(加佐郡鎮座 笠水神社)




◆ 丹後の現像
【39.「丹後史料叢書」 ~「丹後風土記殘缺」2】




ようやく「風土記」本文に突入しました。



先にお断りしておきます。
今回は少々退屈な記事になるかも。

本人は至ってテンション上がっておりますが。


丹後を研究する上で最上級の資料。
なかでも当時の神社のデータがまるまる残るという、貴重なことこの上ない資料。

これを機によりディープな丹後を探ろうと考えています。


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今回は丹後の郡名紹介と、
そのうちの加佐郡(伽佐郡、笠郡)の詳細について。

※【読み下し文】は省略します。




【大意】
郡は合わせて五所。
* 伽佐郡 本字笠
* 與佐郡 本字匏
* 丹波郡 本字田庭
* 竹野郡 今依前用
* 熊野郡 今依前用

郷は合わせて三十八里九十七
* 餘戸二
* 神戸四

神社は合わせて百三十五座
* 六十五座 在神祇官
* 七十座 不在神祇官

加佐郡(二字虫食) 九餘戸一神戸一里(以下虫食)
* 志楽郷 本字領知
* 高橋郷 本字高椅
* 三宅郷 本字今用
* 大内郷 今依前用
* 田造郷 今依前用
* 凡海郷 今依前用
* 志託郷 本字荒蕪
* 有道郷 本字蟻道
* 川守郷 今依前用
* 餘戸
* 神戸


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◎まず丹後は「五つの郡」で成ると。
伽佐郡・與佐郡・丹波郡・竹野郡・熊野郡の五郡。

◎これまで記してきた通りですが、「伽佐郡」の表記に注目したいということと、「かさのこほり」という読みで間違いないであろうということが重要かと思います。

ところが、下部の「三十五座」上げられる神社の中の「笠水社」は「うけみづのやしろ」なのです。「笠」を「うけ」と読んでいるのです。

「誓約(うけひ)」を連想させますし、豊受大神の「受」と何らか関連があるのか、とても気になるところ。

またこの忘れ去られたような小さな社が、丹後の重要な鍵を握ると考えています。

ご祭神の笠水彦命は天火明命四世孫。倭宿禰命(天御影命と同神とされる)の子…とくれば、否が応でも色めき立つ!
しかも伊加里姫も祀られ…神武東征に登場し、大和の吉野の山中で出会う井氷鹿(井光姫)と同神とも言われる…

とてつもなく大変なお社であったかと思うのです。伽佐郡(加佐郡、笠郡)の郡名は当社を所以とするのだろうと考えています。

何しろ、古代を紐解く上で大抵の場合に鍵となる「水」と「鉄」とが密接に絡む社なのです(詳細は → 笠水神社)。

◎次に「與佐郡 本字匏」。
「本字」というところが何を意味しているのか理解できていませんが、「伽佐郡」の箇所から推し量ると、「本来の文字」ということになるのでしょうか。

丹後国一ノ宮である籠神社の奥宮 眞名井神社は、籠神社が創建されるまで「匏宮(よさのみや)」と呼ばれていました。

「匏」を「よさ」と呼ぶなどと、聞いたことも無ければ、ここ以外でそう読むことは無いのだろうと思います。おそらくは、「匏」と地名の「よさ」が合体したものと考えています。

一ノ宮の奥宮であるということからも分かるように、眞名井神社こそが丹後の最も重要な社であるといっても過言ではないと思います。

その始源は以下の通り。
━━天香語山命(始祖 天火明命の子)が天地を繋げる「天眞名井の水」を起こし通し、さらに「天磐境」を起こし豊受大神を祀った(ご本殿の裏に有り)。そしてこの「眞名井」の地に泉が涌き出て「匏(ひさご、=ひょうたん)」が生え、三代目天村雲命がその「匏」に「眞名井の水」を汲み神前に供えた━━

これほどまでに創祀の様子がはっきりとしているのも稀有なことかと。また太古の「神祀り」というものが、こういった類いのものであることがよく分かります。

この何とも素朴で、この上なく純粋な行い、
これこそが「神祀り」の始源であったのです。

少々熱くなりすぎて脱線しました…。

◎続いて「餘戸」というものが記されますが、これは「余戸」のことと思います。
令制国制度では国→郡→里(郷に変わる)と支配体制が整っていました。「里(郷)」は50戸で一単位。ところが50戸で区切った際の端数が出る…また山間部などは50戸に満たない…これらを「余戸」として管理したとされています。

◎一方「神戸(かんべ)」とは、神社に属する民戸のこと。神社そのものと祭祀を維持し続けるためのものであったと考えています。

◎「郷」は計9つ。各「郷」の詳細はこの後に記述があるので、今後の記事にて。
「凡海郷」というのは「冠島・沓島」のある若狭湾のことだろうと思います。読みは「おほしあまのさと、おふしあまのさと」ではないかと。


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今回の記事はここまで。

次回は35座上げられている加佐郡の神社を、現在の神社に宛てていく作業を行います。パズルのように…。



(今は無き眞名井神社の旧ご本殿)