第1177回「バックハウスのベートーヴェンピアノ協奏曲全集をタワーレコードのSACDで聴く」 | クラシック名盤ヒストリア@毎日投稿中!!

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 みなさんこんにちは😃本日7月5日はヴィルヘルム・バックハウスの命日です。今年で没後53年となります。そんな本日は2018年3月14日にタワーレコード企画で復刻した「ヴィンテージSACDコレクション」からバックハウスがイッセルシュテット&ウィーン・フィルと録音したベートーヴェンピアノ協奏曲全集をみていきます。今回はピアノ協奏曲だけでなく、「献堂式」序曲と「エグモント」序曲、「レオノーレ」序曲第3番が収録されています。


「ヴィルヘルム・バックハウス(ピアノ)、ハンス・シュミット=イッセルシュテット指揮/ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団」

ベートーヴェン作曲:
ピアノ協奏曲第1番 ハ長調作品15

ピアノ協奏曲第2番 変ロ長調作品19

ピアノ協奏曲第3番 ハ短調作品37

ピアノ協奏曲第4番 ト長調作品58

ピアノ協奏曲第5番 変ホ長調作品73「皇帝」


「ハンス・シュミット=イッセルシュテット指揮/ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団」

ベートーヴェン作曲:
「献堂式」序曲 作品124

「エグモント」作品84 序曲

「レオノーレ」序曲第3番 作品72a



 バックハウスによるベートーヴェンピアノ協奏曲全集。以前より購入をしてはいたが中々聴くタイミングがなく今日に至る。私自身これまでバックハウスの録音はそれほど数を聴いていないのだが、このベートーヴェンピアノ協奏曲全集は間違いなく名盤揃いである。これが今から4年前の2018年に発売されていたとは正直言って驚きである。これに合わせてイッセルシュテット&ウィーン・フィルによるベートーヴェン交響曲全集を聴くと更なる良さに気づくことができるのかもしれない。


 ベートーヴェン:ピアノ協奏曲第1番、1958年4月16〜22日録音

・・・ノイズも多少あるが、現代の録音に引けを取らないくらいの明瞭さや軽快さなどが備わった演奏と言えるだろう。2018年最新マスタリングが施されたことによるダイナミック・レンジの向上やバックハウスのピアノとイッセルシュテット率いるウィーン・フィルの活気あるサウンドが重なり合いこれまで聴いたことがないような美しい響きを奏でている。第1番はいつも全集くらいでしか聴くことがほとんどなく、いつも何気なく聴いていたくらいなのだが、バックハウスによるベートーヴェンピアノ協奏曲全集一曲目として聴くならばこれは非常に素晴らしい演奏となっている。現時点で個人的にベストな演奏と言えるだろう。


 ピアノ協奏曲第2番、1959年6月29,30日録音

・・・この曲を聴いていて感じたのは「穏やか」や「優美さ」というイメージだろうか。バックハウスによる軽快で美しいピアノとウィーン・フィルによる曇りないサウンドが同時に演奏されることによってこの後に出てくる第3番や第5番に引けを取らないような素晴らしい演奏をこの第2番で聴くことができるようになっている。何より聴いていて迷いを一切感じることなくすっきりとした純粋な音色をそれぞれが奏でている。より理想的な音楽の形ということを聴いていて感じた。


 ピアノ協奏曲第3番、1958年10月22〜27日録音

・・・ベートーヴェンのピアノ協奏曲の中でも第5番と並んで人気の高い第3番。つい最近アルゲリッチ、アバド&マーラー・チェンバー・オーケストラによる録音を聴いたばかりだが、バックハウス、イッセルシュテット&ウィーン・フィルによる第3番は伸びやかで幅広く取られたスケールが非常に心地よく、2018年最新マスタリングによるダイナミック・レンジの幅広さが功を奏しており、曲全体をより色鮮やかにかつ聴きやすく作り込まれている。聴き始めた時に正直1958年の演奏ということは想像すらできないくらいに美しい録音と感じた。どっしりとしたバックハウスのピアノに合わせるかのようにウィーン・フィルもやや重心低めに作られているのが特徴的と言えるだろう。


