アクション映画の枠に収まらない、世界が認めた名画

1963年 監督/ テレンス・ヤング

007シリーズの第2作。製作から56年を数える現在も、シリーズ全24作中、本作をベストに挙げるメデイア、ファンは多く絶大な人気が窺えます!
そして、シリーズ他作品と一線を画していると認識させられるのが、アクション映画界のみならず、サスペンス映画、そして世界の名画としても選出される事が多くあることからなんです!

私ごとですが、生まれて初めて観た007が本作でした(TV放映ですが)。当時8歳の映画少年は、この一作で完全に007の虜となったのです!
ショーン・コネリーの濃くて長いキレのある眉毛をマジックで自分の顔に書き、おもちゃのピストルを持ってひとりボンドごっこをしましたよ。その熱が未だ冷めやらず、です。

本作には、有名なアクションシークエンスがいくつもあります。
オリエント急行車内で繰り広げる壮絶バトルや、ヘリコプター襲撃、ボートチェイスがそうなんですけど、この三大見せ場って本編の1時間30分を過ぎてからなんですよね。本作のランニングタイムは1時間55分。つまり、最後の25分に超絶見せ場を詰め込み、それまでは派手なアクションシークエンスが皆無なんですよ(ジプシー村での銃撃戦はあるけど、どちらかというとユルめ)。
つまり凄いのは、それまで小さなサスペンスをいくつも積み重ね、全く飽きさせることなく観せてくれる監督テレンス・ヤングの力量ですよ!!

そして、本作の魅力のもうひとつは作品全体を支配する"闇"です!
プレタイトルのグラント最終試験、クリレンコ狙撃、オリエント急行脱出などなど。単に"夜だから"ではなく、闇に潜む敵の息遣いすら聞こえてきそうな臨場感、そして圧倒的な沈黙と暗闇の中でまさに息詰まるシークエンスを繰り広げているからなのです!


【この映画の好きなとこ】

◾︎ジョン・バリーのスコア
前作『ドクター・ノオ』で、"ジェームズ・ボンドのテーマ"を編曲、演奏をしたことから、その実力が世界で認められ、正式にシリーズの音楽担当に就任しました!彼の最高の持ち味(と確信している)である"ドタバタ感"が早くも本作で遺憾なく発揮されています!

◾︎アバンタイトル
本作のメイン敵役ドナルド・グラントの殺人リハーサル最終試験。なんのセリフも無い、緊迫感溢れるシークエンス!
翻弄されるボンド
圧倒的な存在感のグラント

◾︎オープニングタイトル
テーマ曲"From Russia With Love"のインストバージョンですけど、超絶カコイイイ!ロバート・ブラウンジョン制作の映像も!!個人的には、シリーズランキングのトップ3に君臨するほど好き!

◾︎ドナルド・グラント(ロバート・ショー)
ボンドの強敵として、必ず上位にランキングされる人気(というか、圧倒的威圧感と強さで最強と認めざるを得ない?)キャラクター。ボンドと対面するまで一言も口を利かないんですよね。『ゴールドフィンガー』のオッドジョブ、『私を愛したスパイ』のジョーズら人気殺し屋が口を利かないのは、もしかしてこの方の影響??

◾︎クリレンコ暗殺
ケリム・ベイの宿敵、クリレンコの暗殺シークエンス。静まり返る夜街やら、夜警をやり過ごすとことか、狙撃手交替とか、肩を貸しての狙撃とか、演出が細やか!こういうの好き。
闇に浮かび上がるアニタ・エクバーグの看板
いや、やっぱりオレがやる!
どっから出てくんだよ

◾︎ボンド・ミーツ・タニア
狙撃後自室に戻ると新たな侵入者。すんごい美女が、全裸でベッドに忍び込んでいるという夢のようなシチュエーション!危険な魅力に溢れた名シーンですね。
ボンド、およびボンドガールのオーディションにも度々採用されるほど、ボンド作品の本質に迫ったシーン!これが出来ないとこのシリーズには出られない!?

◾︎聖ソフィア寺院
設計図の受け渡しを決行するタニアとボンド。その横取りを目論む保安局員。それを阻止する守護神グラント。美しい寺院の中で繰り広げられる無言のサスペンス!異国情緒あふれてます。

◾︎オリエント急行列車
乗車から脱出まですべてのシーンが好きです!ボンドとのハネムーン(設定)を心から楽しむタニア、ケリム・ベイとの絡み、見えない敵の脅威、伝説の肉弾戦、そしてフラッフラのタニアを連れての脱出劇。見応えありすぎ!
新婚旅行なのに着替えもないと愚痴るタニアにサプライズ
ハジけた笑顔が少女
タニアうっとり

◾︎粛清
「グラントは殺され、暗号解読機レクターもボンドの手中にあるけど、どういうこと??」とスペクター首領ブロフェルドに詰め寄られ、罵り合い責任のなすり付け合いを始めるスペクター幹部のクロンスティーンとクレッブが最高!こういうの、なかなか007では見られない。
ふてぶてしい自信家のクロンスティーン(右)に対し、意外に小心で冷や汗ダラッダラのクレッブ(左)

◾︎エンディング 〜 From Russia With Love
任務が終わり、別れが近づくボンドとタニア。もうボンドにメロメロなタニアが切ない。ボンドガールが本気で恋してしまうレアケースの先駆けですね。で、マット・モンローが唄うテーマ曲が最高です!
その後のシリーズ作品にはもちろん、世界中のアクション映画、サスペンス映画に影響を与えた名作です!アルフレッド・ヒッチコック監督作品から影響を受けた本作の演出は、模倣に終わらず新たな進化をもたらしたのです。
現在まで続く007シリーズに、長寿生命をもたらした作品の一本に数えて間違いない傑作だと思います!いや、そうです!間違いない!

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