- 魚神/千早 茜
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白亜とスケキヨ。
二人でひとり、完全に充足した世界は、
猥雑な島によって壊される… …
これは美しかった。
美しくて、猥雑で、耽美で、切なくて、サリオの好きなものすべて詰まってた。
これはもう買おう。
ハードカバーってスカイ・クロラしかもってなかったけど、
こんな美しい物語、手元に置かずして如何する。
一歩間違うと、ちょっと痛い耽美な物語になるんだけど、
なにか不思議な作用で綺麗なバランスを保って、幻想奇譚の力を失わない。
白亜とスケキヨの関係がとにかくいい。
二人でひとつ、自分よりも相手のことをよくわかっている。
言葉すらいらないほどの近しい関係。
相手が痛ければ自分が先に泣き、自分が痛ければ相手が先に泣く。
美しい姉弟。
本当の姉弟かどうか分からないところもポイント。
幼い頃のエピソードすべて、此の二人の絆の強さを示している。
中頃の、白亜が遊女になったあたりから物悲しい。
白亜は感情に鈍いと思っているけれど、実は誰より熱いと思う。
ただ、その感情のすべてがスケキヨに流れているだけで。
島一美しく、馥郁たる香りを持つ遊女、白亜。
やがて、彼女のもとに、幼い日、スラム街である裏華町で出会った剃刀のような男が通ってくるようになる。
そして、唯一の友達の新笠に変化が起きて、物語が大きく動き出す。
クライマックスの方も好きだ。
満足だ。
白亜が蓮沼に連れられていくところ、蓮沼の非情な振る舞い、
くっきりと浮かび上がるスケキヨとのつながり。
でもそれを恐れて、蓮沼との関係を深め、
やがて絶望して死を望む白亜。
生かされても空虚で、スケキヨに似た客に殺してもらうことを望み。
いつスケキヨと出会うのか?
果たして出会えるのか?
本当にそこが苦しくて、
白亜に入り込んで、もう、胸がきゅうきゅうとして、やけっぱちで切なくて。
だからこそ、ラストは満足。
良かった。
こういう終わりじゃなかったら、後味悪いだけだった。
スケキヨは結局、周りの言葉でしか人物像が立ち上がらなかったし、
やったことは本当にひどいことだけど、
それも白亜しか見ていないからこそで、ここはもう、許される、許されざるどうでもいいや。
白亜の強そうで儚いキャラクターも良かったし、
なにより蓮沼の粗野さが効いていた。
そして舞台が最高にいい。
今か昔か未来か。
日本なのか違うのか。
本土から離れた、離孤島の遊女島。
他には漁業しかなく、本土から客は小舟で訪れる。
貧しく、魚の匂いしかしない生活にはかつての繁栄を示す切なくて悲しい神話もある。
うーん、久々に好みど真ん中の物語に出会った。
人生ナンバー3に入れてもいい。
いや、5、10・・・・
まあとにかく、指で数えられるくらいに入る好きな物語。
こういうのを読みたかった。