「オートマタ」　★★★～深いようでイマイチ深くない、もっとテーマ性を

※※※　注意　※※※

　「シネマ報告書」には、映画の内容や核心・結末に触れる、いわゆる“ネタバレ”が多分に含まれております。　これから観ようと思っている方は、本報告書の内容についてご理解のうえ十分注意してお読みください。

「『シネマ報告書2016』の掲載にあたって」

深いようでイマイチ深くない、もっとテーマ性を★★★

【あらすじ】

　太陽風の影響によって砂漠化が進んだ2044年の地球。

　人類は地球の砂漠化を防ぐため、人工知能搭載ロボット“オートマタ”が作り、人間に代わる労働力として巨大防御壁の建設や、機械雲を作っていた。

　オートマタを製造・管理するハイテク企業に務める保険管理員ジャックは、変更不可能とされていた制御機能の改造が施されたオートマタの存在を知り調査を開始する。

　しかし、調査を進めるうち、改造した人物とその隠された陰謀に直面、命を狙われる羽目になる―

【コメント】

　さて、先に観た『エクス・マキナ』をはじめ、現実でも研究開発の進歩が著しい人工知能を題材としたSF作品が製作されている昨今。本作は、『エクス・マキナ』のちょい前に劇場公開されたSFスリラーもので、公開当時ちょっと興味が沸いた作品であります。

　結局、劇場での鑑賞はスルーしたものの、TSUTAYAのレンタルに陳列されていたので、さっそく手に取って鑑賞してみた次第です。

深いようでイマイチ深くない、もっとテーマ性を

　うーん、惜しいなー。オープニングはとても目を惹かれて、こりゃかなり期待できるぞと思ったんですがね。盛り上がるようでイマイチ盛り上がらない、人工知能というテーマ性を感じさせる哲学的深さがあるようでない。全体的にSFやアクションに頼らず淡々と物語を進めていくことで、ある種の不気味な感じが漂う雰囲気はとても良かっただけに、非常にもったいない作品だと思いましたね。

　本作で登場する人工知能は見るからにロボットそのまんまで、それが逆に無機質な空気を醸し出していて不気味。あえて、ロボットロボットした人工知能を登場させたのは悪くないアイデアだったと思う。ただ、結局後半は観たことあるようなお決まりの展開になっちゃっていて非常に残念。

　もっと人工知能の是非や人間との共存について深掘りしたテーマ性を持たせれば、もっともっと良い映画になったと思いますね。

坊主（ハゲ？）でもカッコいいアントニオ・バンデラス

　本作に主演しているご存じアントニオ・バンデラス。本作では坊主にしたのか、はたまたハゲ隠しなのかは定かではないですが、どっちにしろ相変わらずマッチョでワイルド、セクシーでカッコいいな～と感じたのは間違いないです。

　最近はあまりパッとしない作品が続いているバンデラスですが、本作では製作まで関わっている入れ込みようで、よほど本作の魅力に惹かれたんでしょう。本作ではまさに出ずっぱりで、無粋でワイルドなバンデラスの魅力は十分に堪能できることでしょう。

人工知能と人間は共存できるか？

　そんなわけで、設定は良かったものの、ストーリーの運びはもっと練ってほしかったかなという部分、そしてなんといっても「人工知能と人間は共存できるか？」という、本作にピッタリのテーマをもっともっと深掘りしてほしかったですね。

　本作では、砂漠化の阻止に失敗したロボットを人間が破壊したり、「俺はロボットが大嫌いなんだ！」とガンガンとロボットを射殺する人間が多く登場しますが、そういった人間と、徐々に人工知能に心を開いていった主人公を対比させて、もっと深く観客の心に訴えることが可能だったはず。

　これからも人工知能ものはどんどん作られていくでしょうが、もっとこれからの将来への警鐘や必要性、共存といったテーマを軸に考えさせられる作品を作っていってほしいです。