2月8日(土曜日)、ブロンプトンオープンライド『The Tokyo Toilet Cycling Tour』に参加してきました。
以前、渋谷に壁が透明なトイレができたという話をニュースで耳にした。今回のライド告知で、「渋谷の透明トイレ」が『THE TOKYO TOILET』という東京都渋谷区内に公共トイレを設置するプロジェクト(「TTTプロジェクト」とも呼ばれる)の一部であったことをはじめて知った。透明トイレを含めて17か所もあったのか。これは面白そうだ。参加しなくては。
THE TOKYO TOILET
見たことのないような 公共トイレが渋谷区に
トイレは日本が世界に誇る「おもてなし」文化の象徴。 渋谷区の17カ所で、順次公共トイレが生まれ変わっていきます。 それぞれのトイレには、 世界で活躍する16人のクリエイターに参画いただきました。 個性豊かなトイレをぜひご覧ください。
~~~~~~
朝8時に神宮橋(原宿)に集合、またまたYご夫妻のご案内で、今回は渋谷区の裏路地を絡めて世界に誇る区内のデザイナーズ公衆トイレ17カ所をブロンプトンたちでめぐります。表参道、広尾、恵比寿、代官山、松濤、代々木八幡と高級なエリアをめぐったのち、笹塚、幡ヶ谷、そして新宿区との境目の初台をかすめて、再び原宿に戻ってきます。
特筆すべきは、建築関係のお仕事をされているY様がライドリーダーの一人としてご一緒してくださり、解説をして下さるというぜいたくなライドだったことです。
[走行ルート]
距離 22.47 km
平均速度 11.4 km/h
タイム 2:03:01
総上昇量 156 m
使用機材 M4L-X (46T、11-13-17-22T)
低い高度 ←青緑橙赤→ 高い高度
それでは17か所のトイレを巡る旅にでかけましょう!
1.神宮通公園トイレ 安藤忠雄 AMAYADORI
最初は安藤忠雄さんのトイレ。シルクハットを逆さにしたような円形で庇をつけたデザイン。名付けて「あまやどり」って、まんまですね。オーソドックスで大きな驚きはないが、こういうのが、誰からも文句をつけられない、長持ちするデザインなんでしょう。
2.広尾東公園トイレ 後智仁 Monumentum
シンプルで超おとなしいデザインだが、反対側の壁一面にフルカラーLEDを縦16x横48=768個のグリッドとして設置していて、現場設置された制御⽤サーバーに組み込んであるSIMをLTE通信で接続、クラウドサーバーからのコントロールで79億通りのパターンを表示できるという。見えないところに凝っていて、ただのトイレではありませんよ。広尾ガーデンヒルズの中といってもよい場所にあるので、外形的に攻めるのが難しかったということもあるかもしれないが、アートとしてもトイレとしても近所のハイソな方々からも文句のつけられようのない素敵さです。私もこの場所にはこれが良いと思います。
3.恵比寿東公園トイレ 槇文彦 Squid Toilet
朝倉家からの依頼で代官山ヒルサイドテラスをデザインしたあの槇文彦さんが、こんな小さくてかわいい作品を作っていた!「タコ公園のイカトイレ」です。恵比寿駅東口にほど近い目黒川沿いの、タコの遊具がある小さな公園だ。このタコとセットのイカトイレだ。屋根がイカのエンペラに見えます。子供の頃、テレビの正義のヒーロー番組にこんなイカの怪人/怪獣がでてきたような気がする。
尚、メタボリズム建築の代表的な存在の一人でもあった槇さんだが、昨年6月ご逝去されました。ご冥福をお祈りします。
4.東三丁目公衆トイレ 田村奈穂 TRIANGLE
都市の片隅という言葉がピッタリの、線路脇のきわめて狭い三角形の土地 という制約を逆手にとって建てられたトイレ「TRIANGLE」だ。作者のメッセージに『造形のインスピレーションは、国際都市渋谷にやってくるビジターへのもてなしの気持ちをこめて、また、利用する人々を包み込む安全な場所にしたいという願いを込めて、日本の贈り物文化のシンボルである折形から得ました。』とある。
フツーの三角形ではない。無茶苦茶とんがった鋭角三角形である。
写真出所:THE TOKYO TOILET公式
三角形は三角形で攻めるしかないということでしょう。
写真出所:THE TOKYO TOILET公式
デザインに込められている「社会に属するすべての人たちが、安全に、ハッピーに生活を営める社会に、」という作者の強いメッセージに共感を覚えましたが、それ以上に、この制約条件でこのような素晴らしいパブリックアートとしての公衆トイレを作られたその才能にも敬意を表したいと思います。
5.恵比寿駅西口公衆トイレ 佐藤可士和 WHITE
恵比寿の駅前交番横のトイレ。Life with Bicycle代官山の帰りなどで、しょっちゅう横を通り過ぎていたが、トイレだとは全く気付かなかった。『入りやすく、使いやすく一歩引いた清潔な佇まい。恵比寿駅を利用する人々の気持ちが、少し明るく、清々しくなるように。トイレとして「当たり前な配慮」のひとつひとつに向き合ってデザインした「真っ白なトイレ」です。』とあり、強い共感を覚える。工業デザイナーとしての本領発揮というところでしょうか。
6.恵比寿公園トイレ 片山正通ワンダーウォール Modern Kawaya
美しい木目を入れたコンクリート壁が特徴的。このコンクリート壁は、杉板を型枠にしたコンクリート打ち放し仕上げだ。その15枚の壁をランダムに並べながらも、それぞれの壁が支えあって横強度を出すという複雑なつくりとなっている。
壁と壁の間が男性用/女性用/ユニバーサル・トイレの3つの空間への動線となっていて、また、内部はこのように木目コンクリート壁を活かした高級感のあるしつらえとなっている。
~~~~~
次に向かうのは松濤にある隈研吾さんのトイレ。玉川通り(246)をわたって裏渋を通って、円山町。
このあたり(神泉・円山町)は飲み屋街・ホテル街だが、昔、温泉が出たことから「神泉」らしい。そのまた昔「弘法湯」と呼ばれた共同浴場があり、これはその弘法湯跡に立つ石碑。明治に入って共同浴場の周辺に料理旅館「神泉館」をはじめとした料理屋や置屋ができて神泉町および隣接の円山町は花街として栄えるようになったということだ。
神泉のトンネルとトンネルの間にある井の頭線の踏切を超えます。神泉町の飲み屋街を抜けて坂をのぼると、突然、松濤の高級住宅地だ。
~~~~~~
7.鍋島松濤公園トイレ 隈研吾 森のコミチ
作者メッセージには『緑豊かな松濤公園に、集落のような、トイレの村をデザインした。ランダムな角度の耳付きの杉板ルーバーに覆われた5つの小屋は「森のコミチ」で結ばれて、森の中に消えていく。』『ポストコロナの時代にふさわしい、公園に開かれた風通しの良い、通り抜けのできる「公衆トイレの村」ができあがった。』とある。
元々、大名屋敷(鍋島藩)があった高低差のある公園に「木のトイレ村」がとてもマッチしている。さすが森のクマさん。
アートのトイレといっても、機能面はTOTOの監修がきっちり入っているようで、非常にしっかりしている。見掛け倒しではなくて、いずれも「使える」トイレなのである。スゴイ。
(後編に続く。)
関連記事: