思います。


 能書きが過ぎました。
 最近、私の中で、“信用できる”と強く思った書籍を紹介します。

 この本は、中西準子さんという、本当にまじめで実直な(と、私には感じられる)科学者が、化学的な物質が環境や人に及ぼす影響について、“リスク評価”という手法を用いて判断していくことを提唱している本です。
 いろいろな化学物質の人に対する危険度を順位付けしたり、国やマスコミが発表した事柄に対する冷静な批評などが、淡々と述べられています。この“淡々さ”がイイのです。信用できるのです。

 そして何よりも、冷静に分析・解釈したファクト(事実)を、一般人にも分かる言葉で説明しています。一般人に対する説明責任。科学者として、最も重要なことの1つだと思います。
 科学的な内容に関する真摯な態度はもちろんですが、“説明すること”に対する中西さんのコダワリが垣間見えるようです。

 この本を読んで以来、中西さんが発言される言葉にアンテナを張るようになりました。確か、つい最近もどこかのオピニオン誌に発言されていました。

 最後に、私にとって、特に印象的だった一言を紹介します。

 「都合のいいことを、自分たちで決めてはいけない」

 身に沁みる一言です。


(追 記)
 言い忘れていました。この本、会社の上司から借りて読んだものです。
 めったに他人から本を借りない私が、めずらしく借りた本です。

 これまでは、自分で選んだ本を読むだけでも精一杯で、他人から薦められた本を読んでいる暇などない、と勝手な理屈をつけて、あまり他人から本を借りるということをしたことがありませんでした。
 このブログを書き始めてから、他人の意見(書評、お薦め)にたまにはしたがってみようと思うようになりました。