「フィリップ・フォン・シュタイネッカー指揮/マーラー・アカデミー管弦楽団」
マーラー作曲:
交響曲第5番 嬰ハ短調
マーラー作品におけるピリオド楽器での録音はまだまだ数が多いというわけではない。例で何種類か取り上げると、ロト&レ・シエクルによる交響曲第1番、第4番やシュタイネッカー&マーラー・アカデミー管による第9番、今回の第5番くらいである。スコアは出版前だったブライトコプフ新校訂版、メンゲルベルクが使用していたスコアも用いている。弦楽器はガット弦と木製のミュートを使用し、ヴィブラートをほぼかけずに演奏している。
・マーラー:交響曲第5番
録音:2024年9月8〜10日
過去にここまでの溜めが細かい第1楽章はあっただろうか?100種類近いマーラー交響曲第5番を聴いてきたが正直ない。至るところに細かいテンポの溜めやリズムのまとまりがあるため、多少詰まって聴こえるかもしれないが、それによる鋭さや普遍的な感覚はよりマーラーの混沌たる印象に見事マッチしている。第1楽章でそのアプローチが連続されることによって、「この演奏は従来のマーラー演奏とは違う。」ということを理解させてくれる。こういったマーラーは久しぶりだ。
第2楽章では同曲録音と同じように荒々しく、やや攻撃的なテンポの緩急からなるアプローチが目立つ。しかし、ピリオド楽器での演奏ということも関係しているのだろう。パワー型ではないため、比較的に程よいアプローチからなる細かいダイナミクス変化を演奏から通して聴くことができるようになっている。それに合わせて第1楽章と同じような溜めが随所より確認できるため、終始刺激的で楽しめるのは間違いない。
第3楽章は明るさも含めた音色、響気に加えてテンポの緩急が非常に明確となった。特に「急→緩」、「緩→急」へと変化する構成のパワフルさや細かいダイナミクス変化、ホルンをはじめとする金管楽器による音圧など各楽器の特徴的がオーケストラ全体としてまとまり合いながらアンサンブルを行っている。今回の演奏では、第1ホルンが指揮者の横にソリストとして立って演奏しているなど、多少情報量は多くなるかもしれないが、この第3楽章における面白さは全面的に押し出せているはずだ。
思わず聴き入ってしまうほどに没入感の高い演奏となった第4楽章。弦楽のたっぷりとしたスケールを奏でながらもこのリアリティあふれる分厚いサウンド、濃厚なアプローチからなる演奏は非常に素晴らしい。ダイナミック・レンジの幅広さを含めて細かいダイナミクス変化からなる演奏が展開されていることもあり、各楽器ごとによる高いアンサンブルを楽しめるというのは非常に素晴らしい。
生き生きとしており、それでいて活発なアプローチからなる細かいダイナミクス変化を演奏から通して聴くことができるようになっている。オーケストラ全体の一体感は非常に素晴らしく、圧倒的なスケールを含めて細かいテンポの溜めなども他の楽章同様のアプローチがみられるようになっている。パワー型ではないとしても、各楽器ごとに群となった瞬間のインパクトは非常に衝撃的だ。
今回の個性的なマーラー演奏は録音が今後も続くのか非常に気になる。個人的にはまだピリオド楽器演奏での録音が残されていない第6番「悲劇的」などを聴いてみたいとも考えている。それ以外の録音が発売されたとしても両者であればきっと度肝を抜くような演奏を行ってくれるのだろう。その期待に胸を膨らませながらまた第9番や今回の第5番を繰り返し聴きたいと思う。

















