前回、前々回の記事でご紹介した通り、SE構法は、木造軸組工法の一種なのに重量鉄骨造に近い考え方、仕組みを持ち、プランやデザインに高い自由度をもつことができるという特徴があります。
無印良品の家でも採用されているこのSE構法を、私たちの家でも使わせていただきました。
木造軸組み工法でも在来工法や、パネル系の構造では実現できない家をつくることができたのは、SE構法のおかげだったと思っています。
 
が、私たちはSE構法の回し者でもなんでもないので、フラットな目であらためて「SE構法って、誰にでもおすすめできる万能な構法なの?」と問うてみると、決してそんなことはない、という結論に至ります。
今回は、SE構法の弱点、デメリットのようなものをご紹介していきたいと思います
 
 
SE構法の弱点
◆柱・梁が太く、狭小住宅には不向き
 
壁が直交せず、斜めになっているような異形のプランにも対応しやすいSE構法は、敷地を最大限有効に活用したいという点に限って言えば、狭小住宅に向いている、とも言えなくはありません。
が、実際に狭小住宅に適用しようとすると、実はうまくいかないケースも多々出てきます。
 
在来木造の現場を見た後でSE構法の現場を見ると、構造体が実に骨太で「これなら地震にも強そうだ」と思わされました。
 
在来木造では10.5cm角の柱を使うことが多いですが、SE構法の場合は12cm角が基本。
梁も、在来木造では15cm~28cm程度の高さの梁をよく使用しますが、SE構法の場合は20cm以上の梁がほとんど。我が家の一番大きな梁は、なんと45cmもの背の高さがありました。
 
地震に強いのは良いことですが、しかし、柱が太いと、内側の空間は少し狭くなります。
在来木造で、91cmモジュールで設計されている住宅では、廊下の幅は78cm程度確保できますが、SE構法の場合は76.5cm程度まで狭くなります。
 
たかが1.5cmの差ですので、この点は我慢のしようもありますが、高さのほうはそうも言っていられません。都市部の建物には、高さ制限がかかってくることが多いからです。
在来木造なら、梁が小さいことを生かして全体の高さを抑えて高さ制限をかわせる場合も、SE構法の場合には梁成の大きさが災いして高さ制限に引っかかってしまう、というケースがありました。
そんなとき、以前建築士夫が勤務していた「狭小住宅が得意」と自称していた工務店さんでは は、天井高さをギリギリまで低くしたうえに、1階の床レベルを基礎の深さ分、なんとか高さ制限をクリアする、というようなことをよくやっていました。
床レベルは下げますが、基礎の高さは下げられません(建物の寿命に影響するので)ので、1階の壁を室内から見ると、床近くには断熱も何も入っていない基礎が露出していることになり、断熱性能を大いに棄損することになってしまうのですが・・・そこまでしてSE構法にこだわる必要があったんでしょうか?
 
在来工法で高さ制限をクリアしつつ、耐震等級3を目指してしっかり耐震壁を取りながら設計をすれば、在来木造でも「地震に強い家」をつくることは十分に可能なんですよね。
 
どんな建物でもSE構法がよい、のではなくて、SE構法を生かせない場合にはより適した構造、工法を選択する、という判断も必要であろうと思います。
 
実は、私たちの家の床下収納の床レベルを、基礎部分まで下げるというアイデアは、この時の経験から思いついたものでした。床下収納なので、基礎部分の断熱が室内側に飛び出していてもまったく問題ありませんが、これが居室だと、そうはいかないですよね。
 
 SE構法の弱点
◆とにかく高い(値段が
 
SE構法のもう一つのデメリットは、価格が高いことにあります。
工務店さんの価格設定にもよりますが、在来木造と比べて、坪当たり10万円から20万円のアップになる、と思います。
 
これとは別に、しっかりした構造計算をしていただく代償として構造設計料が30~40万円はかかりますので、30坪、40坪の住宅なら、けっこうなクルマが買えてしまうぐらいの増額要因になる計算です。
 
「SE構法でなければつくれない空間」「SE構法の良さを生かした家」を建てるなら、そういうコストをかける価値もあるだろうと思います。
逆に言えば、「木造の在来工法で建てられる家なら、わざわざ高いお金をかけてSE構法を使う必要はない」と。
 
従来の木造では作りにくい大きく開放的な空間を作りたい、とか、思い切った大胆な吹き抜けを作りたい、とか、駐車場の上に建物をオーバーハングさせて敷地を有効活用したい、とか、
「それを木造でやろうとしたら、SE構法を使わないと無理だよね」
という家を建てたいと思ってから、SE構法の採用を検討しても遅くはありません。
 
私たちは、「SE構法」はとても魅力的で信頼できる構造・構法だと思っていますし、皆さんにもぜひお勧めしたいと思っています。
「SE構法でなければ作れない家」は、気持ちの良い家になる可能性が高いだろうし、設計者のアイデアが詰まった楽しい家になる可能性も高いだろうな、とは思います。
 
 

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