☆肥満と妊娠:ASRMの見解 | 松林 秀彦 (生殖医療専門医)のブログ

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生殖医療に関する正しい知識を提供します。主に英語の論文をわかりやすく日本語で紹介します。

本論文は、肥満と妊娠に関する、米国生殖医学会(ASRM)の公式見解です。2015.11.20「☆肥満と不妊:米国生殖医学会の公式見解」でご紹介した記事の最新版になります。

 

Fertil Steril 2021; 116: 1266(ASRM)doi: 10.1016/j.fertnstert.2021.08.018

要約:

1 肥満は不妊症のリスク因子ですが、多くの肥満女性および肥満男性は妊娠可能です。
2 肥満女性は、卵巣機能不全、卵巣刺激への反応不良、卵子の質が低下、子宮内膜の機能低下、出産率低下をもたらします。
3 肥満女性は、妊娠に伴う合併症の頻度が母子ともに増加します。
4 肥満男性は、生殖機能が低下する可能性があります。
5 ライフスタイルの改善薬物療法が減量に有効です。
6 Bariatric surgery = 肥満症手術(減量手術)は重要な選択肢ですが、術後1年は妊娠しない期間を設けるべきです。

7 肥満を伴う無排卵女性では、減量により自然妊娠の可能性が増加します。

8 肥満を伴う無排卵女性では、減量により排卵誘発剤による排卵率は増加しますが、出産率の改善には至りません。

9 肥満を伴い排卵のある女性では、減量による出産率の改善はありません。

10 妊娠に伴う母子合併症について、減量による改善効果は不明です。

11 現在までのデータからは、妊娠治療を推奨するBMI値を決めることはできません。

12 肥満女性では、採卵前に肥満の状態を評価し、安全に採卵するための方策を立てるべきです。

解説:日本人に肥満(BMI>30)の方は多くありません。せいぜいオーバーウエイト(BMI 25~30)止まりです。したがって、本論文の見解には実感も湧かないかもしれません。なお、日本では年間800件程度ですが、外国では年間数十万件の減量手術が実施されています。BMIによる分類は、東アジア人(日本、中国、韓国)でのデータが望まれます。

 

下記の記事を参照してください。
2013.7.9「☆減量手術をするとホルモン値が改善します」