半世紀越えてなおシリーズが続く理由

1964年 監督/ ガイ・ハミルトン

007シリーズの第3作。1962年に始まったこのシリーズが、57年もの長きに渡り映画界のトップに君臨し続けているのは、1964年のこの時期、このタイミングで『ゴールドフィンガー』が放たれたからであると個人的に考えています。
第1作『ドクター・ノオ』第2作『ロシアより愛をこめて』が大ヒットし、早くも軌道に乗ったシリーズはたちまち多くの男性ファンを生み出しました!しかし、007シリーズの魅力を更に押し拡げる為には、男性観客だけでなく、もっと幅広い客層(女性や子供ら)を取り込んでいかねばならないと製作陣は考えたのです(推測です)
その為には、バイオレンス色を抑えユーモア色を濃くし、秘密兵器や華やかな美術で画面を彩り、これまでのハラハラドキドキに"ワクワク"をてんこ盛りにした感じにすべきと判断したのです(推測です)
結果『ゴールドフィンガー』は男女問わず、子どもから大人、お年寄りまで、家族が一緒に楽しめる第一級の娯楽作品として大成功を収め、世界中に007ブームをもたらしたのです!(事実です)。『ドクター・ノオ』『ロシアより愛をこめて』で、アクション映画のトップに躍り出た007シリーズは、この『ゴールドフィンガー』でアクション映画だけの枠に収まりきらないエンターテイメント映画界の頂点を極めたのです!そして、その最たる立役者はガイ・ハミルトン監督に違いないと(個人的に)確信してます!
守るべきは守り、変えるべきは変える。その変革、革新を見事に遂げた『ゴールドフィンガー』は、シリーズにおいてまさにターニングポイントとなった作品なのです!


【この映画の好きなとこ】

◾︎オープニングタイトル
シャーリー・バッシーが歌い、ロバート・ブラウンジョンが撮りあげた極上のタイトルをご覧ください!007と言ったらこのイメージじゃないですか?
インパクトはシリーズいち!!

◾︎ひとつのパジャマ
ジルがトップスを、ボンドがボトムスを履くオシャレでラブラブなシチュエーション。

◾︎不吉な影
陽気な作風にも死の影は忍び寄って来ます。このカット最高じゃないですか!

◾︎ボン・ボア増し?
作戦会議に呼ばれ、大佐からブランデーを振る舞われるもボン・ボワが多すぎるブレンドが気に入らないボンド。その違いがわからないMとかコミカルです!
んー、わかんない…

◾︎ゴールドフィンガー(ゲルト・フレーベ)
大金持ちの癖にイカサマギャンブルが大好き。ボンドにイカサマの裏をかかれ、子供のように悔しがるシーンがツボ。
くやしいね!

◾︎オッドジョブ (ハロルド坂田)
ゴールドフィンガーの忠実な用心棒。ボンドを車ごと仕留め、その様を鏡ごしに映しご満悦なショットが最高。
猟の記念写真的なね
そのユーモアはジョーズに引継がれる
「レディの前では帽子を脱ぐもんだぞ」と以前ボンドに注意されたオッドジョブは、ボンドを牢に案内する際、皮肉をこめて教えられたマナーを実演披露

◾︎ゴールドフィンガーの演説
"人間はエベレストに登り、深海を極め、月にロケットを打ち上げ数々の奇跡を成し遂げているのに、犯罪の分野だけが立ち遅れている!"
情熱的!!カコイイ!!


シリーズにもたらした伝統

◾︎アストンマーティン
秘密兵器搭載の超高級スポーツカー。アストンマーティンはボンドの公用車として本作含め11作品に、秘密兵器が搭載されたボンドカー(アストンマーティン以外含む)は、9作品に登場。

◾︎Qのキャラクター
支給備品を無傷で返してくれないボンドに手を焼く秘密兵器開発担当主任。ボンドを嫌っていることを隠しもしないキャラクターは本作で完成。

◾︎無口で屈強な用心棒
オッドジョブのように無口で、強靭な肉体を持つ刺客は、『女王陛下の007』のシェシェ、『私を愛したスパイ』『ムーンレイカー』のジョーズ、『スペクター』のミスター・ヒンクスに継承。

◾︎粛清①
全身に金粉を塗られベッドに横たわる女性死体は、『慰めの報酬』で金粉を真っ黒なオイルに変更して再現。

◾︎粛清②
計画参加を断ったパートナーを粛清するゴールドフィンガーの冷徹なキャラクターと、そのシーンは『美しき獲物たち』にて再現。

◾︎イカサマギャンブル
イカサマを見破ったボンドが、敵にひと泡ふかせる場面と、手下がイカサマ道具を握り潰す所までを『オクトパシー』にて再現。

◾︎白のディナージャケット
本作以降、『ダイヤモンドは永遠に』『黄金銃を持つ男』『オクトパシー』『美しき獲物たち』『スペクター』にて披露。『スペクター』においては、赤いカーネーションまで完全再現!
●1983年のテレビ映画『0011ナポレオン・ソロ2 』に、二代目ボンドのジョージ・レーゼンビーが出演。"JB"のナンバープレートを付けたアストンマーティンDB5に乗車し、白のディナージャケット姿で登場した。
●DRAGON社製品『トゥモロー・ネバー・ダイ』のジェームズ・ボンドフィギュアは、劇中着る事のなかった白のディナージャケットバージョンで発売された。

他にも色々あるかもですが、ザッと振り返ってみてもこれだけの『ゴールドフィンガー』リスペクトがあるんです!もちろん『ドクター・ノオ』『ロシアより愛をこめて』のボンドや、作品自体も大好きですが、そのままのキャラクター、そのままの作風で製作を続けていたら、シリーズはここまで続いていなかったのかもしれません。その事実を踏まえ考えると、常に時代の波風を敏感に捉え、軌道修正を繰り返してきた製作陣は、常に正しい判断をしてきたのだなあと、つくづく思っちゃいます。

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