☆痩せると卵子の質が良くなる!? | 松林 秀彦 (生殖医療専門医)のブログ

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生殖医療に関する正しい知識を提供します。主に英語の論文をわかりやすく日本語で紹介します。

「痩せると卵子の質が良くなる」ってホントですか?
BMIと妊娠についてこれまで、多くの記事を掲載してきました。
2012.10.25「妊娠と体重の関係」
2012.10.30「BMIと妊娠」
2012.12.3「BMI 35以上は異常卵が増加」
2013.1.21「代謝が悪いと卵と胚の質が低下する」
2013.4.29「BMIが高い方のダイエット」
2013.6.7「☆ARTの妊娠率に与える男女のBMIの影響」
2013.6.28「☆太るとAMHが低下する?」
「そんなの大したことじゃないのでは?」と思われている方も多いと思いますが、上記の論文はいずれも、太る(BMIが高い)と卵子の質が悪くなることを示しています。それでは、子宮内の環境はどうなのか、ドナー卵子を用いて、レシピエントのBMIと妊娠率の関係を調べたのが、今回の論文です。本論文は、ドナー卵子の妊娠では、レシピエントのBMIは妊娠率、着床率、流産率、生産率に無関係であることを示しています。ということは、太るといけないのは、受け入れ側(子宮)ではなく、提供側(卵子)ということになります。

Hum Reprod 2013, 28: 2720(米国)
要約:2011年までに発表された論文から5論文4758名のドナー卵子による妊娠をメタアナリシスにより解析しました。ドナー卵子提供によるレシピエントのBMI>=30と<30で、妊娠率、着床率、流産率、生産率に有意差を認めませんでした。

解説:太った方では、妊娠率低下、流産率増加、妊娠中毒症(妊娠高血圧症候群)増加、妊娠糖尿病増加、死産増加、先天異常増加が多くなります。これは、自然妊娠でも体外受精による妊娠でも同じですが、果たして卵子の質の低下なのか子宮内環境の悪化なのか明らかではありませんでした。本論文は、ドナー卵子のデータを解析した結果、少なくともレシピエントのBMIは悪影響を与えていないことを示しています。つまり、母体が太っていることは悪化要因ではありません。そうなると、卵子の要因ということになります。ドナーのBMIに関する検討はこれまで報告されていませんので、今後の検討を待たねばなりませんが、卵子の質の低下は卵子を育てる際の代謝に関係している可能性があります。

「卵子が悪いから」と言われた方でBMIが25以上の方、ダイエットに是非取り組んでみてください。
ダイエットについては、下記の記事も参考にしてください。
2012.10.28「私のダイエット作戦 その1」
2012.10.31「私のダイエット作戦 その2」
2012.11.03「私のダイエット作戦 その3」
2012.11.06「私のダイエット作戦 その4」
2012.11.09「私のダイエット作戦 その5」
2012.11.12「私のダイエット作戦 番外編」
2013.01.04「私のダイエット作戦 番外編:ミトコンドリアを元気に」