逃亡犯条例案、完全撤回どこまで 香港 | 中国情報ジャーナル ディープな香港・中国・台湾

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1997年7月1日に英国から中国に返還された香港。1997年から香港に駐在したフリーランスライターが現場取材をもとにディープな香港、中国、台湾の最新情報を書き尽くしていきます。

逃亡犯条例案、完全撤回どこまで 香港
返還記念日デモで見極め
行政長官の引責、中国次第


刑事事件の容疑者を中国本土に引き渡すことを可能にする香港の「逃亡犯条例」改正案をめぐり、2週連続で大規模デモを主催した民主派団体は香港返還記念日である7月1日に毎年行っている恒例のデモに合わせ、改正案の完全撤回とデモ逮捕者の釈放を訴える計画を進め、林鄭月娥月行政長官の引責辞任に向け、中国とのせめぎ合いが続いている。(香港・深川耕治)

 

 


「悪法を撤回しろ」「ヘルプ香港」。黒服に身を包み、身元が警察に割り出せないようにマスク姿で気勢を上げる民主派の大規模デモは、主催した民間人権陣線によると、9日のデモで103万人、16日のデモでは香港史上空前の200万人が参加し、一国二制度の香港の人権を脅かす強い危機意識と憤怒が香港政府や中国政府へ噴き出す強烈なメッセージとなった。

 

「逃亡犯条例」改正案が発案されたきっかけは、昨年2月、香港人の男が台湾で恋人を殺害し、逮捕される前に香港に戻るという事件だ。香港政府は、犯罪人引き渡し協定がない台湾への身柄移送ができないことを理由に、このような事態を解消するため条例改正が必要だと親中派の立法会議員らが主張し、政府は条例化を進めてきた。

 

 

香港政府は引き渡し対象となる犯罪を限定すると説明しているが、実質的にすべての香港市民と外国人旅行者らも中国当局の取り締まり対象になる恐れがあり、法律と人権を尊重しない中国に引き渡されることになる可能性がある。香港を訪れた外国人ビジネスマンや観光客も、引き渡し対象になる可能性が指摘されている。

 

同条例が通過されば、香港の根幹をなす「一国二制度」が揺らぐことで、世界の経済・金融センターとしての地位低下も憂慮されている。

 


とくに6月12日のデモでは5000人強の警察隊が動員され、バリケードを越えて突撃する抗議者に対して催涙弾やゴム弾を発砲し、72人の負傷者を出す惨事となり、11人を拘束した。

 

 


6月16日のデモに参加した「香港の良心」と呼ばれる陳方安生(アンソン・チャン)元政務官は「林鄭行政長官は即刻、独立調査委員会を立ち上げ、デモでの市民負傷の経緯を調査すべきだ。建政派(親中派)は香港市民の意向を歪曲するなら次回の選挙で有権者は大胆な投票を行うことになる」と述べ、来秋の立法会選挙に向け、民意を問う姿勢だ。

 


香港政府トップの林鄭月娥(キャリー・ラム)行政長官は16日、「香港社会に大きな矛盾と紛争を生み、市民に失望と悲しみを与えた」と市民に謝罪を表明。来年7月までに審議が行えない場合は廃案もやむを得ないとの考えを示した。


しかし、改正案を撤回するかどうかについてはあえて明言を避け、デモに参加した市民らは「先延ばししようとしている」「早期辞任すべきだ」と批判の声を強め、21日には2014年の「雨傘運動」の学生指導者だった黄之鋒氏ら学生1万人が香港警察本部や税務署ロビーを包囲した。

 

 

香港の学生団体は林鄭氏が12日のデモ隊と警察との衝突を「暴動」と表現したことについて発言の撤回を要求。まるで89年の天安門事件で学生のデモを「暴動」「動乱」と断じて殺戮した詭弁のような見解に猛反発している。ついに香港政府は21日、条例改正案の改正作業を完全に停止し、廃案受け入れを表明。遅きに失した。

 


林鄭氏は行政長官である本人と市民との関係を母子関係にたとえるが、大規模デモでは林鄭氏の似顔絵入りプラカードに「林鄭不是我老母(林鄭は私の母親ではない)」と書かれているものが多く、「子ども(市民)の話をちゃんと聞かない母親なんていない」(デモ参加者)と反発し、「林鄭下台(林鄭氏は辞任せよ)」とのプラカードを持って「下台」「下台」と連呼する。

 


24日、若者150人が香港中心部にある税務署ビルのロビーを一時占拠し、条例案の完全撤退と拘束された若者の釈放を要求し、混乱が続いている。


デモが6月に入ってピークを迎えたタイミングは、G20大阪サミットが28、29日に行われるため、民主派にとって有利、中国政府や香港政府にとっては国際的に極めて不利な時期と重なった。

 

 

G20サミット期間中、参加する習近平中国国家主席に圧力を与えるため、香港ではG20に参加する香港の各国領事館に逃亡犯条例案の完全撤回を求める請願を署名を集めて提出する運動が展開されている。

 

また、大阪市内で中国と香港の民主化要求デモも準備されており、香港独立派で香港での活動禁止処分となった「香港民族党」代表の陳浩天氏らが参加する。

 


改正案への抗議活動は3月から始まり、4カ月間、続いて7月1日の民主派デモでピークを迎える。9日以降、香港でも史上最大規模のデモが2週連続で続き、雨傘運動の時と同じく、社会の分断や混乱も深まった。デモ後、地元テレビの取材に応じた林鄭氏は涙ぐむ姿を見せるなど、苦境に立つ。


林鄭氏が「完全撤回」という言葉を封印した背景には、一国二制度の「一国」を牛耳る中国政府の存在がある。改正案の「完全支持」を表明した中国政府が後ろ盾だっただけに、林鄭氏としては、できる限り、政府の「力量不足感」を薄める必要があったからだ。

 


今後は、任期5年の林鄭行政長官が就任2年でこれまでの責任を取って辞任するか、中国政府の苦渋の許諾がなければ低支持率のまま、レームダック状態で継続することになる。次期行政長官候補選びは水面下では始まっている。政局のヤマ場は来秋の立法会(議席数70)選挙で民主派が現有議席25議席を大きく上回るかどうかだ。

 

 

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