007シリーズの作品には、本編の余韻を楽しむ為の粋なエピローグと、それに続くエンディングテーマ曲が毎回用意されています。本編開始前のガンバレル、アバンタイトル、タイトルシークエンスだけでなく、一流作品は締めにも拘ります。これはすべて観客に最高の気分で劇場を後にしてもらう為の配慮であり、ここまで拘るのが真のエンターテインメントなのです。

007シリーズのエピローグは、ボンドとボンドガールが結ばれるハッピーエンドを基本フォーマットとしています。しかし、60年を迎えようとしている長い歴史の中では、波乱のエンディングが待ち受けている事もしばしば。それはマンネリ化の防止でもあり、ファンにとっては心地よい刺激であったりもするのです。

一方エンディングテーマは大きく分類すると三種の楽曲パターンに括られます。
まずは、お馴染みの"ジェームズ・ボンドのテーマ"。こちらは第1作『ドクター・ノオ』に始まり、『サンダーボール作戦』『女王陛下の007』『ワールド・イズ・ノット・イナフ』『カジノ・ロワイヤル』『慰めの報酬』『スカイフォール』『スペクター』で使用されています。
第2のパターンは、オープニングタイトルの主題歌が使用されたパターン。こちらは第3作『ゴールドフィンガー』に始まり、第14作『美しき獲物たち』まで、最も多く見られたパターン。単なる使い回しではなく、『黄金銃を持つ男』『私を愛したスパイ』のようにイントロダクションに変化をつけたバージョンであったり、『ムーンレイカー』のようにアップテンポバージョンにするなどの変化も小気味よく飽きさせません。
第3のパターンは、オープニングテーマ曲とは別のアーティストによる別のテーマソングが使用されたパターン。こちらは第2作『ロシアより愛をこめて』を筆頭に『リビング・デイライツ』『消されたライセンス』『ゴールデンアイ』『トゥモロー・ネバー・ダイ』『ノー・タイム・トゥ・ダイ』の6作品で聴くことが出来ます。

近年のダニエル・クレイグ主演作品では、エンドクレジットの量が劇的に増えていることから、上記パターン(ジェームズ・ボンドのテーマ)に、主題歌やサウンドトラックを追加していることが多いようです。

そんな拘りのスタイルを持つ007シリーズは、どんなエピローグとエンディングテーマ、(一括りに"エンディング"と呼ばせて頂きます)で観客の心を掴んで来たのか、超個人的ランキングで紹介してまいります!

※すべてネタバレで行きます!ネタバレした所で魅力が半減するほどヤワな作品ではない!…と言い切りたい所ですが、自己責任で!



 好きなエンディング15選

◾︎15位 トゥモロー・ネバー・ダイ
楽曲 / サレンダー
歌 / k.d.ラング

救護班そっちのけで情事を楽しむ様は『ゴールドフィンガー』を彷彿させ感慨深い。エンディングテーマは、元々オープニングタイトルに採用が決まっていた楽曲だけありその完成度は高い。どっちが好き?
海中での人工呼吸キスが美しい
敵の死をメディア用に改ざん報告する様もリアルでいい



◾︎14位 美しき獲物たち
テーマ曲 / 美しき獲物たち
歌 / デュラン・デュラン

ボンドに勲章を贈るゴゴール将軍。ボンドの安否を案じ涙するマネーペニー。慈しみ深い周囲の心配をよそに、マイペースで楽しむロジャー・ボンドのラストカットが眩い。
勲章はボンドと勇退するムーアに向けたもの?
初代マネーペニー役マックスウェルのラストカット



◾︎13位 ムーンレイカー
テーマ曲 / ムーンレイカー
歌 / シャーリー・バッシー

スペースシャトルで披露する無重力愛!しょうもないQのセクハラジョークが微笑ましい。シャーリー・バッシーのアップテンポバージョンの主題歌が爽快。最後に笑わせるのがギルバート監督流。
無重力描写の感動(なにが?)
生真面目なQが言うから可笑しいジョーク



◾︎12位 ノー・タイム・トゥ・ダイ
テーマ曲 / 愛はすべてを越えて
歌 / ルイ・アームストロング

ボンドを偲び献杯するMI6の面々。娘に英雄伝説を聞かせるマドレーヌ。クレイグシリーズの完結編として爽快なエピローグに仕上がっている。シリーズ他作品(『女王陛下の007』)の主題歌を流用する手法はシリーズ初。続くハンス・ジマーの『ジェームズ・ボンドのテーマ』、そして主題歌『ノー・タイム・トゥ・ダイ』のハミングver.の三部構成は聴き応え十分。

※まだ間に合います!ぜひ劇場で!