 ピアノ協奏曲第4番、1958年4月16〜22日録音

・・・今回の演奏はどちらかといえば近年演奏されるケースが多いピリオド楽器や室内楽編成でのアプローチに近い印象を聴いていて感じた。というのも各楽章ごとに「緩→急」や「急→緩」と言ったようなメリハリのあるダイナミクスやアーティキレーションなどの変化が絶妙な仕様となっている。特に第3楽章で聴くことができるのだが、テンポが速くなった際に弦楽器を筆頭として引き締められたやや筋肉質に近い硬派なサウンドがウィーン・フィルでは展開されている。バックハウスのピアノに関してはそれと対照的に幅広く伸びやかでどっしりとした豪快な演奏が行われている。2018年最新マスタリングによるダイナミック・レンジの幅広さの向上からなる音質改善も含めて今までにないくらい楽しめる第4番となって生まれ変わったといえるだろう。


 ピアノ協奏曲第5番、1959年6月27,28日録音

・・・ベートーヴェンのピアノ協奏曲のみならず、作品の中でも高い人気を誇る名曲である。今回の演奏ではまるで交響曲かのような幅広さとどっしりとしたやや重心の低い重みのあるテンポと土台のしっかりとした弦楽器群により、安定感のある演奏が展開されている。それに合わせてバックハウスのピアノは壮大かつ素晴らしいスケールで演奏されている。音色や響きには明るさがあり、聴きづらさが一切ない。まさに明瞭な録音と言えるだろう。


 「献堂式」序曲、1966年10月12〜14日録音

・・・ベートーヴェンが純粋管弦楽のために作曲した最後の作品となっている。演奏自体はそれほどされないというわけではないのだが、私個人としては大分久しぶりに聴いたようにも思えた。しかし、今回のタワーレコード企画の「ヴィンテージSACDコレクション」による2018年最新マスタリングが施されたこともあってウィーン・フィル全体のサウンドは荘厳的で非常に高貴な印象を強く受ける素晴らしい明瞭な音色と響きを有していると言えるだろう。近年のピリオド楽器や室内楽編成での演奏ともまた違うウィーン・フィルだからこそ奏でることができる素晴らしい演奏を聴くことができた。


 「エグモント」序曲、1967年5月3日録音

・・・ベートーヴェンが作曲した管弦楽曲の中でも特に人気度の高い「エグモント」序曲。今回の演奏では硬派に聴こえるかもしれないが、荘厳的で落ち着きのある安定した演奏となっている。緩急も細かく設定されており、ダイナミクスやアーティキレーションなどが明確かつ変化にだいぶ差がつけられた状態で演奏されている。


 「レオノーレ」序曲第3番、1969年6月4〜9日録音

・・・全体的にまとまりのあるやや固めな印象を受ける演奏となっている。特に統一感のある弦楽器群の抜群な安定感は中々なものとなっており、金管楽器や木管楽器も安心して安定感あるサウンドを奏でている。他の曲と比べても演奏時間が長い分緩急はつけやすくなっており、その場面に応じた音色や響きをより明確に演奏することができるようになっているのが、ウィーン・フィルの演奏から感じ取ることができる。


 これまで多少なりともベートーヴェンピアノ協奏曲全集は様々なピアニストのものを聴いてきたが、今回のバックハウス、イッセルシュテット&ウィーン・フィルのピアノ協奏曲全集はその中でも一曲一曲をたっぷりと楽しむことができるようになっており、満足度も非常に高い代物と言えるだろう。これは買わないと損をすると言ってもいいくらいだ。同シリーズではまだ聴けていないイッセルシュテット&ウィーン・フィルによるベートーヴェン交響曲全集も存在しているので近いうちにそちらも試聴したいと思う。


https://tower.jp/item/4684882