愛着障害
愛着障害というものをご存じでしょうか?
簡単に言うと、父母などの養育者との愛着が何らかの理由で形成されず、子供の情緒や対人関係に問題が生じることを言います。
これに関して最近興味深い本を読みましたので、ご紹介します。大人向けです。
死に至る病〜あなたを蝕む愛着障害の脅威
筆者は京大医学部を卒業後、京都医療少年院等で問題を抱える少年と向き合う経験もある精神科医の先生です。
愛着不安定と数学不安
全編に渡って興味深いのですが、中学受験との関係で特に興味深いのは以下です。
以下引用します(太字は私がつけています)。
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「数学不安」という専門用語がある。数学ができるかどうかには、数量処理や作動記憶と行った認知的能力のほかに、問題を解く際の不安が関わっているという。
(中略)
最近の研究で、この数学不安が、愛着安定性と関係していることが明らかとなった。幼い頃の愛着が不安定だと、数学不安が強まる傾向がみられたのだ。この傾向は、性別や年齢、IQに関係なく認められた。
(中略)
愛着の安定性が数学の成績に関与する割合は、およそ二割だという。しかし、二割違えば、試験の合否も、その後の人生も大きく変わることになる。
親が子供に勉強を教えるときには、この事実を肝に銘じるべきだろう。問題を間違えたからといって、叱ったり、貶したりした場合、愛着が受けるダメージによるマイナスは、教えることで得られる学力のプラスを帳消しにしかねないのだ。
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100%これが正しいとは言わないまでも、一定の研究に裏付けられているので、ある程度信憑性の高い話です。
子供に勉強を教える時に激高したり、論理的に詰めすぎたりして、子供との関係が悪化し愛着障害が発生すると、成績も下がるということになります。
この一節に続く部分では、両親とも多忙な医者のある娘さんが、医学部を目指して幼い頃から厳しい勉強を強いられ、また両親とのコミュニケーションも枯渇した状態で精神に変調を来たし、自殺未遂を繰り返したという実例の記述が続きます。愛着障害が死に至る病と言われる由縁です。
教育虐待と愛着障害
本書ではさらに、教育虐待による愛着障害についてかなりページを割いて論じられています。
教育虐待については本ブログでも最近いくつか記事を挙げていますが、本当に百害あって一利なしだと思います。そのことが本書に記述されている研究によっても明らかになっているのだと感じました。
『隠れ教育虐待』に注意 | 2022中学受験終了 -A stitch in time saves nine- (ameblo.jp)
安定した愛着のため必要なもの
これ以外にも本書は愛着障害が原因となると思われる多様な症状について述べられています。多少専門的なところもありますが、一般の読者でも十分読めるものです。
ではこの愛着障害を発生させないために必要なものはなにか?
それは「その子をありのままに肯定し、安全基地を提供する」ということです。
これによって愛着の安定性が増し、愛着障害が発生するリスクは抑えられることになる、ということです。
これはまあ専門家に言われずとも、皆さん当たり前に思っていることだと思います。しかし、完璧主義の親などは、子供に理想を求めすぎ、安全基地が提供できなくなってしまうパターンがあると筆者は言います。
印象に残る記述は以下です。
(以下引用します。太字は私です)
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自分が「良い子」のときは、「良いお母さん」だが、自分が悪い子になると、「悪いお母さん」になって、愛してくれないということである。愛してもらいたければ、「良い子」でいないといけないという制約を抱えることになる。これは、心から安心した関係というよりも、何かの拍子に拒否や攻撃に豹変しかねない危うさを伴った関係である。これこそが両価型と呼ばれる不安定な愛着の形にほかならない。
(中略)
その子は、将来、パートナーとなり、親となったとき、「良いパートナー」「良い親」でいるときと、「悪いパートナー」「悪い親」になるときの二つの顔が、両極端に表れやすくなる。とても優しく、理解のあるパートナーや親が、何かの拍子に豹変して、鬼のように怒り狂い、攻撃的になるのだ。
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中学受験をされている保護者の皆さんは、ちょっとギクりとされた方もいらっしゃるのではないかと思います。私も、息子の中学受験は終わっていますが、当時息子に安全基地をきちんと提供できていたか、ちょっと不安になるところは多少あったりします。
もっと早くにこの本を読んでおいたら、親としてもっと適切な中学受験の伴走ができたのかも知れないなあ、などと思いました。
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