◾︎11位  死ぬのは奴らだ

テーマ曲 / 死ぬのは奴らだ

 / ポール・マッカートニー&ザ・ウィングス


列車内の刺客を追払い、やっと訪れたロマンスの時と思いきや、列車先頭に陣取るサメディ男爵のカットで幕を閉じる衝撃のエンディング。邪悪なブードゥー教の勝利を思わせる結末が素晴らしい。いつか再登場を!

車内でカードを楽しむ2人

積荷袋から現れるティー・ヒーの不気味さ!



◾︎10位  ドクター・ノオ

テーマ曲 / ジェームズ・ボンドのテーマ

作曲 / モンティ・ノーマン 編曲 / ジョン・バリー


大爆発から逃れるも、ガス欠となったボートで漂流するボンドとライダー。最後は美女とのお楽しみと、現場を押さえられるお馴染みの構図がこの第1作で既に完成。海でエンディングを迎えるパターンも定番化されている。

やっぱり最後は敵基地の爆破だよね
ガス欠…最高じゃないですか!むしろ羨ましい!



◾︎9位  ゴールドフィンガー

テーマ曲 / ゴールドフィンガー

 / シャーリー・バッシー


これぞお手本。短時間ですべて描き切るハミルトン監督の腕はどこまで凄いのか。墜落するジェット機に乗り合わせたボンドとガロアの運命は?見事な脱出と、救助隊に隠れて情事を楽しむボンドは観客の心をガッチリと捉えた。パラシュートをシーツに見立てて包まる描写が最高。

操縦不可能になったジェット機
豪速球の如く落ちてゆく!



◾︎8位  カジノ・ロワイヤル

楽曲 / ジェームズ・ボンドのテーマ

編曲 / デヴィッド・アーノルド


Bitch is dead.と惚れた女ヴェスパーに訣別をするも、Mから聞かされた意外な真実に立ち上がるボンド。お馴染みの名乗りが最高にカッコよく、新時代の到来を告げるエピローグとして完璧。エンディングテーマとして採用されたジェームズ・ボンドのテーマもこれ以外の選曲は考えられない。
拷問の夜、何故ボンドは生き延びる事が出来たのか…
ヴェスパーから託された最後のメッセージ



◾︎7位 女王陛下の007

楽曲 / ジェームズ・ボンドのテーマ

編曲 / ジョン・バリー


ボンドとトレーシーのアットホームな結婚式から一転、悲劇の幕へ。トレーシーの骸を抱くボンドに、小鳥のさえずりが意味するものは?無情に鳴り響くジェームズ・ボンドのテーマが、ボンドの宿命を物語っている。

M、Q、マネーペニー、みんな笑顔で見送った

花で飾られたアストンマーティンOHMSSモデル



◾︎6位  ダイヤモンドは永遠に

テーマ曲 / ダイヤモンドは永遠に

/ シャーリー・バッシー


「女の口から言うのは、はしたないけど…」と、二度目の結婚を思わせる発言をさせながらも、笑わせて締める鮮やかさ。音楽のかかるタイミングも絶妙。また刺客との決闘は本編最高のシークエンスと断言する。
「大事な話があるの」とティファニー、気構えるボンド
そこに現れる邪悪なブロフェルドの手下



◾︎5位  ワールド・イズ・ノット・イナフ

楽曲 / ジェームズ・ボンドのテーマ

編曲 / デヴィッド・アーノルド


エレクトラ・キングに翻弄された傷心のボンドを、クリスマス・ジョーンズが優しく包み込むエピローグ。がんばってセクハラジョークを飛ばすボンドが微笑ましい。
どんなセクハラジョークかは翻訳して楽しんで!
MI6の面々に露呈するオチも久しぶり



