妊娠前のBMIが妊娠率や妊娠予後に及ぼす影響 | 松林 秀彦 (生殖医療専門医)のブログ

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本論文は、妊娠前のBMIが妊娠率および妊娠予後に及ぼす影響を明らかにした国家規模の研究です。

 

Fertil Steril 2016; 106: 1742(米国)

要約:2008〜2013年に米国で実施された体外受精の国家データ(NASS)を用いて、妊娠前のBMIと妊娠成績および妊娠予後について後方視的に検討しました。自己卵の新鮮胚移植402,742件に限定して検討したところ、妊娠は180,855件(44.9%)ありました(ただし80%は2個以上の移植)。BMI正常(18.5〜24.9)と比較し、有意差が認められた項目は下記の通り。

 

        BMI<18.5  BMI 18.5〜24.9  25<BMI

臨床妊娠率    0.97倍     1.00     0.94倍

生産率      0.95倍     1.00     0.87倍

単胎の低体重児率 1.39倍     1.00     1.26倍

単胎の早産率   1.12倍     1.00     1.42倍

流産率       〜      1.00     1.23倍

 

解説:肥満と妊娠率低下や流産率増加の関連はよく知られていますが、痩せと妊娠率や妊娠予後の関係については小規模な報告のみであり明らかにされていませんでした。本論文は国家規模の調査により、痩せている方も妊娠率と出産率の低下や低体重児や早産の増加があることを示しています。妊娠前の体重を正常に保つ(BMI 18.5〜24.9)努力が必要と言えるでしょう。日本人は痩せている方が多いですので、このような痩せに関するデータは貴重です。