- 今夜はマのつく大脱走! (角川ビーンズ文庫)/喬林 知
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異世界の魔王になってしまったユーリは、
魔王の秘密兵器とニセモノを探しに他国に赴くが、
ありえない勘違いから追われる身となる。
こないだテレビつけてたらBSアニメ夜話がやっていて、累計500万部にびびって早速借りてきてみた。
ライトノベルなんて久々だし、しかもぼぉいずらぶなんて…
よく借りてきたなぁ、自分(笑)
面白いか面白くないかでいったら、面白い。
でも、「あー、これはこういう話なんだ」と一種脱力、一種アキラメを感じた後、ね。
要はこれ、延々メインディッシュのみ出てくるコース料理、
オールサビな小室ソングものなんだな。
魔法が使える異世界で実は王様な主人公が繰り広げるお話、
という架空のオリジナルストーリーがあり、それに対して、
「このキャラが実はこんな趣味持ってたら萌えない?」
「このキャラとこのキャラでこんなシチュエーションだったら萌えるよね」
で書かれたパロディネタが、この話の全て。
肝心なのは、そのオリジナルストーリーなんてものは存在しなくて、
実はこんなキャラでした、こんなシチュエーションです、のみ。
で、構成された、会話劇。
申し訳ないけど、小説と呼ぶのも気が引ける…
典型的なキャラを全て出し、萌えると思われるシチュエーションを全てつっこんだものであり、
作者のツッコミやパロディを笑えばいい話。
典型的キャラというのは、キャラの黄金率というか、こういうのなら大体間違いなく面白い、
から”典型”になったもので、面白くないわけがない。
んだから、キャラとしては結構好き。
ギュンターというひとがかなり笑えていい。
超美形なのに、アイドルのへヴィで明るいおっかけみたいに主人公を溺愛してるのが、
ギャグ以外の何ものでもなくて、かなり笑える。
何気に嫌いなのが、最も普通の人として描かれているであろう、コンラッドというひと。
一見、BL的なキャラ群(?)の中で普通の人に見えて、
何気に一番リアルにBLちっくな発言がめちゃ苦手。
次に、主人公の婚約者のひと。
男なのに婚約者、ってあたりがもうだめ。
基本的にBLって受け付けないんだな。
んでもそれなりに楽しく読めてしまうのは、クライマックスが水戸黄門だから。
何故か時代劇口調で主人公が勧善懲悪し、必ず残される”正 義”の二文字。
なんか、一番盛り上がるところでそこまでやられちゃ、
あーこれ、こういう、ネタ話なんだ、とにかくツッコミ入れまくって笑えばいいものなんだ、
というアキラメ、脱力、そして笑い。
アニメ夜話で、激ヤセした評論家のひとが同じこと言ってたけどすんごい納得した。
ていうと、ほんとしょうもないようですが、脱力して笑って楽しめるバランスって大したもんだと思う。
これが、バランス取れてなければ、もう頭来て本投げるとこだもんね。
笑って許せて楽しめるバランス感を作れてるところが、この作者の最大の才能なんじゃないかと。
だって、あんたじゃあこれ書ける?ッて言われたら正直無理だし。
とはいえ、”小説と呼ぶのも気が引ける”とまでいったのは、あまりの文章の酷さ。
作者も読者も突っ込めるような作風なんだろうとは思うけど、
僅か2ページで矛盾の出るストーリー、
気が付いたらいつの間にか展開している話、
なにより、直喩というにもおこがましい、比喩の数々…
距離をあらわすのに、
「走って30秒くらい、400Mトラック1周分くらいだろう」(正確な写しではありません)
ってどういうこと!?
もう400Mでいいじゃん!
メイン読者層が分かりやすいように、体育の授業を具体的に思い浮かべられるように、って配慮なのかな…
他にも、何か例えるのにまんま映画名を出すとか。
分かりやすいかもしれないけど、文章で食ってくひとのやることでは無い気が…
描写なんてこの話の骨子に何の関係も無い、瑣末なことかもしんないけど、
一応、これは”小説”のはずなので、せめて小説の文章になるよう、努力くらいして欲しい。
恋空よりかは読めるかな?ちょっと文字の数が多いぶん。
てレベルなんですけど…まじで。
すごい酷評してるけど、作者が嫌いなわけではありません。
読者にも優しいみたいだし。
華麗かつ素晴らしい文章でも、激しくつまらなく中身の無いものを読むくらいなら、
会話劇エンタなこの作品のがよっぽど楽しいです。
それにしてもこれで500万部か…
500万部って、食べていかれるレベルだよね…