BMIと妊娠 | 松林 秀彦 (生殖医療専門医)のブログ

松林 秀彦 (生殖医療専門医)のブログ

生殖医療に関する正しい知識を提供します。主に英語の論文をわかりやすく日本語で紹介します。

今回ご紹介する論文は今年の7月に米国生殖医学会雑誌に掲載されたBMIと妊娠に関する論文2編です。BMIが高い女性は体外受精の妊娠率や生産率が低下することを示しています。興味深いのは1ヶ月のダイエットでは妊娠率増加にはつながらないということです。

Fertil Steril 2012; 98: 102
要約:4609名の初回体外受精の女性を後方視的に検討しました。様々な絡落因子を除外したところ、BMIが30以上の方で着床率、妊娠率、生産率が有意に低下していました。BMIが30未満の方と比較すると、生産率はBMIが30~35で0.63倍、BMIが35~40で0.39倍、BMIが40以上で0.32倍になっていました。

Fertil Steril 2012; 98: 109
要約:170名(のべ233周期)の女性を前方視的に検討しました。体外受精の成績とBMIや短期間の体重増減との関連を調べました。BMIが20~22.4の方では生産率が42%でしたが、BMIが25以上の方では生産率が23%と有意に低下していました。1周期前の体重と比較して、体重が増加した方と体重変化のない方に比べ、体重が減少した方は成熟卵の頻度が高くなりましたが(81~89% vs. 91% )、妊娠率や生産率は変わりませんでした。

解説:米国生殖医学会雑誌にBMIと妊娠に関する論文が同時に2編掲載されたことは、この領域における体重管理の重要性を認識して欲しいという編集者の気持ちの現れと考えます。前回(2012.10.25)ご紹介した論文は、2010年までの論文をまとめたものですので、今回の2編はその後に出たものです。そのような経緯もあって、ダイエットについてのテーマを取り上げています。