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奈良行き当日を迎えた俺たち。




当初の予定は深夜出発だったが、ヒデ君が運転してくれることになり、ヒデ君の仕事が終了してすぐの夕方の出発となった。




夕方出発にもかかわらず一番寝坊する危険性がある俺の団地集合という事になり、集合時間の三十分も早く、テルとヒデ君カップル以外は全員集まった。



色々あったが、皆遠出が楽しみでしょうがないのだ。




時間まであと少しという時に玄関が開いた。



みゆきだった。



みゆきは「これ」とだけ言って、大きな包みを俺に渡した。



「何これ」



「おにぎり」



「なんでだよ。こんなに食えるわけねーだろ」



「…達也のじゃないよ。皆にあげて」



みゆきは貧乏人の俺たちが遠出すると聞いて、心配して大量のおにぎりを握ってきてくれたのだった。




「サンキューみゆきちゃん!」




後ろからワン公が大きな声で寄ってきて、包みを受け取るとさっさと中に持っていった。




「それじゃあ…気をつけて行って来て」



みゆきはそう言い残して帰って言った。




俺は絵美に会いに行くというほんの少しの後ろめたさと、まさか来るとは思っていなかったので殆ど会話出来なかった。




舌打ちをして部屋に戻ると、またすぐにドアが開いた。




そこには異様な格好のテルがいた。



「何お前」



テルの異様な格好にそれしか言葉が出なかった。




「テル…なんだよその格好…」



玄関にやってきた森木も、テルを見て呆れて言った。



集合時間に現れたテルは上から下まで登山ルックだった。



ゴツゴツした登山靴に、いかにも登山家といった感じのチェックの長袖シャツ。



パンパンに膨れたリュックを背負っている。



「何ってお前ら…そんな格好で山小屋で過ごせると思ってんの?山を舐めるなよお前ら」



テルは自信満々で言ったのだった。



そして何食わぬ顔で家の中に入ってきた。



するとそこでもテルは、普段着のヒロシやルパンを見て言ったのだった。



「お前ら…山を舐めるなよ」



するとこらえきれずにヒロシが吹き出した。



その様子を見てテルは悟ったのだった。



またヒロシにハメられたのだと。



泊まるところがぎりぎりまで決まっていなかった俺たちだが、ヒデ君の好意で民宿に泊まれることになった。



しかしテルには、ヒロシによって嘘が伝えられていたのだった。




山小屋に泊まることになったと…。




「似合ってるよテル」



ヒロシの言葉に肩が震えだすテル。



「クォラ…ヒロシぃ…」



「だましてねーよ。まじで山小屋に泊まるんだからさ」



ヒロシの言う通り、確かに嘘ではないと言えば嘘ではない。



なんと、俺たちが泊まる民宿は「真心の民宿、山小屋」という名前だった。



ヒロシは山小屋に泊まるとだけ伝えたのだろう。



ヒロシはテルの強烈な頭突きを食らってうずくまった。



それから間もなくして、団地の下から車を吹かす音が聞こえてきた。



ヒデ君が来たようだ。


井口達也



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是非読んでくれい★


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