本論文は、女性のBMIは異常胚とは無関係であることを示しています。
Fertil Steril 2022; 117: 783(米国)doi: 10.1016/j.fertnstert.2021.12.031
Fertil Steril 2022; 117: 790(米国)コメント doi: 10.1016/j.fertnstert.2022.01.035
要約:2015〜2020年に採卵した453周期、1717個の胚盤胞の染色体を分析し、女性のBMIとの関連を後方視的に検討しました。男性由来あるいは女性由来の染色体異常についてはSNP法を用いて分析しました。交絡因子補正前の結果は下記の通り。
BMI 〜18.4 18.5〜24.9 25.0〜29.9 30〜 P値
周期 33 745 291 174 〜
胚盤胞数 137 2968 1040 554 〜
女性年齢 35.9 36.1 37.4 37.8 <0.01
AMH 4.0 3.1 2.7 2.8 0.017
最大E2値 2744 2593 2155 1988 <0.01
採卵数 17.3 16.3 14.9 14.7 0.045
胚盤胞数 4.2 4.0 3.6 3.2 <0.01
異常胚率 46.7% 48.7% 53.3% 56.9% <0.01
女性由来異常胚率 32.3% 37.6% 44.5% 51.5% <0.01
しかし、交絡因子補正後、女性BMIによる異常胚率及び女性由来異常胚率の有意差は全て消失しました。
解説:最新の論文の論調は全て、女性のBMIは卵子(受精卵)に影響するのではなく、着床(子宮)に影響するものとされています。本論文は、女性由来の染色体異常について検討した初めての報告であり、女性のBMIは女性由来異常胚とは無関係であることを示しています。
コメントでは、肥満女性にいつ減量を指示すべきかは(女性の意思を尊重すると)難しい選択であるとしています(従来は痩せてから採卵すべき、最近は移植前に痩せるのが良い)。
BMIについては、下記の記事を参照してください。
2021.12.14「BMIは男女とも20〜25が良い!?」
2021.12.5「BMI増加で胚盤胞発生動態は?」
2021.11.25「☆肥満と妊娠:ASRMの見解」
2021.11.21「☆BMI高値で不育症リスクが増加!?」
2021.11.12「男性の肥満と糖尿病の影響は?」
2021.9.28「BMI高値は受精卵の染色体異常とは無関係」
2021.7.21「☆女性の肥満で流産率が増加」
2021.5.5「女性のBMIは卵子に影響?着床に影響?」
2021.1.25「減量手術によるART成績」
2020.12.27「低エネルギー食の効果は?」
2020.12.9「☆夫婦のBMIと妊娠しやすさ」
2020.6.23「女性の肥満は凍結胚移植には影響しない」
2020.4.25「ART治療における体重減少の影響は?」
2019.9.4「太ると卵子が悪くなる理由」
2018.11.26「☆アジア人の肥満と妊娠までの期間」
2018.10.4「☆体外受精を行うなら、肥満女性は痩せる必要はない?」
2017.11.26「BMIは凍結融解胚移植の妊娠率に影響するか?」
2017.9.13「肥満女性におけるライフスタイル改善の効果 その4:メタアナリシス」メタアナリシス
2017.7.26「肥満女性におけるライフスタイル改善の効果 その3:費用対効果」前方視的検討
2016.12.26「妊娠前のBMIが妊娠率や妊娠予後に及ぼす影響」
2016.12.17「肥満女性におけるライフスタイル改善の効果 その2」前方視的検討
2016.12.14「☆肥満女性におけるライフスタイル改善の効果 その1」前方視的検討
2016.6.9「肥満と子宮内膜機能低下の関係」
2016.4.10「太ると妊娠率が低下します」
2015.11.20「☆肥満と不妊:米国生殖医学会の公式見解」
2015.9.7「両親の肥満が胚へ及ぼす影響」
2014.12.24「太ると精子が悪くなる」
2014.1.3「☆太ると着床率も低下する?」
2013.11.21「☆痩せると卵子の質が良くなる!?」
2013.6.28「太るとAMHが低下する?」
2013.6.7「ARTの妊娠率に与える男女のBMIの影響」
2012.12.5「男性のBMIも妊娠に影響」
2012.12.3「BMI 35以上は異常卵が増加」
2012.10.30「BMIと妊娠」
下記の記事を参照してください。
2022.3.17「☆ドナー卵子での出産に影響する因子」
2021.9.23「ドナー卵子での男性年齢の影響」
2021.4.29「ドナー卵子を用いて精子の影響を検討」
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