◾︎4位  007は二度死ぬ

テーマ曲 / 007は二度死ぬ

歌 / ナンシー・シナトラ


任務を終え誰もいないはずの太平洋で迎える至福の時と思いきや…。その馬鹿馬鹿しい程のスケールに拍手を送りたくなる傑作エピローグ。ギルバート監督作品は毎回このパターンだが、本作が最高峰。

浜美枝も可愛いすね
合成の大爆発も60年代テイストが潔い



◾︎3位  消されたライセンス

テーマ曲 / イフ・ユー・アスク・ミー・トゥ

歌 / パティ・ラベル


入院中のフィリックスと電話で話すボンドが、ハード路線を貫いた本作にようやく訪れた息抜き。MI6を離れたボンドの未来を示唆せず閉じる幕にロマンを感じずにいられない。そしてティモシー・ボンドの見事な王子様ぶりで締める。

回復したフィリックスが何よりうれしい
ボンドはMI6を去るのか?ティモシー・ボンド二部作のエンディングとしては完璧



◾︎2位  ロシアより愛をこめて

テーマ曲 / ロシアより愛をこめて

 / マット・モンロー


迫る別れの時に抗うかのようなタニヤが切なくもかわいい。無理に作った笑顔で指輪を返すシーンに、マット・モンローの主題歌はハマりすぎ。風景のワンカット撮影は本作以降の定番になる。

チョーカー姿でベッドに忍び込んだ時とは違う清純派に

ヴェニス運河に沈む熱演フィルム…



◾︎1位  リビング・デイライツ

テーマ曲 / イフ・ゼア・ウォズ・ア・マン

歌 / プリテンダーズ


思い出の弾痕が残るチェロで演奏するカーラ。ボンドを想い、控室で人知れず大きなため息をつくカーラが切なすぎる。一見ハッピーエンドに思えるエンディングは、すぐに訪れる終わりの時間を悪戯に伸ばしているだけだが最高にロマンティック。プリテンダーズのナンバーは、シリーズ全エンディングテーマにおいての最高峰。

ワールドツアー・オブ・カーラ ミロヴィ

思い出の弾痕。最高にロマンティック!
空港の検問で足止めをされ演奏を聞き逃すカムラン

乙女のため息をつけるボンドガールはシリーズ中でもカーラしかいない!


本編の余韻を楽しませてくれる数々のエピローグ、そしてエンディングテーマも、歴史を振り返ってみると様々な工夫と進化が見て取れますね。

エピローグは作品毎に個性豊かに作られていますが、エンドロール(キャスト・スタッフのクレジット映像)はまだ進化しても良さそうだなと感じるこの頃。このパートは、あくまで本編の余韻を音楽と共に楽しむ時間、そして何よりキャスト・スタッフを紹介するパートなので、主張が強すぎてはいけないと分かってはいるのですが、007シリーズならきっと何か新しいことをやってくれそうな予感と期待を抱いてしまいます。

更に一本踏み込んだエンドロールが見られた時、またこの投稿記事はリライトされると思います。

その時が訪れるまで、この贅沢なひと時を存分に楽しませてもらいましょう。



※2019年4月24日の投稿記事をリライトしました




007シリーズこちらも

番外編11【女王陛下の007】の音楽

番外編⑥ 007のBJB

番外編⑤ 007のヴィランズ

番外編③ 007のガンバレルタイトル

番外編② 007のアバンタイトル

番外編① 007のオープニングタイトル

ノー・タイム・トゥ・ダイ

スカイフォール

慰めの報酬

カジノ・ロワイヤル

ダイ・アナザー・デイ

ワールド・イズ・ノット・イナフ

トゥモロー・ネバー・ダイ

ゴールデンアイ

消されたライセンス

リビング・デイライツ

美しき獲物たち

オクトパシー

ユア・アイズ・オンリー

ムーンレイカー

私を愛したスパイ

黄金銃を持つ男

死ぬのは奴らだ

ダイヤモンドは永遠に

女王陛下の007【50周年記念レビュー】

女王陛下の007

007は二度死ぬ

サンダーボール作戦

ゴールドフィンガー

ロシアより愛をこめて

ドクター・ノオ

ネバーセイ・ネバーアゲイン