- おっぱいバレー (Linda BOOKS)/水野 宗徳
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おっぱいバレー 実話を基にしたライター水野宗徳さんの初小説
キモ部と呼ばれ、忌み嫌われる男子バレー部に活力を与えたのは、
先生の「おっぱい」だった。
くだらなくて純粋な、男子中学バレー部の健闘物語。
こ、これは正直おもろかった。
くだらないんだけど、ドラマチックで。
発想は、
男子中学生
↓
女の子に興味津々、おっぱいに興味シンシン
↓
そのためには全力投球して頑張れちゃうぜ!
と、いうもの。それだけ。
不良先輩による不良的教育の賜物で、2年次にして中学生活に諦念したがきんちょたちが、
美人先生の魅惑の「おっぱい」が見たいがために、
先生を担いで約束を取り付けてしまう。
それも、麻雀でイカサマをするという、ずるがしこい方法で。
まんまと先生はだまされちゃうけど、「県大会で優勝したら見せてあげてもいいワ」と、約束する。
そこはがきんちょ、うはうはしながらバレーにのめり込んでいくという。
このおばかな物語が可愛いのは、
一貫して、「おっぱいみたいぜ」「ぼくらこずるい男子中学生」
な姿勢が崩れないこと。
バレーに魅力に目覚めても、爽やかなスポーツ少年に華麗なる変身を遂げることなく、
「おっぱい、おっぱい」と練習に励む初心貫徹ぶり(笑)
そうそう、男子中学生なんてこんなもんだよねー
世間知らずな純粋さと、底抜けのおばかさが同居してるんだよねー。
作者は元々舞台や映画なんかのライターさんなだけあって、
キャラクターの肉付けは、若干ステレオ的な配置ではあっても魅力的で巧み。
頭はいいけど、主に小憎たらしい方面に大活用の主人公が好きだ。
たとえ、仲間がおでぶなあほのこや、男前や、真っ直ぐな後輩であろうとも。
幼馴染との淡い恋、という、べた展開があろうとも。
起伏に飛んだストーリーも、べたべたであろうとも。
べたなストーリーは、作者に力量さえあれば、最高に面白くなる。
結末に向かう各エピソードは起伏に飛んで、最後まで弾きつけられた。
ヒロインの先生の、真っ直ぐで、不器用なマドンナっぷりも特筆です。
大人ならでは、先生ならではの、空恐ろしい社会との戦いも含まれつつ、
生徒にいいように翻弄されながらも、
一生懸命、必死に自分の意思=生徒を導くことを貫く姿勢は美しい。
人間的弱さがまた、先生を立体的に造詣する。
文章は、小説というには少しPOP過ぎるけど、さすが手馴れてて読みやすい。
文章のプロがケータイ小説を本気で書いたらこんな感じなんでは。
ものすごく読みやすく、馴染みやすい文体。
出来たら、実写ドラマや映画で見たいなぁ。
小説としても面白いけど、映像メディアで表現した方がしっくりくる気がする。

