007シリーズ第2作『ロシアより愛をこめて』から、編集者ピーター・ハントの提案で本編開始前にスリリングなシークエンスを挿入するスタイルがとられました。以降、全ての作品で披露されて来た冒頭シークエンスは、映画のクライマックス程の大掛かりなアクションであったり、本編への導入部となるスリル満点のサスペンスであったりと、多様性に富むスタイルで継承されて来ました。
この試みはシリーズ第3作『ゴールドフィンガー』の世界的成功で一気に知れ渡り、以降数多くのアクション映画を中心に本編開始前の前座として楽しめるアクションシークエンス=アバンタイトルの導入が採用されるようになったのです。
シリーズのアバンタイトルは、回を重ねる毎に壮大な見せ場へと進化している事から、いかにアバンタイトルが重要視されているかが窺えます。その力の入れようは、時に面白すぎて本編が霞んでしまうという困ったケースもあるほど。
そんな本編同様に愛してやまない007シリーズの傑作アバンタイトルを、ボクの偏見でランキングしながら紹介したいと思います!
※オールネタバレでいきます!
未見の作品にはご注意ください!
アバンタイトル TOP15
◾︎15位 ダイヤモンドは永遠に
アクション・演出共にどうしようもなくユルい。しかし、飼い主ブロフェルドを失ったペルシャ猫がボンド威嚇するカットは、後の驚くべき展開を暗示しているようで深い。
◾︎14位 死ぬのは奴らだ
ボンド不在の大胆なタイトル。3人の英国諜報員が次々と殺されて行く。不穏なブードゥー教のオカルティズムと、3代目ボンドの登場を待ち侘びさせる手法が上手い。
◾︎13位 ゴールドフィンガー
ドライスーツを脱ぐとタキシード姿のボンドが現れる粋なシーン。ショッキングなアクションとウィットに富んだユーモアが最高の化学反応を見せたアバンタイトルのお手本。
◾︎12位 美しき獲物たち
氷山地形をフルに活用し、考えられるアクションの全てを詰め込んだ快作!スキー、スノーモービル、スノボの三変化!アクロバティックアクションとしての最高峰。
◾︎11位 オクトパシー
◾︎10位 ムーンレイカー
CGがない時代の実写映像によるフリーフォールアクション。人間も鳥のように空を舞う事が出来るんだと知った衝撃映像。空から迫り来るジョーズに戦慄!
◾︎9位 黄金銃を持つ男
殺し屋スカラマンガのトレーニング風景(実際に刺客が殺しに来る!)と、そのカラクリ部屋が楽しめる好編。ボンド不在と思わせて絶妙なタイミングで現れるシーンに身震い!
◾︎8位 007は二度死ぬ
飲み込まれる宇宙船、緊張高まる米ソ陣営、そしてボンドの死。三つのシークエンスを詰め込んだフルコースは、後の『ワールド・イズ・ノット・イナフ』に影響を与えたか。
◾︎7位 私を愛したスパイ
当時のディスコブームを意識して作られたジェームズ・ボンドのテーマ"BOND 77"が素晴らしい。壮絶なスキーチェイスとユニオンジャックは007アバンタイトルの代名詞。
◾︎6位 ロシアより愛をこめて
闇に蠢く殺し屋グラントと追い詰められるボンド。台詞の無い息詰まるシークエンスは、衝撃的なボンドの死をもって完結する。シリーズ2作目でこんな事やられたら驚くでしょ。
◾︎5位 リビング・デイライツ
車からパラシュート脱出なんてもはや誰も驚かないが、音楽とカメラワークで魅せる。ハード路線の4代目ボンドが、美女の誘いでフニャッとなるオチは観客を一瞬で取り込んだ。
◾︎4位 女王陛下の007
夜明け前の海と登場人物のシルエットが抜群の効果を生み出し、もはや本作の大きな見どころのひとつに数えられる。 2代目ボンドは拳銃すら使わず己のタフさを証明した。
◾︎3位 ワールド・イズ・ノット・イナフ
銀行脱出、MI-6爆破、ボートチェイスを異例の長尺で披露したが、一切ダレ場の無い傑作。『私を愛したスパイ』同様に音楽との融合が見事。Qボートの活躍は一生忘れない。
◾︎2位 ノー・タイム・トゥ・ダイ
まさかクレイグ=ボンドの口から"We Have All The Time In The World"の台詞が聞けるとは!突如現れるスペクターカードの衝撃!募るマドレーヌへの不信感と絶望から自棄的になるボンド。そして訣別。ここまで激しく揺さぶられたアバンタイトルはない!
◾︎1位 スカイフォール
諜報員の非情な世界を緊張感たっぷりに描いた。屋根上のバイクチェイス、列車上のアクションも見事。そして衝撃的なボンドの死。これを超えるアバンタイトルは無いのでは?
アバンタイトルを60年も披露して来た007シリーズは、最新作『ノー・タイム・トゥ・ダイ』で更に大きく進化したと思います。何故ならボンドの心情を深掘りし、人間ドラマを短い尺で観せる事によって本編世界へいざなう事に成功しているからです。
誤解を恐れずに言わせて頂くと、アクションシーンはお約束程度に描き、衝撃の人間ドラマで勝負したのではないかと個人的に思っています。それでいて堪らなく本編が楽しみになるのですから、もしかしたら本作の監督キャリー・ジョージ・フクナガはとんでもない逸材なのかも知れない…。
今回トップ15の選出にあたり、全作品のアバンタイトルを観直しましたが、観る度に新たな魅力が見つかりますね。映画一本観る時間が無い時に、アバンタイトルだけを楽しむ事も出来る007シリーズってお得ですね!
アバンタイトルが終わると、主題歌とオープニングタイトルシークエンスにうっとりして…で、結局本編も観ちゃうんですけどね。
※2019年4月2日の投稿記事をリライトしました
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