ガイ・ハミルトンが遺したもの
どこだ?
1974年 監督/ ガイ・ハミルトン
007シリーズ第9作。『ゴールドフィンガー』で世界に007ブームを巻き起こし、その後『ダイヤモンドは永遠に』『死ぬのは奴らだ』と連続でシリーズ作品を手がけ"シリーズ立役者のひとり"に数えられるガイ・ハミルトンのシリーズ監督最終作。ガイ・ハミルトンが創造するキャラクターは、内外見ともユーモアに富んでいて、屈指のキャラ立ちが彼のトレードマークです!
『ゴールドフィンガー』からキャラクター創造に力を入れて来たガイ・ハミルトン監督が最後に生み出した悪役は、身長190cmのクリストファー・リーと身長115cmのエルヴェ・ヴィルシェーズの高低差マックスコンビ!
ドラキュラ役者として有名なクリストファー・リーは、殺し屋スカラマンガをドラキュラと真逆に子供っぽく無邪気に演じ、エルヴェ・ヴィルシェーズは、使用人ニック・ナックを洗練された紳士ながら、いたずら好きな一面を持つキャラクターとして演じました。
作品の味付けとして、クリストファー・リーの持ち味を活かす怪奇色と、『燃えよドラゴン』で当時世界中に一大ブームを巻き起こしていたカンフーを取り込み、怪奇カンフーワールドに仕上げています。そんな独特の匂いを香港、タイのオリエンタル色溢れる街並に投入した奇怪な世界観は『007は二度死ぬ』の再来と呼ぶべき興奮です!
【この映画の好きなとこ】
◾︎プレタイトルシークエンス
腕が鈍らないよう、不定期に召使いのニック・ナックが刺客を招き、スカラマンガと対決させるトリック満載のトレーニングルーム。地味で長尺なのにめっちゃ面白いです!
◾︎ラザーの工房
銃兵器職人ラザーの工房を訪れたボンド。闇職人とスナイパー、『ゴルゴ13』みたいな雰囲気が出色!!こういうの好き。
◾︎スカラマンガの仕事
ネオン管と暗殺に臨むスカラマンガの鋭い眼光とのコントラストが最高!
ドスの効いた音楽も目力に凄みを増してます!
◾︎ハイ・ファット邸
ボンドが招待された邸の中庭なんだけど、こちらも怪しい蝋人形だらけ!いいなあ。
◾︎RB進化の兆し
次回作『私を愛したスパイ』以降、著しい進化を見せるロジャー・ボンドの原点は、このシーンにあるのではないかと思うのですよ。
◾︎ニック・ナック(エルヴェ・ヴィルシェーズ)
スカラマンガの忠実で有能な使用人。遺産相続人でもあり、したたかな性格を持つ反面、彼の死後も敵討ちを遂行するほど愛に溢れた人!出所後の姿を見たい。
◾︎決着
最後の対決は、冒頭のトレーニングルーム。追いつ追われつ無言の緊張感!!『ロシアより愛をこめて』のアバンタイトルを思わせます。
どこだ?どこだ?
前作『死ぬのは奴らだ』完成後、製作期間僅か一年という急ピッチで作られた作品であり、脚本の粗が目につきますけど、この独特で奇妙な世界観は特筆モノでしょう!そうするとその"粗"さえも作品の魅力に思えてきます。
この作品を"失敗作"と決めつける世評もあるようですけど、ガイ・ハミルトンがシリーズ次回作『私を愛したスパイ』の監督打診を受けていた所を見ると、製作陣は決して失敗作とはみなしていなかったようです(最終的にハミルトン監督は辞退しておりますが)。
世評が、そして誰がなんと言おうとも、ボクはこの怪奇カンフースパイ映画を支持するのです!
007シリーズこちらも
ノー・タイム・トゥ・ダイ